冬キャンプで重要なのは「就寝時の対策」
キャンプの楽しみといえば焚き火。寒い季節はよりありがたみが増して、揺らめく炎を眺めながら至福のときを過ごせますよね。お酒や食事を楽しみながら焚き火の世話をする時間は最高です。
ところが、焚き火の後始末を終えていざ就寝となると、あっという間に寒さが身に沁みてきます。経験がある方もいると思いますが、寒くて夜中に目覚めてしまうとなかなか寝つけません……。
そこで「冬キャンプで寝るときの防寒対策がいかに大切か」について、体当たりで検証してみました!
3シーズンテントで冬キャンプに挑戦
真冬の寒空のなか、これで成功すれば問題ないだろうということで、今回はあえて3シーズンテントを使い就寝時の防寒対策を実践! 電源を使うような暖房器具も一切使いません。
今回使うのはこのテント!
用意したのはMSRのハバハバNX。軽さと居住性を両立したバックパッカー向けの3シーズン対応テントです。左からインナーテントとフライシート、ポール、グランドシートと、全部合わせても2kgを切る重さで、収納時のサイズは約46×15cmで携行性もよし。
ダブルウォールの自立式で、インナーテントは半分がメッシュ。暖かい時期は通気性が良好で快適です。
メッシュ部分が多いのでテント内はなかなか気温が上がらず寒そう。そしてこの日の予想最低気温は0℃、無事に一晩過ごせるかな……。
テントを設営し、寝床に防寒対策
さて肝心の寝床は、コットに冬用の寝袋をセット。コットと寝袋の間にはクローズドセルマットを敷きます。
そして地面からの冷気を遮るために、アルミ蒸着シートをテントの床一面に敷きます。これで地面からの冷気を遮断してくれるはず。
焚き火も終わりいよいよ就寝……
夕食を食べたあとは、のんびりと焚き火を満喫。焚き火の後始末や片付けをして、あとはテントに入って寝るだけ。
さて23時現在の温度は1℃。焚き火にあたっていたときと違って、凍えるほど寒い……。果たして3シーズンテントで無事、朝を迎えることができるのでしょうか?
その結果はいかに?
結論、かなり快適に眠れました
3シーズンテントで一晩過ごしましたが、夜中寒くて起きることはなく、朝までぐっすり! インナーマットとして、今回初めてアルミ蒸着シートを使ってみたのですが、地面からの底冷えの感じ方が全然違いました。
冬用寝袋とクローズドセルマットだけで寝ると、覆われている体部分は確かに暖かいです。ところが寝付くまでの間、肌が露出している顔や末端の手足は寒いまま。
アルミ蒸着シートを使うと、テント内の広範囲で地面からの冷気を遮断できるので保温性が増し、いつもより寒さを感じず過ごせました。
じつはこっそり対策したこと
信憑性のある対策方法がないまま冬キャンプに挑戦するのが不安で、じつは事前にベテランキャンパーの見城さんにアドバイスを聞いていました。見城さんはカメラマンとして活動する傍ら、人気ガレージブランド「ペレグリン デザイン ファクトリー」を運営。最近では執筆活動も行なうなど、多岐に渡って活躍されています。
無論、キャンプやアウトドアの知識、経験値は豊富。そんな頼れる有識者の見城さんに、就寝時の寒さ対策のポイントを2つ伺いました。
その1. 外気と地面からの冷気を遮ることが重要
まず冬キャンプでは、冷たい地面からの地熱が体に影響しないように、できるだけコット&マットレスを使うようにしましょう。
また、これは私が行っている対策ですが、それでも寒いときにはアルミ蒸着してあるマルチシートをグランドシートの上に敷いて、その上にコット&マットレスを設置します。
この事前のアドバイス通りに寝床を設営したというわけです。今回使ったアルミ蒸着シート「オールウェザーブランケット」のサイズは約152cm×213cm。
ハバハバNXの床全体を覆えたので冷気遮断の効果は抜群! 地面からの冷気を和らげてくれました。
そしてマットを選ぶ際に重要なのが「R値」。このR値とは熱抵抗値のことで、この値が大きくなるほど断熱力が高くなります。
R値が高いマットを使うことで、体の熱を逃がさず、かつ地面からの冷たい冷気もしっかり遮ることができるんです。
また、マットの「使用できる温度」もあわせてチェック。温度の表記は、メーカーによって「快適使用温度」や「参考使用温度」など表記が様々なので、なるべく余裕をもって選びましょう。
実際にコットの上に敷いたマットも見城さんのアドバイスを参考にしつつ、今回は手持ちのニーモイクイップメント「スイッチバック」を選択。
大きさは約183☓51☓2.3(厚さ)cm。表面の凹凸の形状が六角形になっているのが特徴的で、よりクッション性があり寝心地も良かったです。
R値は2.0とやや低めながら、参考使用温度は−7℃まである頼もしさ。ただ、アドバイスにもあったように、ニーモイクイップメントの表記は「参考使用温度」。あくまで参考なので、実際にほかの対策なしで‐7℃で使うと痛い目を見ます。
今回は、コットで地面から高さを出して空気の層を作ったり、アルミ蒸着シートで冷気を遮断したりと対策をしたので「スイッチバック」でも過ごせました。
よりマット単体での断熱効果を求めるなら、同じニーモイクイップメントの「ローマー」などを選ぶとより快適に過ごせるはず。重さは2.34kgと「スイッチバック」より重くはなってしまいますが、R値6.0で厚さは10.5cmもあり、冬のキャンプで安心して快適に使える性能です。
・厚 さ:2.3cm
・重 量:415g
・収納サイズ:13×14×51cm
・素 材:ポリエチレン
その2.寝袋選びは妥協してはいけない
そして、なんといっても重要なのはシュラフ選び。厳冬期のキャンプではしっかりと保温できるダウンシュラフを選びましょう。選ぶ基準としては、ダウンの量やダウンのかさを示す値「フィルパワー」が目安になります。
また、各社で言い方は違いますが、使用温度の目安も表記されていますよ。自分が使用する環境に合わせて最適なものを選びましょう!
このアドバイスを元に、筆者は国産メーカーのNANGA「オーロラ600DX」をチョイス! ダウン量が600gで快適使用温度は−11℃と、平地では冬用の寝袋として十分なスペックです。
たしかに3シーズン用テントの中で3シーズン用の寝袋を使用しては、当然真冬の寒さには耐えられません。
「コットやマットで冷気を遮る層をつくる」「寝袋だけは妥協してはいけない」、これら2つのアドバイスを実際に実行してみたら、無事に朝を迎えられました。
・ショルダーウォーマー内蔵ダウン量:約600g (この商品は国内で洗浄したスパニッシュダウン90-10%を使用いたしております。)
・快適使用温度: -11℃ /使用可能限界温度: -30℃
・フィルパワー:760FP総重量:約1350g
・収納サイズ:φ18×30cm
ちなみに見城さんはどんな寝袋を使ってるの?
アドバイスをくれた見城さんは、どんな寝袋を使っているのか聞いてみました。私が使用しているのは、Helsport の「RAGO Xtrem」という寝袋。作りもよく、温かいですよ。
Helsportのテントを輸入販売している会社の社長さんに譲ってもらいました。なので日本ではまだ未発売のようです……。
この寝袋を手に入れるまでの冬季のキャンプでは、フリースの寝袋も別で用意したり、さらにダウンの寝袋を二重にして使ったりもしていました。それでも寒くて眠れないときには、さらに上からシュラフカバーを寝袋にかぶせていましたね。
高スペックな寝袋を手に入れられなくても、こうした防寒対策でなんとか乗り切ってきました。それが楽しかったりするんですよね。今回は足が冷えたから次回はダウンシューズが必要だな、みたいな(笑)。
ここで疑問が。4シーズンテントは必要なのか?
ズバリ、見城さんに聞いてみた
今回、冬のキャンプでも3シーズンテントで十分に過ごせましたが、果たして4シーズンテントは必要なのか? ズバリ見城さんに聞いてみました。
当然4シーズンテントのほうが、さらに快適に寝られる
北欧のテントは比較的冬仕様の作りだと思いますし、日本のテントは夏でも快適に使えることを想定して作られているな、と感じることが多いです。やはりそのメーカーのある国の気候に合わせた作りになるのは当たり前といえば当たり前なのかな? と思います。
テントに関しては、3シーズン用の普通のテントと、薪ストーブを入れることを想定した秋から冬向けのテント、2つ以上を保有する、後は季節で快適な寝具を用意する、というのがいいかと思います。ひとつのもので−5℃から+40℃で使うのは、どんな道具でも厳しいかと。
確かに3シーズンテントでは、ハイパフォーマンスな寝袋やマットレスで暖かく眠れたとしても、テント内は寒いまま。テント自体の保温性能が上がればテント内を暖かく保てます。起きてからの着替えも楽!
よって4シーズンテントと3シーズンテントの使い分けができると、キャンプの過ごし方の幅が広がりますね。
寝具をしっかり準備して、4シーズンテントに泊まれば最強
今回、テントが冬対応の4シーズン用のものじゃなくても、寝具をしっかり選んで冷気をシャットダウンすれば泊まれることが分かりました。しかし、少しでも快適にするならやはり4シーズンテントの選択肢は捨てられません。予算に余裕がある方は、ぜひ買い揃えてみましょう!冬キャンプを充実化させよう!
冬のキャンプでは寒さ対策が大事。もちろん、薪ストーブや石油ストーブを持ち込んでのあったかぬくぬくキャンプも快適です。でもキャンプギアの工夫次第では、暖房器具を持ち込まなくても十分に過ごせます。
冬用寝袋、スリーピングマット、マルチシートなど手持ちのアイテムを組み合わせて防寒対策をして、冬キャンプを充実させましょう!
執筆:高久浩一