大型新人は大ベテラン。日本のガレージシーンに RawLow Mountain Works が衝撃の登場

大型新人は大ベテラン。日本のガレージシーンに RawLow Mountain Works が衝撃の登場
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トップの画像を見ていただければ、そのプロダクトの持つユニークなセンスに誰しも度肝を抜かれるのではないでしょうか。盛り上がり続ける日本のUL系ガレージメーカー・シーンに、またもや新たなメーカーの登場です。そのメーカー、RawLow Mountain Works が東京岩本町の Moonlight Gear で先行受注会を行う(9月1日に終了)と聞きつけ、さっそく駆けつけました。

実際に RawLow Mountain Works のプロダクトを手にしてみてまず感じたのは、その新人離れしたプロダクトとしての完成度の高さ。それもそのはずで、RawLow Mountain Works を共同で運営する谷口亮太郎さんと河井祐介さんは、それぞれバッグデザイナーとして長い経験を持つのだとか。

「僕たちはもう20年くらいバッグの仕事を続けてきたんですけれど、それはあくまで仕事というか、自分の持つものを自分で作るという考えには直結していなかったんです。でも、あるとき二人で山に登っているときに〈あんまいいものがないよね〉という話になって、僕たちそれぞれデザインもできるしモノも作れる、〈あれ、作れるじゃん。作ればいいじゃん〉という話に自然になった。もちろん、MYOGやガレージメーカーといったULハイクのカルチャーにインスパイアされた部分もありますけれど、僕たちは出発点が素人ではないので、もう少しプロダクトとして完成度の高いものを作れる環境があるし、それを使わなきゃもったいない気もして。で、やってみたらどんどんのめり込んでいった(笑)」(谷口さん)

Antelopeは4色展開(どれも素晴らしい色合い!)で、背面長は2つのサイズを用意。オプションで Day Tripper と名付けられたポーチがフロントとサイドに装着できる。

Antelopeは4色展開(どれも素晴らしい色合い!)で、背面長は2つのサイズを用意。オプションで Day Tripper と名付けられたポーチがフロントとサイドに装着できる。

RawLow Mountain Works のフラッグシップ、中型ザックの Antelope(36~40L)でまず目を惹かれるのは、部分ごとに異なる素材の使われたポップなデザインでしょう。個性的ながら品の良さも感じさせる絶妙なセンスはなかなか真似できるものではなさそうですが、デザイナーとして長い経験を持つ二人には、見た目の部分を作るのはそう難しいことではなかったと言います。

トップとボトムは防水性の高いX-Pac、アイスアックスやクランポンを装着することのあるフロントは切り裂き強度の強いダイニーマ、スキーなどを取り付けることのあるサイドは擦れに強い1000Dのナイロン生地を使用。フリントにはデイジーチェーンの他バンジーコード用のループも設けられている。杢の入ったナイロンの絶妙な色合いも魅力。

トップとボトムは防水性の高いX-Pac、アイスアックスやクランポンを装着することのあるフロントは切り裂き強度の強いダイニーマ、スキーなどを取り付けることのあるサイドは擦れに強い1000Dのナイロン生地を使用。フリントにはデイジーチェーンの他バンジーコード用のループも設けられている。杢の入ったナイロンの絶妙な色合いも魅力。

「バッグを作る術は僕たちは知っているんで、とりあえず形にするのは簡単なんです。けど、そこからギアとして使えるものにするのにすごく時間がかかりました。正直、ファッションバッグの世界は2~3回サンプルを作って、〈いいんじゃない?〉てなれば市場に出せるんですけれど、登山というアクティビティの中で使ってもらえるものと考えた場合、もっと真剣にならざるをえない。でも、やっぱり一筋縄ではいかなくて、心が折れかけたときもありましたけど(笑)」(谷口さん)

吹き流しはコシのあるX-Pacなので開いた状態をキープできてパッキングしやすい。内部に取り付けられたストラップが荷重を背中に押し付けてくれる。背面パッドに開けられた穴はハイドレーションパックのチューブを通すためのもの。

吹き流しはコシのあるX-Pacなので開いた状態をキープできてパッキングしやすい。内部に取り付けられたストラップが荷重を背中に押し付けてくれる。背面パッドに開けられた穴はハイドレーションパックのチューブを通すためのもの。

「最初は薄いナイロン素材でメッシュのフロントポケットのあるような所謂ULザックっぽいものを作ったりもしたんですけれど、結構早い段階で〈これは自分たちのやるべきことではないな〉と方向転換できたのは良かったですね。それがなかったら今もできていなかったかも(笑)。そこから割とすぐにほぼ現在に近い形になったんですが、そこから細い部分の修正が大変でした。特に背負い心地に直結するショルダーハーネスまわりやパターン(型紙)には気をつかいましたね。シンプルにしないと丈夫にならないし、基本は誰が縫ってもある程度近いものができるようにしておかないと、プロダクトとしてはクオリティが上がらないので」(河井さん)

置いたときの佇まいの美しさにもこだわったというショルダーハーネス。背面はメッシュのバックパネルの周囲をダイニーマで補強している。

置いたときの佇まいの美しさにもこだわったというショルダーハーネス。背面はメッシュのバックパネルの周囲をダイニーマで補強している。

実際に Antelope を試着させていただくと、まず印象的だったのがかなり試行錯誤したというショルダーハーネスの質感でした。非常にがっしりとしていて、「良いものを使っている」という気にさせてくれるのです。その秘密は、パッドの芯材。通常よく使われるウレタン系の芯材ではなく、ラバー系のものを採用しているのだとか。背負ってみるときちんと腰骨の上に荷重がかかり、金属フレームは入っていないものの、あくまで私見ですが12~13kgくらいまでなら快適に背負えそうでした。

サイドポケットの内でも外でも通せるようになっているストラップ(開口部の処理も芸が細かい!)。ポケットには強度がありながら伸縮性のよい独自のメッシュ素材が使われている。

サイドポケットの内でも外でも通せるようになっているストラップ(開口部の処理も芸が細かい!)。ポケットには強度がありながら伸縮性のよい独自のメッシュ素材が使われている。

「僕たちの道具はすごくデザインされているように見えるかもしれないですけれど、部分ごとに違う生地を使っているのも適材適所で配置しているだけだし、全部意味があってやっていることなんです。組み合わせとか見せ方の工夫で新しい雰囲気に見せてはいますけど、基本的にはすごくベーシックでシンプル。それもあって、見た目よりはだいぶ軽く(650g)できました。」(谷口さん)

Day Tripper は6L。ふたつ付けた場合は12Lの増量になる。こんなザックを山で見かけたら、間違いなく二度見しますね。

Day Tripper は6L。ふたつ付けた場合は12Lの増量になる。こんなザックを山で見かけたら、間違いなく二度見しますね。

さらにユニークなのが Day Tripper と名付けられたオプション。Antelope のサイドやフロントに取り付けることができ、さらに単体としてもバックパックやショルダーバッグとして使えるのですが、特にサイドにふたつ取り付けた際のキスリングをアップデートしたようなクラシカルなルックスはかなりキュート。アタックザックとしてはもちろん、冬季はクランポンケースにしたり、旅行時はサブバッグに活用しても良さそうです。

このようなサドルバッグが……

このようなサドルバッグが……

バックパックに大変身!

バックパックに大変身!

ギミックは非常にシンプルですが、こんなの今までなかった。

ギミックは非常にシンプルですが、こんなの今までなかった。

ユニークといえば、Bike’n Hike Bag と名付けられたバッグもかなりのもので、なんと自転車用のサドルバッグがバックパックに変身するのです! アイデアとしてはかなりシンプルですが、確かに輪行時などはサドルバッグの取り扱いに苦労させられるので、「こんなの欲しかった!」という人は多いのではないでしょうか。個人的には、これにさらにハンドルバーバッグが合体して30Lくらいのバックパックになるモデルなんて出たら最高だなとか思ったり……。まだ正式には発表されていないので詳細は書けませんが、Tabitibi Tote と名付けられたハイカーサコッシュにも「この手があったか!」というアイデアが満載で、クラシカルなルックスといい、これはマスなマーケットにもアピールするのでは。

クラシカルなナイロン生地は普段使いにも良さそう。

クラシカルなナイロン生地は普段使いにも良さそう。

そして、RawLow Mountain Works を語る際の忘れてならない大きなポイントは、その巧みなイメージ戦略でしょう。詳しくは是非 RawLow のホームページを見ていただきたいのですが、おじさん二人(谷口さん・河井さんご本人)が山でキャッキャっとはしゃいでいる姿を収めた洒落の利いた美麗な写真やムービーが見せてくれる世界観の鮮やかさは、所謂「ガレージメーカー」の範疇を完全に凌駕しています。


以前、ワックスドコットンを使用した一見クラシカルなルックスながら「UL以降」を感じさせるバッグを作るアメリカの Uphill Designs を紹介した際、その鮮やかなセンスにアメリカと日本のアウトドアカルチャーの深度の違いを感じてしまうと筆者は書いたのですが、RawLow Mountain Works の登場は、日本のアウトドアカルチャーの広がりもアメリカに負けていないのではないか、と思わせてくれます。
こんなメーカーが出てくるなんて、本当に面白くなってきたなあ。

「僕たちのベースにあるのは70年代とか80年代のアメリカのアウトドアギアなんですけど、あの頃の製品て輝いて見えたんですね。やっぱり僕らは一番多感な時期にその時代を過ごしていたんで、ああいうワクワク感を僕たちの作るものでも表現できたらなと思っています。若い人はそういうの知らない人も多いと思うんですけれど、おじさんが頑張ってそういう匂いを伝えていきたいですね(笑)」(谷口さん)

Rawlow Mountain Works は現在日本各地で受注会やポップアップショップを開催中。(9月16日~19日は福岡PROMENADER Bicycle & Wear、9月22日~25日は大阪UTILITYで行うとのこと)。正式なリリースは11月ごろになりそう、とのことです。

製品名1
Antelope
予定価格1
¥29,000(税別)
製品名2
Day Tripper
予定価格2
¥6,800(税別)
製品名3
Bike’n Hike Bag
予定価格3
¥16,000(税別) ※Turquoise Blue / PAPERSKY Editionのみ¥16,500(税別)
メーカー
RawLow Mountain Works
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