私もたずさわっている Marmot の新プロジェクト Re:LIGHTPACKING から、冬のウェアとして1000FPのダウンパーカーが発売されます。ダウン量は150g、総重量は322gです。
今までのMarmotのラインナップにも1000FPのダウンを使ったウェアはありました。それをただ軽くするだけではなく、アメリカのハイキング文化における軽量化の系譜を継ぐこのプロジェクトの理念に則してリデザインするとしたら、どんなアプローチがありえるのか……。考え抜いた末に、立体裁断をやめるという結論にたどりつきました。
ダウンジャケットには、極論すればダウンと生地のふたつの要素しかありません。ダウンを軽くするには、少量でも高ロフトをかせげる高品質な素材を選べば済みます。それに対して、生地を軽量化する上では素材だけでなく裁断方法の見直しが大切です。特に立体裁断には必要なパーツが多く、縫い目も縫い代も増えてしまうので、どうしてもそのぶん重くなってしまう。これを思い切ってやめてしまえば、ウェアを大胆に軽くすることができます。
今や立体裁断はさまざまなウェアに取り入れられているので、いざこれを切るとなると「えっ?」と不安に思われるかもしれません。ですが、主流になった新しい技術が常に絶対的に正しいわけではなく、立体裁断が生きるウェアもあるし、それをやめることでメリットが出る場合もあるのです。
たとえば、パンツやミドルレイヤーのような行動着では、運動性を高める立体裁断の長所が発揮されます。保温材の量をおさえた低ロフトなインサレーションウェアの場合も、体からシェルの表面までの距離が短くなるので、立体裁断を入れないと生地が突っ張って動きにくくなってしまうでしょう。
しかし、保温材をたっぷり使ったロフトの高いウェアの場合は、自分の肌とシェルの表面との距離が長くなるぶん、生地にかかるテンションは弱まります。それに、ハイキングでハイロフトなウェアを着るのは休憩中やキャンプサイトですから、それほど激しく行動するわけでもありません。クライマーがビレイジャケットとしてハイロフトなウェアを使う場合にも、そんなに大きい動きはしないはずなので、立体裁断ならではの動きやすさはあまり必要とされないのです。それならば、思い切って昔ながらのシンプルかつプレーンなパターンを使ったほうがいい。今の時代に、あえて立体裁断をやめることによる軽量化。その方法が最も生きるカテゴリが、ダウンパーカーだと思います。
フードまでしっかりダウンが入っていて重量が322gというのは、すごく軽い部類に入るはず。Highland Designs がオリジナルで出しているフードなしの Superlight UDD Jacket がダウン量100gで270gで、そこに50gのダウン量を上乗せすると、ちょうど320gぐらいです。フードが付いた状態であることを考えると、1000 Restar Down Parka は同クラスのダウンパーカーで最軽量といっても過言ではないと思います。フード付きのものがほしい寒がりの方や、写真撮影で冬場にずっとじっとしてなきゃいけないような人なんかにもおすすめです。
- 製品名
- 1000 Restar Down Parka
- 重量
- 322g
- 価格
- 64,000円(税別)
- メーカー
- Marmot
- 購入
- Marmot オフィシャルストアほか全国の取扱店