写風人の駒ヶ根アウトドアライフ#12:写風人が拘る焚火論

焚火をテーマにした連載もお陰様で最終回を迎えました

振り返ってみると単なる焚火も奥深いものがあると改めて感じています。最終回は私が拘る焚火論を綴って締めくくりたいと思います。その前に、11月は連続して焚火イベントに参加しましたので、まずその報告を致します。


11月3日、長野県駒ヶ根市にあるファイヤーサイドさんで創立30周年イベントが行われました。今年のテーマは「薪火でつなぐ」。私は斧メンテと森暮らしのファイヤープレースを実演しました。

イベントでの実演は、日ごろ大切にしているもの

火のある暮らしといえば薪づくり。薪づくりといえば斧。いくら強靱な斧といえど日頃のメンテナンスは大切にしたいものです。
これは20年近く愛用している斧ですが、刃先の欠けはひとつとしてありません。少しでも欠けたらすぐに研ぐ。ひどくなってからはメンテナンスも大変です。

日頃の手入れが何十年も新品同様の刃先を保ってくれるのです。また皮ケースはミンクオイルで、ヒッコリー材の柄は亜麻仁油入りのビーズワックスで手入れしています。
そしてこちらは森暮らしに常設してある焚火場を再現しました。次のイベントにも登場するので後ほど詳しく紹介したいと思います。薪火がテーマであるこのイベントには様々なアイテムが登場していました。
錆びた鉄の味わいを楽しむアウトドアファイヤープレース「Tipi」ティピ。表面を錆びさせることで内部を保護し、優れた耐候性が得られます。また六角形と台形の屋外用薪入れ「Hexbox(ヘックスボックス)」。2つの形を組み合わせることにより様々なパターンが形成されます。ティピと共にコーディネートすれば、錆びた鉄と炎が織りなすワイルドなアートオブジェが完成です。薪でごはんを炊くと言えば、やっぱりかまど。
今更、自宅にかまどを作るなんて到底無理ですが、これならすぐに設置可能。レトロなタイル張りのファイヤーサイドかまども参考展示されました。薪がパチパチ爆ぜる音を聞きながらごはんを炊くって、何か幸せな気持ちになります。適度なお焦げもあって、とても美味しく頂きました。他には、薪ストーブユーザーのみならず焚火好きのキャンパーにも見逃せないアイテムが大集合。
すでにキャンパーの間でも人気を誇る「グランマ―コッパーケトル」。関西から来られた知り合いも大小2個買いしたようです。
僅かな熾き火からあっという間に炎を甦らせる火吹き棒「ファイヤーブラスター」
ふいごの発想で大きな風力が得られる「シュッポ」

薪づくりに欠かせないスウェーデン製の斧「グレンスフォッシュブルーク」
焚き付けづくりの新アイテム「キンドリングクラッカー」
炎を操る1本4役の火ばさみ「ファイヤーバード」など、火のあるキャンプライフに是非揃えておきたいアイテムが勢揃い。参加者一人一人が薪火でひとつにつながった楽しいイベントでした。
(一部商品画像はファイヤーサイド株式会社より出典)

ワークショップでは焚火の空間を演出

翌週11月11日には北軽井沢スウィートグラスさんのアサマ狼煙に参加しました。私は焚人の間で焚火空間の演出と花炭作りのワークショップです。
こちらが私のコーナー。普段キャンプ場に出掛けることがないので、森暮らしでの焚火場はこんな自然素材で作った据え置き型になります。ケトルをぶら下げているのは三脚タイプのトライポッドではなく4脚のクワトロポッド。

父親が愛読していた50年前のキャンプカウンセラー教本から真似たチッペワ食器棚という炊事道具です。この棚は枝の先端や棚にたくさんの鍋などを掛けることができるのが特徴です。

また中段に枠を作り、木の枝を渡して鍋やケトルなどを掛けられ、その下で焚火をすれば料理も出来ます。
そしてこちらは枝分かれを利用した物干しタイプの道具掛け。真っ直ぐ伸びた白樺は枝分かれが多く何段階もの調節が可能です。ただ白樺は燃えやすいので焚火との併用には不向きかもしれません。

一方、イベント会場では開場を控え至る所に火が入り始めました。

のぼりと煙で、そこはあたかも戦国時代の様相。

火が入ったのは、長い丸太をVの字に切れ込みを入れた北欧式ロング焚火。そして大小いくつも立ち並んだスウェディッシュトーチ。丸太をふんだんに使った焚火は自然豊かな森に囲まれたこのキャンプ場ならではの演出です。
やがて浅間山に陽が沈む頃、それぞれの炎卓を囲んで焚火めしが始まります。
火のあるダイニングは、自ずと笑みもこぼれ話も弾みます。料理も不味い訳がない!

空腹を満たしたところで、いよいよアサマ狼煙のクライマックス「華焱の陣」が開炎。
はじめに100人の焚人による点火の儀が行われ、点火と同時に大迫力の巨大やぐらが天高く燃え上がります。
フィナーレは音と炎のパフォーマンスユニット「ゴロピカ」によるファイヤーショーで幕を閉じました。

私もこれだけ焚火に特化したイベントは初めてでした。焚火に慣れている私でさえ感動しきりでしたから、初めて参加した子供達には忘れられない体験だったに違いありません。

炎卓に火を入れる前は子供達自らが枝や落ち葉を拾って火種集めをし、自分たちで火を熾す。串に刺したソーセージやベーコンを焼いて食べる。

点火の儀のトーチも子供達の手によって行われました。火は簡単には熾せない、火は熱く火傷する、火の扱いを間違えると危険である、など身をもって体験したことでしょう。暮らしから火がなくなりつつある今、子供達がこの経験をどう活かしてくれるか楽しみでもあります。

最後に私自身が拘る焚火というものがあります。これはあるキャンプイベントの冊子で綴った文章です。

「白人は間抜けだね。火を燃やしすぎて熱くて近寄れないでいる。たかがソーセージを焼くだけなのに牛が丸ごと焼けるような大きな焚火だよ。インディアンをごらん。小さな火を上手く使って愉しんでいる。」

これはインディアンの皮肉たっぷりのエピソードです。

「ジャンジャン燃やせ」「景気よく燃やせ」は単なる薪の無駄遣い。少ない薪でいかに効率良く焚くかが腕の見せ所です。また写真業に携わる者として炎には強い拘りを持っています。小さな焚火を前に、ゆらゆら彷徨う透明感のある炎を創りだすことに面白みを感じます。大きく激しく燃える炎は決して魅力的だとは思っていません。

「焚火は小さく効率良く、炎は思うがままに操る。」それが焚火に対する私の信条です。

還暦を過ぎた頑固じじいの戯言が最後まで続きましたが、連載にお付き合いして頂き誠にありがとうございました。皆さまのキャンプライフがより愉しく有意義になりますよう心からお祈りしています。

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