4月に開催される国内最大規模のアウトドア展示会〈Off the Grid〉に向けてのシリーズ連載。今回から2回に渡って、同イベントの出展メーカーのなかから、geared的に気になるブランドをご紹介していきます。まずは、100マイル級のトレランレースを見据えたものづくりを行っている ANSWER4にフォーカス。ブランドを主宰する小林大允さんに、ANSWER4の成り立ちや姿勢、新しいプロダクトなどについて伺いました。
・〈Off the Grid 2017〉の開催概要はこちら。
UTMBでテストして商品化したバックパック
――まずは、ANSWER4の最初のプロダクトであるバックパック FOCUS Ultra の開発動機から改めて教えてください。
小林 2014年に、半ば遊びでミシンを踏み始めてFOCUS Ultraのプロトタイプを作ったのですが、やってみると意外とできるもんだなと。それで、その年の夏のUTMB(Ultra-Trail du Mont-blanc)に当選していたので、この世界最高峰と言われるトレランレースで自分の商品を試してみようと思ったんです。実際に友人とふたりで FOCUS Ultra を使って出場し、無事完走することができました。その後も他の友達に使ってもらったりしながら、2014年の12月に販売をスタートさせました。
――販売に至るまでがすごいスピード感ですね。
小林 試作を重ねて、UTMBが最後のテストのつもりだったので、完走できた時に商品としていけるなと思ったんです。自分の周りにもガレージブランドを立ち上げている仲間が結構いましたし、彼らができているのだったら自分もやれるんじゃないかと(笑)。
小林 後発のブランドなので、まず他のメーカーのバックパックと被らないデザインにしたくて、かつ機能性のあるものを考えました。トレランザックで一般的なおにぎり型だと重心が下に来て、走っていると揺れてしまうんですね。この揺れをなくすためには、重心を体に近づける必要があります。逆三角形にすれば、重心が上に来て体に寄せられるし、重さを感じづらい。FOCUS Ultra はその狙い通りに仕上がりました。体に同調してザックが動きますから。
――ファブリックに伸縮性がないX-Pacを採用しているのもポイントなのでは。
小林 そうですね。多くのメーカーはザックにメッシュを使っていて、それは容量を可変できるというメリットがあるんですが、一方でものをたくさん入れると素材が伸びて高さが出て、重心が体から離れるため揺れが生じてしまいます。このデメリットを回避するために X-Pac を選んだのです。
―― FOCUS Ultraを発売されてから2年強経っていますが、改変したところはありますか?
小林 当初のチェストストラップは両方ゴムでしたが、その後に片面だけナイロンテープに変えて、より伸びを抑えて揺れが起きにくいようにしました。大幅に変えたのはそれくらいで、基本的なつくりは一切変わっていません。自分が走ってきたフィードバックをすべて注ぎ込んで作りましたからね。
――4Lで160gのFOCUS Ultraを手始めに、さまざまなザックを展開されました。
小林 FOCUSとFOCUS Rは20Lとかなりの容量で、それぞれ280/310g。この2つはファストパッキングのためのものですね。その後に発表した FOCUS GHOST は軽量なキューベンファイバーを使っていて、サイドポケットをひとつにしたりとパーツをとことん省いたモデルです。削りまくって125g。
――Tシャツより軽いですね(笑)。
小林 ただ、あまりに軽いので、前後の重量バランスをうまく取る必要があります。前側のホルダに入れるドリンクボトルが2本で1.3kg以上になるので、背面が軽すぎると揺れてしまうんです。
アパレルにも走るためのノウハウを注ぎ込んだ
――最近はアパレルにもラインナップを広げています。既成のボディを使うのが一般的なTシャツも、イチからオリジナルで作られているのがすごい。
小林 トレランは登山以上に自分を極限状態に追い込むアクティビティなので、少しでもストレスがないものにしたかった。ボディから作ることで、袖をだぶつかせないようにしたり、胴体を裾に向けてテーパードさせることで走ってもめくりあがりづらくしたり、肩の縫い目を前に持ってきてリュックの重みがかかりづらいようにしたり、走るためのノウハウをいろいろ入れているんです。
――グラフィックがおもしろいですね。
小林 ものづくりは真面目だけど、デザインは力が抜けていてふざけている(笑)。そういう振り幅がいいかなと。
小林 これは Polartec の PowerGrid ファブリックを使っていて、やはり走るためのモデルなので薄めにしています。厚いと温かい分、汗抜けが悪くなるので。
――裏地のグリッドの凹凸で空気は保ちつつ、体温調整しやすく工夫されているんですね。
小林 加えて、ベンチレーションしやすいように、上下どちらからでも開けられるダブルジップにしています。低山で走っているときは羽織るくらいで、稜線に出たらジップを締めればいい。ザックの上からでも羽織れるかなと。レースで走っていると、途中で脱いでザックを降ろして……というのが面倒くさい。そういう手間がかからないように仕上げました。
カラーリングはこれまで黒のみでしたが、この春から黒とグレーの2色で展開します。
小林 そうです。以前、自分は海パン的なものを穿いていたんですけど、結構生地が厚くて、走って汗をかくと塩分でガビガビになってしまうんですよ。まあ、海パンですから当たり前なんですけど(笑)。そこで Schoeller の Nanosphere加工された、柔らかくて撥水する生地で作りました。
それから、普通のショートパンツはスリットが外側にも入っていますが、3Pocket Short Pants は街でも使いやすいように、内側だけにスリットを入れています。ANSWER4 は街から100マイルレースまでで使えることをテーマにしているので。
――これから展開予定のプロダクトを教えてください。
小林 今春以降に予定しているのは、新しいショートパンツ、ロングパンツですね。
――ショートパンツは、これまでの 3Pocket Short Pants とはまた違う方向性のものですか。
小林 3Pocket は街使いも意識していますが、新作は完全にレースに振ったモデルです。スリットを深く入れていて、ポケットは四つ。後ろのポケットにジェルなんかが入れられます。それから、縫い目が体の骨とかでっぱるところに来ないようなつくりにしていますね。縫い目に負荷がかからないように。
――ANSER4 のコンセプトを言葉にするとどんなものになりますか?
小林 家電メーカーの BRAUN でたくさんのデザインを手掛けた「ディーター・ラムスの良いデザイン10か条」というものがありますが、それに近いかもしれません。シンプルで独創的なデザインと、機能性の両立。そのことを最初からコンセプトにしています。
逆三角形の FOCUS Ultra が象徴的ですけど、パッと見て ANSWER4 だとわかるプロダクトを作りたいんです。ブランドロゴを大きく入れないようにしていて、それで成立するものじゃないとだめだなと。
――あくまでランニングありきという点もぶれていないのでは。
小林 ウルトラレースで勝つためのプロダクトを常に目指していますね。例えば、ウェアにはリフレクターをつけていません。リフレクターがあると、夜間に自分の位置が競争相手にばれてしまいますから。
――国内のガレージメーカーで意識しているブランドはありますか?
小林 山と道ですね。主宰の夏目(彰)さんはロングトレイルを走って製品をテストしながら開発していて、プロダクトとしての説得力があるし、クオリティもすごい。ブランドの方向性は違いますけど、だからこそ刺激を受けています。逆に、夏目さんに我々がやっている100マイルレースを始められたら困っちゃいますね(笑)。
- 製品名1
- FOCUS Ultra
- 価格1
- ¥24,500(税別)
- 製品名2
- Power Grid Full-Zip Hoodie
- 価格2
- ¥15,900(税別)
- 製品名3
- 3Pocket Short Pants
- 価格3
- ¥8,900(税別)
- 製品名4
- 4Pocket Long Pants(今春発売予定)
- 価格4
- ¥12,900(税別)予定
- メーカー
- ANSWER4