山形の名店、ついに東京へ!
「ディセンバーって山形にあるアウトドアショップなんですけど、キャンパーのあいだでは知られた存在なんですよ。とくにオリジナルの評判が本当によくて。それがついに東京にも上陸するっていうんで、これはもう行ってみるしかないなと」通称「家具屋通り」「インテリア通り」などとも呼ばれる東京・目黒通り沿いの新ショップへ急行したのは、この連載のナビ役をつとめるスタイリスト平さん。はやる気持ちを抑えきれず、店内へと飛び込みます!
味わい深いラインナップ
タープフラッグ
まず最初に平さんが手に取ったのは小さな旗。不思議そうな表情で見つめる平さんに声がかかります。
「それはタープフラッグ。これで目印をつけておけば、自分のサイトがどこか一目でわかりますから」
そう教えてくれたのは山形と目黒店のオーナー、菊地さん。すらっと背が高く、日焼けした表情はいかにもアウトドアマンといった雰囲気に満ちています。
「うちのオリジナルブランド“ククチ”の名前が入っていますけど、次回は無地で作りたいと思っていて。そうしたら旗に自分の好きなスタンプとか押せて楽しいじゃないですか」
そういって子どものように笑う菊地さん。地元・山形が色濃く打ち出されたアイテムに平さんが反応します。
山形の木でできたキッチンツール
「うわ、このカッティングボード、側面の焼けた感じとかたまらないですね。これはなんの木ですか」
「クルミなんです。とってもいい香りがしますよ」。ボードに近づくと、たしかにほんのりクルミの香りが。山形で採れたクルミを使用した芦野直之さんという木工作家の作品で、菊地さんが確かな技術と風合いに惚れ込み実現したコラボレーションです。
「ボードの大きさも厚みもてんでまちまちで、そこがたまらない。天然素材だからこそですよね」
隣に置いてあるのは小枝の2本セット。はてこれは……?
「お箸です。自分でナイフで削って作るDIY精神にあふれたお箸。削ったところだけが白っぽくなって、いい表情になるんですよ」
すでに削ってあるのと、購入者が削るものと2タイプ用意してありますが、菊地さんはぜひ自分で削るほうにチャレンジしてもらいたいそう。
「このお店でお箸削りのワークショップをやりたいと思っているんですよ。自分で削ったお箸で食べればゴハンのおいしさも倍増するでしょう」
材質はラ・フランス。名産地である山形の魅力を伝えるカトラリーです。
さらに一緒に置かれているしゃもじは、さくらんぼの木が原料。これまた山形を代表する果物で、菊地さんの山形愛はこんなところにも強く表れています。
趣味のカモ猟がヒントに
忘れられない思い出の“味”
平さんの実家もじつは山形にあります。帰省したら必ずディセンバーに立ち寄るそうで、カモ鍋をご馳走になった思い出を披露してくれました。
「菊地さんが猟で捕ったカモを山形のお店ですぐに調理して、ふるまっていただきました。あれは最高においしかったな~」
遠い目をしてつぶやく平さん。それほど忘れられない味だったようです。菊地さんは数年前からカモ猟にハマり、オンシーズンは休みをすべてカモ猟にあてているという没頭ぶり。
「鳥は本当に頭がいいんですよ。普通に自然に歩いていても鳥は逃げませんが、不意に止まると気配を察知して明らかに警戒し、もう次の瞬間には飛び立ってしまいます。なので個人的な趣味のハンティング用に、こすれてもカサカサ音がしないカモフラ柄の生地を仕入れたんですが、それがあまりにもよかったので作ったのがこれです」
ガス缶ケース
そういって差し出したのがガス缶ケース。ソトのレギュレーターストーブと組み合わせるとじつに絵になります。
「日本の山林に溶け込む、マックス4と呼ばれるリアルツリー柄です。味気ないガス缶もこれで素敵なキャンプギアに早変わりです」
こちらはダイスというオリジナルブランドのもので、平さんは同ブランドのツールバッグも気になるご様子。
厚手のツールバッグ
「このツールバッグ、すごくしっかりした作りですね。こんなふうに中にコンパートメントを入れればさらに便利に……あれ、この赤いのは何ですか」
「これは飯ごうです。エバニューからリリースされているもので、すごくきれいな発色ですよね。普通のライスクッカーとは違って円柱型なのも魅力です。昔仕入れたときは全然売れなかったんですけどね(笑)。時代が早すぎたのか、最近かなり人気ですね」
ガダバウトチェア
平さんがおもむろに広げたのは懐かしい柄のチェア。
「今ではもう作られていない、ガダバウトチェアのオリジナルです。80年代のを中心にいくつか置いていますが、それぞれ作られた時期によってタグが違っていてマニア心をくすぐります。復刻モノも出回っていますが、やっぱりオリジナルが欲しいというお客さまは多いですね」
そう解説してくれた菊地さん。ディセンバーではどこか昔っぽいイメージだったり、懐かしさを感じるようなアイテムが多い気がします、という平さんの言葉に深くうなずきます。
「ガダバウトチェアみたいなリアルヴィンテージはもちろん、オリジナルアイテムもそういう雰囲気のものが多いです。理由は僕が好きだから(笑)。たとえば生地でいうなら、いかにも昔のテント生地っぽい分厚いタイプが好き。うちのは経年変化を楽しめるパラフィン加工を施してあり、いい感じのアタリが出てくるよう仕上げてあります」
ヴィンテージを現代的に楽しむ
ハンモックとクッション
「確かに、この厚手生地のハンモックも最高ですね。丈夫なチューブラーテープを使っているから強度もバッチリ。ダイスの迷彩クッションをマクラにすれば完璧です」
クッションはすでに普段から愛用しているという平さん。「一見ハイテクに見えても中身がクラシックだったり、逆に見た目がレトロでも今っぽい工夫がなされていたり、そういう遊びゴコロもこのお店ならではですね」。
それなら、まさにちょうどいいのがありますよ、と菊地さんが教えてくれたのはピカピカのツーバーナー。
アルコールのバーナー
「こちらはディセンバーでデザインして、テンマクデザインとコラボした“サイレントツーバーナー”です。ステンレスのシャープなルックスは現代的ですが、熱源はアルコールという仕掛け。どこかおもちゃ感覚ですけど、こういうのって楽しいじゃないですか」
と笑う菊地さん。せっかくなら、と中身のアルコールバーナーを収納するためのオリジナルケースも作ってしまうほどのこだわりぶりです。
友人が使っていたフライフィッシングのリールケースがアイデアソースになっているそう。何気なく日常に転がっているヒントを取り入れるセンスはさすがの一言です。
折りたためるローテーブル
僕はコレがツボですね、と平さんがピックアップしたのはコンパクトなテーブル。
「これは画期的。クラシックなウッドのローテーブルに見えますが、マグネット仕掛けで簡単に折りたためるようになっている。こういうのって分解、組み立てに骨が折れるタイプも多いけれど、これはすごく簡単なのがいいですね」
人気が高まる”デコラウエア”のホーローマグや、クッカーなどを乗せるテーブルとしてもかなり重宝しそうです。クッカーといえばやはりトランギアのメスティン。大定番アイテムもここディセンバーではただでは終わりません。さすがのアプローチを見せてくれました。
独自カラーのメスティン
「メスティンのフタをレッドとダークオリーブにペイントしました。もともとはトランギアのケトルで実際にあった色みをメスティンで再現してみたんです。いい色に仕上がったと思いますね」
レトロなセレクトはさらに加速。お次は水筒。ぽっこりしたシルエットがかわいいフランスの「グランテトラ」は探している人も多い。
ヴィンテージの水筒
「これか、ドイツ製のマルキルがヴィンテージ水筒の双璧です。少し前までは山道具屋さんで普通に売っていたんですけどね……。ドイツといえばやっぱり昔から質実剛健。ドイツ製の長いペグもうちで扱っていますよ」
ドイツ製のペグのセット
目をやると50㎝以上はありそうな超ロングなペグが鎮座。これには平さんも驚きを隠せません。
「こんなの初めて見ました! これを手に入れたら、ペグに似合う幕を揃えたくなりますよね」。そんな人にぴったりなのが“ホワイトルームスタジオ”のタープ。これもダイス同様ディセンバーのオリジナルブランドとして販売しています。
お好みでオーダーできるタープ
「これはうちのショップでも1、2位を争う人気商品。素材や柄をリストの中からお好みで選べるイージーオーダーのタープで、ツールバッグやハンモックと同じパラフィン加工のものや、懐かしいストライプ柄あたりを求める人が多いですね」
聞けばタグの色まで16種類から選べるという。これで作れば愛着もひとしおでしょう。
厚手のタープと同じ素材で作られた、キッチン用壁掛け収納ラックも秀逸。特筆すべきはキッチンペーパーまでも取り付けられること。菊地さんが解説してくれます。
収納できる壁掛け
「ペーパーの芯をとりつけるのにサイドを立ち上げる必要があるのですが、この形が三角なのがポイント。四角だとクタッとなってしまうんですよ。おかげでこの三角の生地をひたすら作り続ける羽目になりました(笑)」
お店の個性を手に取ってもらえる
このようにディセンバーのアイテムは、セレクトでもオリジナルでも普通のものは置かれていません。どこかに特徴ある商品ばかり。平さんはそれこそが東京にお店を構える意義だと力説します。「素材や作りに特徴あるアイテムって、買う前にいちど手に取りたくなるものですが、山形だとなかなかそう簡単にはいかなかった。でも目黒店ができたことで、多くの人が現物を見て、触って確認できる。これは大きいですね」
そう考えるのは、以前からディセンバーのファンだった平さんばかりではありません。目黒店の店長をつとめる伊藤さんも、もとは山形店のお客さんだったといいます。
好きが高じて店長に
「僕も地元が山形で、大好きなお店でしょっちゅう通っていました。なのでこうして目黒店で店長を務めることになりすごく嬉しいです。面接の際には菊地さんも“あれ?お客さんですよね”とびっくりされてましたが(笑)」
平さんや伊藤さんのみならず、全国のアウトドアファンを魅了する山形発のショップ、ディセンバー。ちなみに目黒店のオープン記念アイテムとしてメスティンのニューカラーを考えたりもしたそうですが、結局オープンには全然間に合わなかったとのこと。そんなマイペースさも東北が原点のこのお店らししく、どこかホッとしますね。
自然が息づく、居心地のいい店内
店内に使われている長い一本木は、菊地さんの奥様の実家から取り寄せたもの。DIY精神に満ちた創意工夫が随所に凝らされており、目黒という大都会にいながらにして自然の息遣いが聞こえるぜいたくな空間となっています。
休日にちょっと立ち寄るだけでも、まるで森の中にいるような爽快な気分に浸れるこのお店。ぜひ、今度の週末に足を運んでみてはいかがでしょうか。
取材したのはこちら
『アウトドアショップ ディセンバー 目黒』
定休日:毎週月曜、第2、第4火曜
営業時間:平日12:00~20:00、土日祝11:00~19:00
住所:東京都目黒区目黒4-10-4(目黒通り沿い)
Tel:03-6451-2917
HP:http://december.shop-pro.jp
Let’s go to the “DECEMBER” born in Yamagata!
山形発の「ディセンバー」に足を運んでみよう!