光量増・照射時間減をどうみるか? 超軽量ライト e+LITE が大刷新

光量増・照射時間減をどうみるか? 超軽量ライト e+LITE が大刷新
ELITE_main

超軽量ライトの代表格である PETZL の e+LITE が、大きくモデルチェンジしました。

今回の最新モデルは第4世代で、いちばん大きく変化したのはリール式になった先代のモデルです。しかし、最新のものは当初のようなバンドで固定できる一般的なヘッドライトに回帰しています。さらに、初期モデルと同様の収納ケースが付き、デザインも赤基調から白基調になりました。

※編集部注: 本稿は、Hiker’s Depot 店主の土屋智哉さんの談話をもとに、編集部が文章化しています。

こちらはリール式だった第3世代モデル。光量は最大26ルーメンで、照射時間は55〜70時間。

こちらはリール式だった第3世代モデル。光量は最大26ルーメンで、照射時間は55〜70時間。

最も注目すべきは、光量と照射時間の変化です。UL文脈で評価されてきた従来の e+LITE は、光量はそれほどでもなかったものの「これで充分じゃないか?」と思わせてくれるものでした。そのぶんバッテリーの持ちが長く、予備の電池を持つ必要もなくて済む。しかし、今回は光量が第3世代の最大26ルーメンから最大50ルーメンに増して、そのぶん照射時間は55〜70時間から9〜12時間に減っています。従来のモデルとは、ほぼ別物といってもよいでしょう。e+LITE は非常時用のライトとして作られているので、今回のモデルチェンジ背景には欧米における近年のレスキュー技術の変化が関係していると推測できます。

かつては、緊急時には長時間にわたって赤色灯を点滅させて現在地を誰かに伝えたり、レスキューが来るまで最低限の活動をなるべく長くとれるように、少ない光量で長く使えることが優先されていました。しかし、初代の e+LITE が出てから10年近くが経つあいだに、スマートフォンが普及し、電波が入る距離も広がっています。特にアメリカでは、ボタンを押すと衛星電話経由でエマージェンシーコールを発令して、レスキューが飛んできてくれるサービスがあります。こうしたインフラの整備は、緊急時に救出してもらうまでの時間を短縮しているはずです。こうした状況を意識して、電池の持続時間よりは明るさを優先したのではないでしょうか。

最新の第4世代 e+LITE には専用の収納ケースも付属。

最新の第4世代 e+LITE には専用の収納ケースも付属。

さらに、トレイルランニングがアウトドア・アクティヴィティのひとつとしてしっかりと定着したことも影響しているでしょう。特に100km、100マイル以上のレースが盛んになると、長距離長時間の移動も増えて、必然的に夜間行動をせざるをえません。ある程度の速度を保う夜間行動には明るいライトが求められるので、そうしたニーズを考えると、先代 e+LITE の26ルーメンでは光量がやや物足りない。そこで、エマージェンシー・ライトとうたってはいても、緊急時に行動しやすいように明るく変化させたのでしょう。

もともと、日本で e+LITE を積極使用する可能性を提示したのは、アドベンチャーレーサーの駒井研二さんでした。約10年前に駒井さんがトランスジャパンアルプスレースに出場したときに、ホームセンターで普通に買えるプチプチシートで防寒用のベストをつくってみたり、当時出たばかりの Black Diamond のカーボン製の折りたたみポールのグリップを外して使ってみたりと、軽量化にとことんこだわった装備の試みをしていました。そんななかで、駒井さんは夜間行動用に、まだ光量が16ルーメンだった当時の初代 e+LITE を選択したのです。その選択に、アドべンチャーレーサーやULハイカー界隈が「おおっ!」と反応したことを思い出します。

駒井氏が使用した初代 e+LITE 。当時は光量が最大16ルーメン、照射時間は35〜45時間だった。最新モデルに継承されたデザインにも注目。

駒井氏が使用した初代 e+LITE 。当時は光量が最大16ルーメン、照射時間は35〜45時間だった。最新モデルに継承されたデザインにも注目。

夜間行動時にライトを明るくしすぎると、スポット的に照らした部分だけしか見えなくなってしまいます。なので、月明かりがあって目が慣れてきたときなんかは、弱めの光量で全体をボワッと照らせるぐらいがちょうどよかったりもします。もちろん、駒井さんは下見で走ってルートを熟知しているでしょうし、夜間行動の訓練を十分に行った上で総合的に判断し、16ルーメンの e+LITE を選んだのでしょう。そこには自分自身の経験や使い方を考えて「十分に使用できる」と判断した、使用者自身の確かな意思決定がみてとれます。これに刺激を受けたULハイカーたちは「危険がつきまとう夜間行動を回避するなら、ヘッドライトを使用する状況はビバーク時やテントサイトでの宿泊時がメインになる。だったら16ルーメンの e+LITE でも十分じゃないのか?」と考えたわけです。

でも、やはり今の時代では昨年までの26ルーメンの e+LITE だと、他社モデルとの光量の落差が大きすぎるのも確かです。なので、PETZLのラインナップに70ルーメンの定番ヘッドライトがあるなかで、50ルーメンの新しい e+LITE を緊急用として再提示したというわけです。それをどう解釈して使うのかはユーザー次第です。ミニマルなUL志向の人たちにとっては、この明るさならば緊急用であることを理解した上でメインライトとして選択しやすくなったのではないでしょうか。旧モデルの26ルーメンだと、その決断をするにはけっこうな覚悟が必要でしたから。

製品名
e+LITE
メーカー
PETZL
重量
26g
光量
最大50ルーメン
照射時間
9〜12時間
価格
¥3,000(税別)
購入
Hiker’s Depot ほか
問い合わせ
ALTERIA
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク