焚火をテーマにした連載もお陰様で最終回を迎えました
振り返ってみると単なる焚火も奥深いものがあると改めて感じています。最終回は私が拘る焚火論を綴って締めくくりたいと思います。その前に、11月は連続して焚火イベントに参加しましたので、まずその報告を致します。
11月3日、長野県駒ヶ根市にあるファイヤーサイドさんで創立30周年イベントが行われました。今年のテーマは「薪火でつなぐ」。私は斧メンテと森暮らしのファイヤープレースを実演しました。
イベントでの実演は、日ごろ大切にしているもの
火のある暮らしといえば薪づくり。薪づくりといえば斧。いくら強靱な斧といえど日頃のメンテナンスは大切にしたいものです。
日頃の手入れが何十年も新品同様の刃先を保ってくれるのです。また皮ケースはミンクオイルで、ヒッコリー材の柄は亜麻仁油入りのビーズワックスで手入れしています。







薪づくりに欠かせないスウェーデン製の斧「グレンスフォッシュブルーク」


ワークショップでは焚火の空間を演出
翌週11月11日には北軽井沢スウィートグラスさんのアサマ狼煙に参加しました。私は焚人の間で焚火空間の演出と花炭作りのワークショップです。
父親が愛読していた50年前のキャンプカウンセラー教本から真似たチッペワ食器棚という炊事道具です。この棚は枝の先端や棚にたくさんの鍋などを掛けることができるのが特徴です。

また中段に枠を作り、木の枝を渡して鍋やケトルなどを掛けられ、その下で焚火をすれば料理も出来ます。

一方、イベント会場では開場を控え至る所に火が入り始めました。

のぼりと煙で、そこはあたかも戦国時代の様相。

火が入ったのは、長い丸太をVの字に切れ込みを入れた北欧式ロング焚火。そして大小いくつも立ち並んだスウェディッシュトーチ。丸太をふんだんに使った焚火は自然豊かな森に囲まれたこのキャンプ場ならではの演出です。


空腹を満たしたところで、いよいよアサマ狼煙のクライマックス「華焱の陣」が開炎。


私もこれだけ焚火に特化したイベントは初めてでした。焚火に慣れている私でさえ感動しきりでしたから、初めて参加した子供達には忘れられない体験だったに違いありません。
炎卓に火を入れる前は子供達自らが枝や落ち葉を拾って火種集めをし、自分たちで火を熾す。串に刺したソーセージやベーコンを焼いて食べる。
点火の儀のトーチも子供達の手によって行われました。火は簡単には熾せない、火は熱く火傷する、火の扱いを間違えると危険である、など身をもって体験したことでしょう。暮らしから火がなくなりつつある今、子供達がこの経験をどう活かしてくれるか楽しみでもあります。
最後に私自身が拘る焚火というものがあります。これはあるキャンプイベントの冊子で綴った文章です。
「白人は間抜けだね。火を燃やしすぎて熱くて近寄れないでいる。たかがソーセージを焼くだけなのに牛が丸ごと焼けるような大きな焚火だよ。インディアンをごらん。小さな火を上手く使って愉しんでいる。」
これはインディアンの皮肉たっぷりのエピソードです。
「ジャンジャン燃やせ」「景気よく燃やせ」は単なる薪の無駄遣い。少ない薪でいかに効率良く焚くかが腕の見せ所です。また写真業に携わる者として炎には強い拘りを持っています。小さな焚火を前に、ゆらゆら彷徨う透明感のある炎を創りだすことに面白みを感じます。大きく激しく燃える炎は決して魅力的だとは思っていません。
「焚火は小さく効率良く、炎は思うがままに操る。」それが焚火に対する私の信条です。
還暦を過ぎた頑固じじいの戯言が最後まで続きましたが、連載にお付き合いして頂き誠にありがとうございました。皆さまのキャンプライフがより愉しく有意義になりますよう心からお祈りしています。
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