ハンモック特集も後半戦です。今回はハンモックに特化した専門メーカーではなく、大手マスプロがどのようにハンモック界に進出しているのかをさらっていきます。
※編集部注: 本稿は、Hiker’s Depot 店主の土屋智哉さんと、同店きってのハンモック通である二宮勇太郎さんの談話をもとに、編集部が文章化しています。
Thermarest – Slacker Hammock Warmer
最初にご紹介するのはThermarest です。寝具専門の総合メーカーである同社は、最近になってハンモックのカテゴリを打ち出していて、ハンモック本体・タープ・バグネット・ストラップと、いろいろな道具をスタンダードに展開しています。そのなかでも、背面の冷えを防ぐ Slacker Hammock Warmer は出色です。
ハンモックで心地よく寝泊まりするには、背中側の冷え対策が重要です。2000年代以降は、アンダーキルトと呼ばれるダウンのブランケットを下部にはわせて冷えを防ぐ方法が主流です。ウルトラライト系メーカーのハンモック進出も、Hennessy Hammock 用のアンダーキルトづくりがきっかけでした。
でも、寝袋以外にもう一つ綿モノを持っていくのは過剰ですよね。そこで別の道を考えて Thermarest が打ち出したのが、ナイロンの生地にアルミを蒸着したもので背面をカバーし、風を防ぎつつ体温の輻射熱によって温める方法でした。Thermarest の定番スリーピングマットである Neoair の内部にも仕込まれている独自の断熱材を使用しているので、防風性も保温性も折り紙つきです。
ぺらっとした見た目で8,900円となるとちょっとためらってしまうのですが、実際に試してたところ、見た目以上の効果がありました。ハンモック・ユーザーなら誰もが直面する背面側の寒さを、これまで Thermarest がマットづくりで培ってきた技術力を結集したコンパクトな道具で解決している。エマージェンシー・シートのように、緊急時に体に巻きつけて使うこともできるでしょう。
- 製品名
- Slacker Hammock Warmer
- メーカー
- Thermarest
- 重量
- 約210g
- 価格
- ¥8,900(税別)
- お問い合わせ
- モチヅキ
Sea To Summit – Ultralight Hammock
アウトドアアクセサリーの「総合商社」としておなじみの Sea to Summit も、ハンモック界に進出しています。たんに製品ラインナップが豊富なだけでなく、エアマットの機構やクッカーを折りたたみにしてしまうなど、他社製品にない独創的な機構が盛り込まれているのもこのメーカーの大きな魅力です。そんな Sea To Summit のハンモックですから、やはり凝った一工夫があります。
まず、ハンモックの生地がメッシュ機構のため、汗がこもらず快適に過ごせます。本体の独創性もさることながら、もうひとつ注目すべきは付属のスタッフサックです。本体を強く圧縮できるコンプレッションサックになっているので、パッキングサイズを小さくして気軽にハンモックを持ち運べます。さらに、通常のスタッフサックのように口がひとつだけあるのではなく、両側に抜けるダブルエンドになっているので、スタッフサックに入れたままの本体にツリーストラップを掛けて引っ張り出せば、そのまま設営できます。
ダブルエンドのスタッフサックを用いる方法は、ハンモック・ユーザーが試行錯誤するなかで生まれたもので、それを最初から製品に組み込んでいるのが Sea To Summit らしいところです。「ハンモックが流行ってるんでしょ?じゃあ適当に出してみようか」というのではなく、きちんと現代のハンモック最前線をリサーチした上で、自分たちの強みを活かし、足りないところを補っている。スタッフサック以外にも、メタルパーツのような付属品もオリジナルでつくっています。こうしたトータルでのデザイン力や開発力は、マスプロならではの強みにちがいありません。
- 製品名
- Ultralight Hammock
- メーカー
- Sea to Summit
- 重量
- 155g(スタッフサック含む)
- 価格
- ¥9,000(税別)
- お問い合わせ
- ロストアロー
Kammok – Roo
さらに、アメリカでは大手のアウトドアショップに eno と並んで什器を構えている定番の新興メーカーである Kammok も日本に進出します。Kammok のハンモックは、生地の伸び感がない寝心地が最大の特徴です。
ハンモックの開発では、リラックスできるように生地のストレッチ性を重視するのが一般的です。しかし、Kammok はあえて突っ張る生地を使用して、包みこむような寝心地にこだわっている。主力である二人用モデルが ROO と名づけられていることからも、カンガルーのおなかのなかにいるような包容感を目指しているのではと思われます。また、アンダーキルトをアタッチしやすいようにループがついていたりと、ハンモックを季節をとわず使えるような工夫が盛り込まれています。
際立った個性でオレがオレがと主張するコンセプトの強さはありません。商品だけでなく、アメリカの店頭展開の幅広さをこの目で見た上での印象では、より多くの人がハンモックを身軽に使えるように、汎用性を最重視しているように思います。公式サイトを見ていると、ハイキングというよりはいわゆるカーキャンプのようなバンライフなどの文化とハンモックをつなげているようです。車中ではハンモックのアンダーキルトをブランケットとしても使えますよ、とか。そういうおもしろい提案もしているメーカーです。