人気ガレージブランドをクローズアップ
大手メーカーによる大量生産品とは違い、職人技術やハンドメイドにこだわった高品質なアイテムが人気を博すガレージブランド。少量生産ながらもここ数年で人気がうなぎ登りのアイテムも少なくありません。そこでこの企画では人気のガレージブランドにスポットを当てて、そのヒストリーと魅力に迫ります!
第4回目は「YOKA(ヨカ)」
2015年6月にブランドを立ち上げ、今年で5周年を向かえる「YOKA(ヨカ)」。組み立て式の木製家具から始まり、焚き火台やテントなど、最近ではラインナップの幅も拡大中。
アウトドアファニチャーブランドから、アウトドア総合ブランドへと進化を続けています。
そんな「ヨカ」のアイコン的商品といえば、切り込みの入った板を組み合わせて作る木製のアウトドア家具。デビュー当初はこのユニークで斬新な構造が話題を集め、いきなり大手ショップとの取引も成立したとか。
最近でこそいろんなブランドから似たような構造の家具は発売されていますが、「ヨカ」がその先駆者と言っても過言ではありません。
「ブランド立ち上げのとき、アウトドアだけでなく、インドアでも使える家具を作りたかったので、JIS準拠の耐久試験も受けました。これもアウトドア用品としては珍しい試みでした」と語るのは、ヨカを運営する株式会社トゥエルブトーンの代表・角田崇さん。
今回改めて、「ヨカ」誕生のきっかけから、今後の展開予定について詳しく聞いてきました。
角田さんにインタビュー!「ヨカ」って何者ですか?
ブランド立ち上げのきっかけは?
代表の角田さんはデザイナー。会社員時代はおもちゃのデザイン・設計・開発に携わり、独立起業後もおもちゃやインテリアの製作を中心に活動。転機が訪れたのは2015年。それまで関わっていた雑貨業界が息苦しくなり、新たな事業を考えているときだったそう。
小さい頃からモノを作ったり、作ったモノで人を喜ばせることが好きでデザイナーになりました。
今でこそ「ヨカ」というブランドを軸にビジネスをやらせてもらっていますが、以前は「プレイデコ」という組み立て式のおもちゃをメインに作っていました。
一枚の板からパーツを抜き取り、パズルのようにハメていくと立体おもちゃに組み上がるという「プレイデコ」。このノウハウがあったからこそ、“組み立て式の木製家具”という発想に行き着いたそうです。
「プレイデコ」はミュージアムショップでそこそこ売り上げていたのですが、そこへ大手メーカーが参入してきてしまって。
ウチみたいなひとりでやっている会社だと勝てない状況を目の当たりにして、雑貨業界に息苦しさを感じていました。そこで、いままでのインドアとは真逆のアウトドアで使える家具を作ろう! と思い立ったのが「ヨカ」設立のきっかけです。
当時はファッションを中心にアウトドアが盛り上がり始めていた時代。斬新な発想と無骨な佇まいの「ヨカ」の家具は最初の展示会から話題が殺到。瞬く間に人気ガレージブランドとして軌道に乗っていきました。
代表作「YOKA CHAIR」はグランピングにも人気
「ヨカ」の代表作と言えるのが、ブランド名を冠した「YOKA CHAIR(2万5,300円/塗装済み)」。大きな座面と緩やかに傾斜が付いた背もたれの組み合わせは座り心地も抜群。グランピング施設にも導入されているというのがうなずけるクオリティです。
実はYOKA CHAIRのベースとなったPANEL CHAIR:D(現在は廃番)という商品が 「ウッドファニチャージャパンアワード2016」のセレクション部門に選ばれまして、日本の家具20選にノミネートされたんです。
残念ながら授賞はできませんでしたが、ブランド立ち上げからすぐに名誉ある賞にノミネートできたのは、デザイナー冥利に尽きる瞬間でした。YOKA CHAIRはそのデザイン的な思想を汲みつつ、さらに座り心地や見た目を進化させたモデルです。
●収納時サイズ :W570 x D461 x 厚さ69mm
●材質:針葉樹合板 15mm, 24mm
ブランドの転機となった焚き火台
その後もボックスやテーブル、スピーカースタンドなど、さまざまな組み立て式家具をリリースしていた「ヨカ」ですが、2018年に転機がやってきます。
立ち上げから3年で、組み立てで作れるものは一通り作っちゃったんです(笑)。それと、当時始めたインスタの影響もあって、なにか写真の中心に映り込むものを作らなければという使命感はありました。
家具は座ったり、モノを載せると隠れちゃうので。写真の主役として映るものは何かと考えた結果が焚き火台でした。
そうして完成した「COOKING FIRE PIT(1万6,500円/フルセット)」は、“薄く畳んで持ち運べる”というブランドの特徴を踏襲した焚き火台。
料理も焚き火も楽しめるをコンセプトに設計されているので、シンプルなデザインながらキャンプでの使い勝手は抜群です。
デザイナーとしては、自分のブランドのロゴ入りって敬遠しがちなんですが、「インスタで主役として投稿されたい」という目的でデザインしていたのであえて入れてみました。
そうしたら、これが大成功。思いのほか多くの人がロゴ部分を撮影してポストしてくれて。以来、ロゴがないと偽物っぽくなるので、入れるようにしていますね。
2019年にはソロキャンギアにも着手
2019年からはバックパックにも収納できるコンパクトサイズにこだわったソロキャンギアも登場しています。
ヨカ史上、最小・最軽量の「TRIPOD TABLE SOLO(7,700円)」や調理道具の棚として便利な「MINI SHELF(9,350円)」は角田さんもイチオシのアイテム。
設立当時はにわかキャンパーだった自分も、最近ではテストを兼ねてフィールドに行く機会も増えて、ようやく一人前のキャンパーになりました。
ソロキャンギアはまさに自分が欲しい、あったらいいなを形にしたもの。『ふたりソロキャンプ』という漫画の作者さんもTRIPOD TABLE SOLOを愛用しているようで、作品内に登場させていただきました。
「ヨカ」が目指すは“ひとり総合アウトドアブランド”
2019年の夏に参加したフェスイベントで、お客さんから「ヨカでキャンプ用品を揃えたい」と言われたんです。そのとき、あらためてラインナップを見渡してみて、これじゃ足りないな……と。
もっといろいろ作らなきゃと思った瞬間、ブランドの方向性が一気に広がったんです。ひとりでやっている小さな会社ですけど、総合アウトドアブランドになれってことかと(笑)。
そこで着手したのがテント。2019年の12月に販売をスタートした「YOKA TIPI(3万1,900円)」は、ひとりでゆったり過ごすのにちょうどいいサイズが支持され大ヒット。
角田さんの想像を上回る反響で、すでに1,000幕以上(2020年7月現在)を販売しているのだとか。
真冬キャンプにも対応できるよう、スカートを装備し、薪ストーブ用の煙突穴もあらかじめ設けました。
商品を開発するにあたっては、いろいろと調査して分析するタイプなんですが、このテントはなぜここまで売れたのかがわからないんです(笑)。
ヨカのアイテムだけでキャンプが完結するようになるのが目下の目標なので、このヒットを皮切りにまだ埋められていないアイテムを色々と開発していこうと思います。
●煙突部素材:シリコン+グラスファイバー防炎布(連続耐熱1000℃)
●ポール素材:カーボン
●重さ:約1.8kg(本体・ポール・煙突穴パーツ込み)
ギアの開発エピソードが満載の「YOKAチャンネル」は必見
ブランドの切り盛りをすべてひとりでこなしている角田さんですが、唯一の弊害は「誰も止めてくれない」ことだそう。
ひとりで考えて、ひとりでテストしてを繰り返しているので、周りの意見があまり入ってこないんです。発売する前に言ってよ~、ってことが結構あったので、だったら開発段階の話を公開すればいいやと始めたのがYoutubeです。もう言いたくてウズウズしていることを誰かに聞いてもらって、何かを言って欲しいんです。
そんなYoutubeでの配信をきっかけに生まれたギアが「DOUBLE PAN(5,500円)」。最初はスキレット用の蓋をウッドで試作。その様子を配信したら木が湯気で曲がってしまい失敗。
その後、ユーザーからのコメントを参考にしながらたどり着いたのが、微妙にサイズの違う2つのスキレットを作って、片方を蓋にも活用できるという商品です。
これはヨカのwebストアでしか売っていない限定商品。鉄のフライパンだからダッジオーブンのように炭火を載せることもできますし、網を挟めば燻製もできます。
初回の100個はYoutubeの告知だけで完売してしまい、いまでも売れ続けているヒット商品なんです。
都内にヨカのコラボスペースが登場
気になるヨカの商品の数々ですが、実物を見たい場合はどうすればよいのでしょうか?
高円寺(東京都杉並区)にヨカとコラボしたレンタルスペースがオープンしました。時間貸しでパーティスペースとして使えるのはもちろん、土日は同じビル内の「INCredible COFFEE」のイートインスペースとして無料開放されています(スペース貸しが入っていないときに限る)。ヨカの家具やテントが展示してあるので、実際に試してみたい方はぜひご利用ください。
基本的にはwebでの販売がメインのヨカ。家具はアルペンアウトドアーズが一番充実しているそうなので、気になる人は合わせてチェックしておきましょう。
レンタルスペースの住所:東京都杉並区高円寺北2-22-2-1F
すぐに来る!?ヨカだけでキャンプができる日
アウトドア家具ブランドから総合アウトドアブランドへと舵を切った「ヨカ」。現在のラインナップの状況から「まだ進捗20%です」と語る角田さんですが、思い立ったらすぐに動くフットワークの軽さを見ていると、その実現もそう遠くない気がします。
今考えているのはキャンプ道具を収納するボストンバッグやキャンプ用のパンツ。“総合”ということで構想が広がりまくっているので、誰か止めてください(笑)。
ヨカ ブランド情報
公式サイトはこちら角田さんのインスタグラムはこちら