マットと一体化するスリーピングバッグと居住性抜群の2ポールシェルター。日本のガレージシーンの雄が新製品を続々リリース

マットと一体化するスリーピングバッグと居住性抜群の2ポールシェルター。日本のガレージシーンの雄が新製品を続々リリース
2016_05_19_1860

FREELIGHT といえば、近年大きな盛り上がりを見せている日本のインディペンデント系アウトドアメーカーの草分けのひとつ。

素材にスピンネーカーを使用した超軽量ザック Spinn Zack を始め、世界初のカーボンフェルトストーブ Trinity-ONE、ユーザーのイマジネーションで様々な貼り方の可能な Swing Tarp など、ユニークなプロダクトの数々はシーンの中でも独自の立ち位置と信頼を得ています。今回はそんな FREELIGHT から新製品が続々とリリースされるという報せを聞きつけ、千葉の工房まで伺いました。

スリーピングバッグでは珍しいブラック×グレーの配色がクール。

スリーピングバッグでは珍しいブラック×グレーの配色がクール。


まず見せていただいたのは、先日リリースされたばかりのマットと一体化するスリーピングバッグ Wrapta3.5。スリーピングバッグの根本的な問題に、就寝時に背面インサレーションが体重で押しつぶされるため本来の保温力を発揮できず、デッドウェイトとなってしまうことがあります。この問題を解消するため、ULハイカーの間では背面のないキルトタイプのスリーピングバッグが使われたりもするのですが、うまく使われないと隙間からどうしても冷気が入り込むのも事実。Wrapta は、この問題に背面にマットを差し込むスレーブを設けることにより解決を図っています。
スレーブはNeo-Airなど50cm幅の長方形のマットがぴったり収まるサイズだが、マミー型ももちろん使える。

スレーブはNeo-Airなど50cm幅の長方形のマットがぴったり収まるサイズだが、マミー型ももちろん使える。


ともあれ、この構造はアメリカの Big Agness も”System Bags”というラインで自社マットと組み合わせるモデルを多数作っていたり、今回 Wrapta を共同開発した NANGA もかつてマットマンという名で製造していた形。ですが Big Agness System Bags は国内では取り扱われておらず、NANGA のマットマンも現在は廃盤の状況です。そこで FREELIGHT のオーナー高橋淳一さんは Neo Air など軽量で保温性も高いマットが登場してきた現在こそこのシステムは有効ではないかと考え、それら現行のマットに対応する形のマットマンのリベンジマッチを NANGA に提案したのだと言います。

背面部分のダウンを配したことにより、350gのダウン封入量に関わらず封入量600g相当のスリーピングバッグ並みの保温力を発揮。肝心のダウンも NANGA オリジナルの 770 フィルパワーのデラックスウルトラ撥水ダウンを使用しています。

ファスナーには蓄光素材の生地を噛みにくいものを使っている。NANGA製なので、もちろんメイドインジャパン。

ファスナーには蓄光素材の生地を噛みにくいものを使っている。NANGA製なので、もちろんメイドインジャパン。


試しに Neo Air を入れた状態で寝かせていただくと、マットと一体化していることにより非常に安定感があり、ベッドで布団をかぶって寝ているような気分になりました。マットを薄手のものに変えればもっと暖かい気候にも対応できそうですし、例えば半身用マットと下半身にバックパックの背面パッドなどを敷く場合も、スリーブに入れればずれないので安心して眠れそうです。限界使用可能気温-11℃とのことなので、個人的にはマットや保温着を考えればわずか710gの総重量にも関わらず厳冬期の使用も夢じゃないかも、と思いました。
Mの最終プロトタイプ。ちなみに標準サイズの M Trail とロングサイズの M Guide の2サイズ展開。

Mの最終プロトタイプ。ちなみに標準サイズの M Trail とロングサイズの M Guide の2サイズ展開。


続いて見せていただいたのが、7月中旬に発売を予定している(M Trail のみ。M Guide は近日発売とのこと。2016年6月現在)「M」と名付けられた2ポールシェルター。一見「MSR のツインシスターズにそっくりじゃん」と思われる方もいるかもしれませんが、現物を仔細に見ていくと、独自設計の塊であることに驚かされます。

M を見て、「なんだかつるんとしているな」と思われるかもしれません。その秘密は、通常のテントにあるフロントパネルとサイドパネルの間にある縫い目がないこと。なんと M は、基本的にたった2枚の布で本体が構成されているのです。

縫い目を排除したことにより破断リスクがなくなり、さらに風を孕む縫い目を排除したことにより、耐風性も増したと言います。基本的に弱い構造物であるシェルターに補強部品を加えることで強度を出すのではなく、逆に力を逃すことによって耐風性を上げたのだとか。

独自の設計により2本のポール間を長く取っているため、入ってみるとその広さに驚かされる。

独自の設計により2本のポール間を長く取っているため、入ってみるとその広さに驚かされる。


これを口で言うのは易しですが、現在の設計にたどり着くには2年の月日を要し、しかもただでさえ縫製が難しい極薄の20デニールシルナイロン(FREELIGHT のオリジナル素材)をすべて曲線で縫製しなくてはならないため、試作にも相当の苦労があったとか。

普通の縫製工場に依頼してもまず断られるほど縫製の難しいMを製品化できた秘密は、FREELIGHT が自社工場を持ったこと。古くからアウトドア用品の縫製や修理を担当してきた工場と提携して専用工場を作り、半年間かけて職人さんに20デニールのシルナイロンを縫えるようになってもらうことから始めたとか。

横から見るとフロントパネルの角度がかなり立っているのがわかる。

横から見るとフロントパネルの角度がかなり立っているのがわかる。


また M を横から見ると、フロントパネルの角度がかなり立ち上がっていることに気づきます。つまり、柱となる2本のポールの間隔が非常に長いのです。これにより抜群の居住性を実現。ポールシェルターにありがちな空間の真ん中に柱が立っている感覚がなく、取材時に見せていただいたロングサイズの M Guide ならば4~5人で中に入っても宴会できそうでした。

しかもこれでロングサイズの M Guide で390g、標準サイズの M Trail で360gしかないと言いますから驚きです。フィールドテストをしていないのでなんとも言えませんが、ファーストルックでは現在の2ポールシェルターの決定版とも言えるスペックと完成度を有しているのではないでしょうか。いや、欲しいわ、これ……。

さらに新しいバックパックのチタン製フレーム(SpinnZack50tif として6月27日発売なのですが、取材時はサンプルが工場に行っていて見られず……残念)や、驚愕の構造のアルコールストーブ(詳しくは書けませんが、まるでガスストーブみたいなアルコールストーブ!)なども見せていただきました。

高橋さんの作業机。

高橋さんの作業机。


かつて自転車メーカーの実業団チームで選手をしながら開発部の方々に多くを学んだという高橋さんは、自らのことを「技術屋」と呼び、だからこそ構造と理論にこだわってものづくりをしているのだと言われました。また、現在は素材が良くなった反面、そこに頼りすぎて設計が疎かになっているプロダクトが多いとも。

現在の百花繚乱のインディペンデント系メーカーのシーンの中にあって、一際独自の道を行く FREELIGHT。工場も設立し、シェルター担当やストーブ担当のスタッフも加わり、もはや「ガレージ」とは言えない領域に突入していました。これからもその「技術屋」の目線で、驚くようなプロダクトを見せていただきたいです。

製品名1
Wrapta3.5(発売中)
価格1
¥34,800(税別)
製品名2
M Trail(7月中旬発売予定)
価格2
¥36,000(税別)
製品名3
M Guide(近日発売予定)
価格3
¥39,000(税別)
メーカー
FREELIGHT
購入
FREELIGHTオンラインストア ほか
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク