えっ、パタゴニアがウッドストーブを!?
パタゴニアから、まさかのアイテムがリリースされました。その名も「ウッド・バーニング・ストーブ」、そう、なんとウッドストーブです。予想のはるか上をいく展開に、古くからのパタゴニアファンも驚いているようで、SNSなどで話題になっています。はたしてどんなウッドストーブなのか、実物を使ってみました。
さっそく現物を入手!箱がすでにかっこいい!
発売されてすぐに公式オンラインショップで注文し、入手しました。時計や雑貨でも入っているかのような、お洒落な箱でパッケージされていますね。箱を開ければ、上蓋の裏に組み立て図が。パッと見た感じ、非常にシンプルな構造のようです。
説明書は同封されていますが、見なくても使用できそう……と思いましたが、説明書には使用上の安全に関する記述があったので、しっかり確認しました。
専用のスタッフバッグに入っていました。こちらにもイラストが描かれていますね。使用する環境に関する注意書きのようです。これについては、のちほど実際に使用してみる場面で、再度触れます。
スタッフバッグから取り出すと、スタックされた状態で収納されていました。非常に美しいステンレスで、さすがパタゴニア製といった印象。重量は261gと、とても軽量です。
各パーツをじっくり見てみよう
構成パーツはシンプルに3つだけ
収納状態をバラしてみました。パーツはこれで全部です。パーツの名前は左から「トップ」、「ベース」、「コーン」。これらを収納状態とは違う形状にスタックさせると、使用できる状態に。さっそくやってみましょう。あっさりと完成しました。コーンの内部に入っていたトップを取り出し、逆さにしてその名の通り一番上に設置するだけ。シンプルで品のある佇まいですね。
それでは各パーツのディテールを見ていきましょう。注目度の高いアイテムなので、若干しつこめに、じっくりと見ていきます。
シャープなゴトクの「トップ」
まずはトップから。一番上に設置される、クッカーを乗せるパーツです。ギザギザが刻まれたゴトクを搭載していますね。耐荷重は公表されていませんが、サイズ的にちょうどいいくらいのクッカーならまず問題ないでしょう。ゴトクがパーツの下まで貫通していて、かなりしっかりとした作りでした。空気を取り込む「コーン」
胴体とも言えるパーツが、こちらのコーン。上下に空気穴が開けられています。燃焼時には下部から取り込んだ空気が上昇すると予想され、煙突効果が期待できます。コーンの上部には切れ込みが入っていました。これはトップをはめ込むための加工です。実際にトップをはめ込んでみましょう。
トップの内側はこのような構造になっており、ゴトクのフレームが、ちょうどコーンの切れ込みにフィットするというわけです。ゴトクにかかった重量が、トップにもコーンにも分散されるようです。
ロストル付きの「ベース」
そしてこちらが、一番下に設置されるベース。小さいながらもロストルを備えています。燃料のウッドを浮かすことで、空気が通りやすくなることでしょう。このロストルはしっかり溶接されており、取り外すことはできません。コーンを設置してみました。ロストルの下からも上からも、空気が流れ込む構造なのだと理解できます。燃焼効率の良さは間違いないだろうな、と率直に思いました。
改めて全体を見てみましょう。どことなくセクシーでもあり厳格でもあり、何にせよ魅力のあるフォルムではないでしょうか。直径はベースが一番大きくて約12cm、高さは約15cmです。
それではアウトドアに持ち出して、実際に使ってみましょう。
実際に木を燃やしてみた
使用する場所に注意
この写真には、許されない要素があります。当アイテムは全体が熱くなるため、燃えやすいものに囲まれた状態で使用するのはNGなんです。スタッフバッグに描かれていたイラストは、この点に関する注意事項なのでした。燃料の枝は8cm以下で
適した場所に移動しました。さっそく燃料の小枝を投入したいところですが、その長さには制限があります。説明書によると「最大8cm」とのこと。8cmと言われても目分量では難しいところですが、ちょうどトップの上部の直径が約8cmなので、基準にすることができます。枯れ草→小枝の順に入れて横から着火
注意点を整理したところで、いよいよ着火準備へ。まずは焚き付け用に枯れ草をたっぷりめに入れました。その上に細い小枝を放り込んで、着火準備は完了です。着火方法は公式にアナウンスされていないので、トーチで横から着火することに。コーンの空気穴からトーチの炎を注ぎ込みました。
この着火方法はなんとなく勘で行ったものであり、正しいやり方として推奨するものではありません。杉の枯れ葉に火を点けて上から押し込み、その上に小枝を乗せる……なんて方法もアリでしょう。
想像以上の火柱が……!
小枝を足していきます。ついつい夢中になってしまう不思議な楽しさは、このくらいのサイズのウッドストーブならでは。こうして傍から見るとただの怪しい男ですが、ロングハイクの途中、クレイジークリークのチェアに座るなどしていたら、かっこよく決まることでしょう。
煙突効果が効いて、想像以上に大きな火柱が立ち上りました。当アイテムは調理用ウッドストーブですから、写真は正しい使い方の範囲を超えていますが、燃焼効率が上々であったことをビジュアルで報告する次第です。
お湯を沸かしてみる
試しにお湯を沸かしてみましょう。公式スペックによると、1Lの水を平均16分で沸騰させることができるようです。ここでは500mlの水を沸かしてみます。この写真が撮影された時刻は、15時51分12秒です。
ゴトクとクッカーの隙間から、追加の小枝を放り込んでいきます。炎がクッカーを覆っており、けっしてスマートな使い方とは言えませんが、ガンガン燃やすとどのくらいのタイムが出るのか試してみましょう。
沸騰タイムは……7分33秒!
さあ、ぐらっぐらに沸騰しました。この写真が撮影された時刻は15時58分45秒です。クッカーを火にかけた時間から7分33秒後には、この状態となりました。わかりやすい写真を撮るため、「まあ沸騰したかな」といった状態からさらに放置し、ぐらっぐらの状態まで待ったというラグもあります。調理する上で、火力は充分だと言えるでしょう。
卓上コンロとしても使えそう
「ガスのように燃料切れになる心配がいらない」と公式のフレーズにあるように、当アイテムは登山やロングハイク、渓流釣りなど、アウトドアのガチ勢が活用できる調理ギアです。しかし読者にはキャンパーが多いと思うので、キャンプサイトでのライトな使い方を考えてみました。卓上コンロとして使えるのではないかと思ったので、実際に試してみます。
固形燃料で料理の加熱&保温を
固形燃料を利用してみましょう。サイズ的にコーンの中に余裕で入ります。ひとつの例として、パックのおでんを加熱してみます。もうちょっとお洒落な食材を用意したかったところですが、これからの季節のソロキャンプでは、パックのおでんは嬉しいメニューですよね。
炎の高さ的にトップは設置しないことにしましたが、排気は悪くなるので自己責任で。
いい感じに温まってきました。火力に不足は感じません。焚き火とは別にテーブル上に熱源があると、何かと重宝します。
しかしテーブルの天板の素材には注意が必要。実体験として、ベースまで熱々になることはありませんでしたが、ウッド天板のテーブルでの使用はおすすめしません。
ちなみにアルストでもOK
今回は固形燃料を使いましたが、アルコールストーブでもイケそうでした。こちらの方がパタゴニアに合いますね。ただしアルストの火力調整用のフタは使えなくなりますので、ご注意を。また火を消すときにはコーンを持ち上げる必要があり、コーンは熱くなるので革手袋が必須です。
実用性も所有する満足度も◎
小枝を燃料とする本来の使用方法では、申し分のない火力でした。8cm以下の小枝を用意する手間はありますが、ガスもアルコールも持って行かなくていいというコンパクト性は大きな魅力です。パタゴニア好きのアクティブなアウトドアマンにとって、待望のアイテムと言えるでしょう。
キャンプを楽しみたい人の場合は、余興的に小枝で調理してもよし、卓上コンロとして利用してもよし、です。たとえパタゴニアというブランドに惹かれて飛びついても、無駄になることはないだろうと思われます。
以上、パタゴニア製のウッドストーブ「ウッド・バーニング・ストーブ」をじっくりとご紹介しました。
物珍しさで話題になりがちですが、確かな実力を持ったアイテムです。素材のステンレスは使っていくうちに変色していきますから、そうした経年変化を楽しみつつ、末永く相棒にできると思います。
ウッド・バーニング・ストーブの詳細はこちら