今年で3回目を迎えた国内のオルタナティブなギアメーカーを中心とした野外アウトドア見本市〈Off the Grid〉。その概要は今年からオフィシャルメディアパートナーとなったgearedでもお伝えしていますので、ぜひこちらやこちらなどをご確認いただきたいのですが、筆者も初日の土曜日に会場を訪れましたので、主に〈Off the Grid〉で初お目見えした国内コテージメーカーの新製品を中心に、その模様をレポートしたいと思います。
まず、会場を訪れて感じたことは、昨年、一昨年にも増しての人の多さ。人気メーカーのブースには黒山の人だかりで、気になった道具の写真を撮ろうにもなかなか機会が訪れないほど。今年は The North Face や Marmot など大手メーカーも参加し、一般ユーザー的にはもちろん、アウトドア業界的にも無視できないイベントになってきていることは間違いないないでしょう。なかでも、山と道 ブースには常に長い行列ができ、改めてその人気の高さには驚かされました。
Locus Gear のシェルターたち
それでは、早速筆者が気になった製品を見ていきたいと思います。まず、筆者的インパクトNo.1はなんといってもこれ! Locus Gear の新作ドームテント Djedi Dome CTB eVent Prototype(冒頭に写真掲載)です。
キューベンファイバーとeVentをハイブリッドした(!)最新素材を使い、ファスナー周り以外はすべてボンディング加工で仕上げ、L230cm x W130cm x H100cmの2人用テントながら850gという重量を達成した、現在の Locus Gear の製品開発力、素材調達力、技術力のすべてを投入した結晶と言えるのではないでしょうか。
Djedi Dome は数年前から数々のプロトタイプが発表されてきましたが、ついについに製品版としてリリースされそうです。ただ、「材料費だけでも目玉が飛び出るほど高い」とLocus Gear の吉田丈太郎さんもおっしゃっていたので、おいそれとは手が出にくいスーパーテントにはなりそうですが。
そして Locus Gear からはもうひとつ、gearedの〈Off the Grid〉プレビュー記事でも紹介されていた Khafra HB Prototype + Khafra HB Innermesh Prototype も展示されていました。
大手メーカーのテント縫製を手がける中国の一流ファクトリーに製造を委託した Locus Gear 初のマスプロダクト・ラインで、設計自体は現在、相模原の自社ファクトリーで作られている Khafra とほぼ同じ。職人が手作りしているという意味では何も変わらないはずなのに、「ガレージ臭」が見事に消え「マスプロ」に見えるのは、当たり前といえば当たり前ですが不思議な感慨を覚えました。
正直、筆者個人的にはこれまでの Locus Gear の「ガレージ臭」が好きだったりはするのですが、それはそれ。これまで自社ホームページでの予約販売のみで数ヶ月待ちが当たり前だった Locus Gear が、リテーラー販売を視野に入れたHBラインを加えることにより、お店で実際に見て、触って購入できるようになることは、多くのユーザーが待ち望んでいたことでしょう(筆者のようなガレージ臭が大好物な方は、これまで通り相模原ファクトリーでの製造ラインも維持されるそうなのでご心配なく)。HBラインを手に入れた Locus Gear の今後がどうなるか、目が離せそうにありません。
SOLA TITANIUM GEAR の超軽量なガスストーブ用ヒーター
そして〈Off the Grid〉といえば、多くのメーカーが会場限定で先行販売する新製品を投入することも来場者の楽しみのひとつ。そんななかで特に話題をさらっていたのが、Moonlight Gear のブースで先行販売された SOLA TITANIUM GEAR の Super Heater ではないでしょうか。
ガスストーブの上に載せることで熱の方向を上から横に変換し、さらに遠赤外線を発生させて体を芯から温めてくれるという簡易的なヒーターで、現物は鉄板の入った茶漉し…(失礼!)…のようなものなのですが、ともあれ、これまでもガスストーブ用ヒーターは数あれど、ここまで小さく、軽い(45g!)ものは他にありませんでした。
オートキャンプのタープの下で大人数で使うにはおそらくパワー不足でしょうが、たとえば雪山での少人数のキャンプ中、テントのなかで換気に十分注意した上で使うならば心強い存在になるでしょう。非常にシンプルながらもこれまでにないものを作るその発想力には正直、脱帽です。火を点けると浮かび上がる「STG」のロゴもニクい!
Rawlow Mountain Worksのエクスクルーシブなアイテム群
ニクいといえば、今年初参加ながらいきなり台風の目となった Rawlow Mountain Works。
筆者も以前gearedで紹介したバックパック Antelope や TABITIBI Tote の Hybrid Cuben Fiber Editition や TABITIBI Tote専用Camera Kit、さらに TABITIBI Tote のキッズ番 TIBITIBI Tote など数々のエクスクルーシブアイテムをひっさげて登場し、開場と共に長蛇の列を作り、筆者が到着した午後一時過ぎにはすでに TABITIBI Tote Hybrid Cuben Editition は初日分完売……。
なかでも筆者的注目は写真右下のCamera Kit。試作品をいち早くテストさせていただいたのは以前記した通りですが、TABITIBI用カメラハウジングに幅が広くなった交換用ストラップ、単体でポーチとしても使える専用ケースがセットになった製品版は、思わず「よくもまあこんなもの考えるわ!」と言いたい逸品。とくに30mmの幅広ストラップのカメラ愛溢れる仕上げなどは、感心を通り越して呆れるほどです。
他にも会場では試作品展示のみでしたが、写真の裏地にポリエステルメッシュを、表地にコットンを配したオリジナルTシャツや、会場で Rawlow のお二人がさりげなく被っていた試作中のキャップなど、二の矢三の矢がまだまだ飛び出してきそうで、2017年も最注目メーカーであり続けることは間違いないでしょう。
atelierBluebottle の山でも街でもばっちりなTシャツ
行列といえば、atelierBluebottle も開場と共に長蛇の列を作りました。みんなのお目当は、これも〈Off The Grid〉で先行販売された Hiker’s T-shirts。
Supernatural とのコラボレーションで生み出されたメリノウール50%ポリエステル50%のハイブリッド生地を使用した山を歩くためのTシャツ。一見、オーセンティックなポケットTシャツに見えますが、バックパックと当たる肩には身頃より厚い生地を使っていたり、縫製にはフラットシームを採用したり、後ろ身頃はバックパックを背負って前かがみになっても背中が出にくいようポロシャツのように長くなっていたりと、atelierBluebottle のこだわりが随所に詰まった仕上がりになっていました。
ほんの数年前までは山で着れるTシャツといえばスポーティなカッティングのものばかりで、そこに不満を抱くハイカーも多くいましたが、山と道 の Merino Henry T-shirts が登場したあたりから Brown by 2-tacs の BAAシリーズや ibex の Ringer-T、そしてこの Hiker’s T-shirt のように、山も街も1枚で歩き続けることのできるTシャツが増えてきたことは嬉しい限り。アウトドアウェアとシティウェアのシームレス化とでも言うべきこの流れは、まだまだ続きそうです。
X-Pacブームへの挑戦状!? PAAGO WORKSのバックパック
geared で NINJA NEST を紹介したばかりの PAAGO WORKS も、〈Off the Grid〉会場先行予約アイテムを展示していました。
あの Rush 28 の本体素材をX-Pacにモデファイした Rush 28 XP Gracier White。正直、現在の国内コテージメーカーにおけるX-Pacの大ブームには少々食傷気味な部分もある筆者ですが、さすが PAAGO WORKS の手にかかると、こんなにもオリジナリティのあるものになるのかと驚かされました。
X-Pacは防水性が高く、タフで軽量で生地にコシもあり、さらに独特の風合いもある素晴らしすぎる生地で、それゆえX-Pacで作ればなんでもそれなりに格好良く見えてしまいます。それが逆にデザイナーの創造性をスポイルしている面もあるのではないかと筆者は勝手に危惧しているのですが、Rush 28 XP は PAAGO WORKS デザイナー斎藤徹さんの「X-Pacを使うなら、このくらいやってみなよ」という若手デザイナーへの挑戦状というか、叱咤激励のように感じました。まったくもって勝手な妄想ですが。とにかく、あの衝撃的な背負い心地の Rush 28 に最強素材X-Pacが乗ったのです。鬼に金棒とはこのことでしょう。
素材替えアイテムでもうひとつ筆者が気になったのがこれ。
アライテント の名作に新シリーズ加わる
どどーん。あの アライテント の名作バックパック ライペン の クロワール・シリーズに、ダイニーマXグリッドストップに似た格子状の模様の入ったスパイダロンという生地のシリーズが加わったのです!
あのクラシカルなクロワールがULギア定番のダイニーマ生地風に……と言うだけで筆者としては胸がキュンキュンしてしまうのですが、この感覚はわかる人にはわかるし、わからない人はまっっったくわからないでしょうね。すみません。
ともあれ、ダイニーマXグリッドストップをコットンライクな風合いにしたような スパイダロン は、筆者のようなUL野郎はもちろん、山の大先輩方にも違和感なく受け入れられそうで、かつ新鮮さもある面白い生地だと思いました。さすが アライテント、面白い手を打ってきましたね(偉そうにすみません!)。
ifyouhave 待望の本格パック
PAAGO WORKS、アライテント とバックパックが続いてきたので、もうひとつバックパックを紹介してしまいましょう。gearedでもお馴染みのifyouhaveに、待望の新作にして初の本格的なバックパック Hug(仮称)が登場しました。
一見、スタンダードなULバックパックに見えますが、特筆すべきはその背負い心地。バックパック各所に配置されたバンジーコードが一本につながっており、それを引くことでバックパック全体がコンプレッションされ、理想的な荷重バランスになるのだとか。背負ってみると Hug と付けられたその名の通り、後ろから包まれているような不思議な感覚を覚えました。これはちゃんと山を歩いてみて真価を試してみたいなあ……。ifyouhave の Hug は最大容量40Lの本体重量は550gで、2017年の夏には発売予定とのこと。
まだまだ会場で気になる製品はたくさんあったのですが、例によって長くなってしまいました。というわけで、次回に続きます!