絶対覚えておきたいロープワーク「自在結び」あなたは3パターンのどれが好み?

記事中画像撮影:筆者

「自在結び」を身につけたい!

自在付きロープって便利ですよね。金属やプラスチックの「自在」を動かすだけで簡単にテンションを調節できます。

しかしこれ、自在を使わずとも「自在結び」というロープワークでも可能なんです。

自在付きロープを忘れてもロープだけあればOK、それが自在結びです。「自在金具が壊れた」「風が強くて自在付きロープの本数が足りない」といった状況で、自在結びスキルが役立つことでしょう。

なにより、ロープワークを覚えていないアウトドアマンより、覚えているアウトドアマンの方が頼りになるし、カッコいいですよね。今回は自在結びをマスターすべく、やり方を具体的にまとめてみましたよ。

自在結びをよく知る、この方に聞いてみた

特別ゲストとして、ブッシュクラフト株式会社の相馬拓也さんをお招きしました。相馬さん、いろいろ教えてください!



相馬さん
こんにちは、Bush Craft Inc.の代表取締役の相馬拓也です。

「自在結び」は非常に便利で、キャンプシーンではかなり使用頻度が高いロープワーク。覚えておいて損はありませんよ!



自在結びの心得

其の一:テンションが掛かると止まる
其の二:結び目を直接持つと動かせる
其の三:末端処理が緩むと、結び全体が動いて緩んでしまうことがある

まず心得てほしいのが自在結びの特徴。この3つの特徴をまずはおさえておきましょう。

自在結びは3パターンの結び方がある

自在結びの結び方を調べてみたところ、ざっくり分けて3パターンの方法が見つかりました。どれもこれもがまったく違う結び方のようです。

どの結び方にも共通するのは、結び目が2つあり、それを操作することで張力を調整できるということ。それでは相馬さんにコツを教わりながら、ひとつひとつじっくりと結び方を見ていきます。

自在結びパターン①

まずはこちら。仮に「パターン①」と呼称します。もっともよく見かける“THE 自在結び”な結び方ではないでしょうか。

2つの結び目の間隔は30~40cmあると張力を調整しやすいのですが、ここでの写真では見やすいように短くしています。
結び目を拡大しました。ペグや木などのアンカーに近い方の結び目は、非常にシンプルですね。左側の結び目はなんだか複雑そうに見えます。


相馬さん
このパターン①はオーソドックスな自在結びの一つで、最初に覚えたい基本形です。

右側の簡単な結びは「仮止め」の作用があり、設営途中で少し力が緩んでも、張りが戻りにくいメリットがありますよ。

【操作方法と注意点】
緩めるとき:左側の結びを持ってスライドするだけで緩ませることができる。
張るとき:右側の「仮止め」から先に「しゃくとり虫」のように操作する。また、あくまで仮止めなので末端側には常に一定のテンションをかけながら操作する必要がある。

パターン①の結び方

それではさっそくパターン①の結び方から。言葉で説明されてもよくわからないのがロープワークの常なので、できるだけ段階を細かくして写真にしました。


最初に、一連のロープの動きをこちらで確認してみてください。イメージができたら、細かく見ていきましょう。
まずはロープをペグや木の枝などのアンカーに通します。手前側から奥に向けて。
軸となるロープを乗り越えます。
Uターンして軸となるロープをくぐります。
そのまま上のロープを乗り越えます。
これだけで1つめの結び目は完成!
再び上から侵入。今度は軸となるロープをくぐります。
Uターンして乗り越えます。
Uターンしてくぐります。
そのままさらにくぐります。
Uターンして乗り越えます。この結び目で2度目ですね。
上のロープをくぐります。
そのまま軸となるロープもくぐります。「くぐります」が続きました。ここポイントです。
Uターンして乗り越えます。
そのまま自分自身をくぐるイメージで。
結び目をキュッと締めて完成。締めるときのコツは、指先で結び目を握り込み、先端を引っ張ること。


以上、パターン①の結び方でした。2つの結び目をスライドさせることで、軸となるロープをピンと張ることができます。


相馬さん
自在の基本形パターンなので、しっかり繰り返して覚えましょう。原理が分かってしまえば、ここから様々なアレンジに展開できるはず。

1つ目の結びは簡単ですが、2つ目で戸惑う人が多いと思います。まずは「戻りながら軸に2回巻き、クロスして先に進んで、軸に結ぶ」と覚えてみましょう。



自在結びパターン②

続いて見つけた結び方、パターン②。
結び目を拡大してみました。左右対称で美しい結び目ですね。2つとも同じ結び方のようですし、結ぶのが簡単なのではないかと予想されます。


相馬さん
動かしやすく、信頼性の高い優秀なパターンです。場合によっては1つ目の結びだけでも必要十分な可能性もあり、手軽にアレンジして使えますよ。
重たい対象を強いテンションで固定したいときに便利です。

【操作方法と注意点】
基本操作はパターン①と同じ。高負荷がかかる場面等で強く結んで使うと、ほどきにくくなる可能性があるのが難点。

パターン②の結び方

次にパターン②の結び方を見ていきましょう。


段階を細かく分け、文章はできるだけシンプルにしています。

ロープをペグや木の枝などのアンカーに通します。パターン①と同様、手前側から奥に向けて。
軸となるロープを乗り越えます。
Uターンしてくぐります。
上のロープを乗り越えます。
そのまま戻って、軸となるロープをくぐります。
再びUターンして乗り越えます。
上のロープをくぐります。
このまま締めれば、1つめの結び目は完成です。
2つめの結び目も、やり方は1つめとまったく同じです。再び軸となるロープを乗り越えます。
Uターンしてくぐります。
上のロープを乗り越えます。
引き返して軸となるロープをくぐります。
Uターンして乗り越えます。
輪っかをくぐります。
結び目を締め付ければ完成です。結び目を指先でキュッと握り込み、上方向に出ている2本のロープを引っ張れば、スムーズに締め付けることができます。


以上、パターン②の結び方をご紹介しました。軸となるロープにテンションをかけるには、パターン①と同様、2つの結び目をスライドさせて行います。


相馬さん
一見簡単に見えて、やってみると初心者の方は「ん?」が5~10回くらい出ると思います(笑)。一度覚えてしまえば、とくに強いテンションが必要なシーンではかなり優秀です。

ただし、ほどくときのことを考えて結びましょう。あまり気合いを入れてしまうとほどきにくくなるので、そこだけは注意。



自在結びパターン③

そしてパターン③がこちら。これは株式会社ブッシュクラフトの公式サイトで紹介されている結び方です。
直感的に、撤収時にほどきやすそうだと感じました。ペグや木にひっかける方の結び目(右側)は、ロープを回す方向がキモになりそうですね。


相馬さん
これは私が考案した結び方ですね。「動かしやすさ」「撤収が早い」「固定力」のバランスを鑑みたパターンで、一度結んでしまえば、1つ目の結びを動かした段階で手を放しても比較的緩みにくくなっています。

また、撤収時は2つ目の結びが引き解けになっているため、末端を引っ張ればスルスルと簡単にほどけます。

【操作方法と注意点】
こちらもパターン①②と同じく、張るときも緩めるときも「しゃくとり虫」が基本。1つ目と2つ目の間の末端側ロープがたるんでいると、不意に全体がゆるむことがある。

パターン③の結び方

最後にパターン③の結び方を。どの結び方が好みか、実際に試してみてくださいね。


まずは流れをイメージして……こちらも細かく見ていきましょう。

まずアンカーにロープを通します。これはパターン①、②とは違い、奥から手前に。
軸となるロープを横切って乗り越えます。
引き返し、軸となるロープをくぐります。
Uターンして乗り越えます。
もういっちょ乗り越えます。
引き返して軸となるロープを再びくぐります。
Uターンして乗り越えます。これで計3回、軸となるロープを乗り越えました。
さっきと同様、もういっちょ乗り越えます。
軸となるロープをくぐります。これで計3回、軸となるロープをくぐりました。
下のロープを乗り越えます。
このまま結び目を締めれば、1つめの結び目は完成。
2つめに進みましょう。軸となるロープを乗り越えます。
Uターンしてくぐります。
下のロープもくぐります。
先端を折りたたみます。
Uターンし、くぐったばかりのロープを乗り越えます。
輪っかに侵入していきましょう。
折りたたんだ部分の半分まで侵入し、あとは結び目を締め付けます。
締め方はこんなふうに。片花結び的に、ほどきやすくしておくというわけです。
完成しました。やってみると難しそうで難しくない工程でした。


パターン①、②と同様、2つの結び目をスライドさせることで張力を調整するわけですが、ピンと張るときは右側の結び目から、緩めるときは左側の結び目から動かしましょう。


相馬さん
この結びは、何より撤収が楽なことが特徴です。キャンプって、設営しているときは楽しいけど、撤収ってすごくダルいですよね。

そんなとき、ロープひとつでも素早くほどけるだけでかなり気分が違います。

自宅や旅行先でも役立ちそう

以上、自在結びの3つのパターンをご紹介しました。どれをマスターするかはお好みで。

人によってしっくりくる結び方、記憶しやすい結び方ってありますから。筆者は個人的にはパターン③がお気に入りですかね。ロープのほどきやすさがお手軽でした。
自在結びはテントやタープ絡みだけでなく、物を吊るしたいときにも活躍します。キャンプで濡れたタオルを干すときなど、非常に有効なスキルとなるでしょう。

また旅先や自宅で、臨時の物干し竿が必要になることもありますよね。必要に応じて、さっとパラコードを自在結び……そんなスマートなキャンパーになってしまいましょう!

最後に、相馬さんからいただいたコメントで締めくくります。


相馬さん
自在金具はとても便利な道具ですが、適合ロープ径引張強度など、範囲が限られているものがほとんど。

「便利で簡単な道具」って、じつは「その道具のスペックに人間が合わせる」ということでもあるのです。あなたの自由が、「道具のスペックに縛られる」なんてもったいない。

でも大丈夫! 自分で「自在結び」を覚えてしまえば、どんなロープでも、思いつくままの用途に使えるようになりますよ!


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