スタイリスト平健一の“わが道”ショップ探訪記#1:火のお店「イルビフ」がアツい!

火にこだわる……ってどんな店?


アウトドアにめっぽう強いスタイリストの平健一さんが、最近気になっている独自路線のお店を訪ねます!

昨今、他とは違った特徴のある「わが道をいく」個性派ショップが増えてきました。そんなお店を平さんならではの視点でチェックしていきます。記念すべき第1回は意外な場所にある、意外なコンセプトのお店。それではさっそく行ってみましょう!

到着したのは埼玉県

東京から電車に揺られること約30分、到着したのは埼玉県の三郷市。

「いやー、この立地だけですでに“わが道”な感じだなあ」

思わずそうつぶやく平さん。いったいどんなお店なのか期待が高まります。最寄り駅からは徒歩数分で到着。ガラス張りで洗練された雰囲気の店内から、ほどなく店主の堀之内健一朗さんが出迎えてくれました。


「ようこそ三郷まで。ここは焚き火や薪ストーブ、ランタンなど、火にまつわるアウトドアに特化したお店なんです」

「東京からちょっと離れた場所に、こんなツウ好みのお店があるなんてすごく意外で、一度来てみたかったんですよ。どうして埼玉の三郷で始めたんですか。もともと地元だったとか」

平さんが率直な疑問をぶつけると、堀之内さんからはちょっと意外な答えが返ってきました。


近くの商業施設に目を付けた


「いや、全然地元とかじゃないんですよ。僕パラグライダーをやっていて、空を飛ぶのが茨城のつくばだったんです。三郷はその途中でいつも通っているところで馴染みはあったんです。あとはコストコや……」

コストコ?

「すぐ近くに、でっかいコストコやイケアがあるんですよ。ここでお店をやれば奥さんがコストコで買い物して、旦那さんがウチにきてくれるんじゃないかなって。歩いてこれる距離ですから」

その目論見はずばり当たったようで、実際そのように行動するお客さんも多いそう。堀之内さんは冷静な戦略家でもありました。

薪の品揃えに圧倒される


店内に足を踏み入れると、思った以上に品揃えが豊富です。こういうコダワリのショップにありがちな、アイテム数点がパラパラと置かれ……のような状況とは真逆で見ごたえ十分。そのことを堀之内さんに尋ねると、

「オープン当初は少なかったですよ。100アイテムくらいしかなかったかなあ。でも今は2000個ほどあると思います。20倍になりましたね」と感慨深げ。

ギア好きの平さんは店内をくまなく見渡しながら「あーこのグランマーコッパーケトルやペトロマックス、僕も大好きで愛用してます」と目を輝かせているように、堀之内さんのセレクトはかなりツボなご様子。なかでも平さんがとりわけ気になったのは、積み上げられた薪でした。

珍しい種類の木がいっぱい!


平さん
こんなに薪の種類が豊富なところってないんじゃないですかね。やっぱりそれぞれ特徴が違うんですか?


堀之内さん
全然違いますね。種類によっても違うし、仕入れている地域によっても違いますから


平さん
メジャーでない木の種類がこんなにあるのには驚きました。この“シデ”っていうのは珍しいですね


堀之内さん
そうですね。希少なのでなかなか入荷してこないんですよ。とても硬い木で、燃やしてもちゃんとあとに残るので、炭としてそのまま使えるのが魅力です。すごく高温になるので


平さん
それは便利そう


堀之内さん
焚き火用ならサクラはやっぱり人気です。燻製に使われるくらいですから香りがいいんですよね。音を楽しむなら……


平さん
え、音を楽しむ?!


堀之内さん
そうです。クヌギだと音がパチパチ鳴るんですよ。クリも燃やすとすごくいい音しますね


平さん
へぇー、全然知らなかったです

イルビフで人気の薪№1はどれ?


堀之内さん
色がおもしろいのがエノキです。青い炎がでるんですよ


平さん
そんなのもあるんですね!


堀之内さん
薪としては定番のナラは食材に与える影響が少ないので、ピザ窯なんかにはぴったりです


平さん
用途もさまざまですね。この中でどれが一番人気なんですか


堀之内さん
カシですね。これはもうウチでは不動です。この木は乾燥させるのがとても大変なんですが、そのぶん日持ちがいいんですよ。カシは木の密度が他の薪より高いので。重いんです。ウチで置いている薪はだいたい一緒の値段なんですが、カシは密度が高いぶんちょっと値段も高いですけど、入荷したらすぐ売れてしまいますね。あとは薪をチップ状にしたものも人気です


平さん
薪によってそれぞれ個性があるんですね


堀之内さん
そうですね。だから薪選びはとても重要です。思うように火がつきにくいとか、そういう焚き火での問題は、たいてい薪が原因なんですよ



前職はSE。脱サラして始動


なんと前職はSEという堀之内さん。6、7年前に脱サラしたのだそう。

「どうしてこのお店をやろうと思ったんですか」平さんが尋ねると、堀之内さんは、

「いろいろ疲れちゃって、いったん休みたいなと。それでSEの仕事を離れたんですよ。そのころ軽のキャンピングカーを買ったんでそれで旅をしたりして。そうこうしてるうちに頭がすっきりして。何か商売でも始めようかなと」

ネット販売で経験を積む


まず着手したのは車中泊のネットショップを開店すること。

「2014年でしたかね。そのサイトで商売のノウハウを学んで、仕入れとかのつながりも少しずつできてきました。そうこうしてるうちに、いつの間にか扱っている商材が自分の好きなモノばっかりに偏ってきちゃって(笑)」

このあたりから今のお店の構想が視野に入ってきます。しかしまだ堀之内さんは迷いを捨てきれませんでした。

「2015年の夏場に、火のまわりのものを扱うお店を立ち上げようとしたものの、踏みとどまっちゃったんですよ」

平さんも思わず「どうして?」と聞き返します。

「冬場はいいけど、夏に何を売ればいいのか分からなくなっちゃって。それからまた1年が経過したんです」

最後は「やってみて、それから考えよう」

しかし結局は2016年に着工し、10月に正式オープンとなった。

「まあ、もう考えたって仕方ないし、とりあえず契約しちゃえと。あとは走りながら考えればいいだろうっていう考えに変わりました」

平さんも「やっぱり勢いって大事ですよね」とうなずく。堀之内さんが葛藤の末にこのお店をオープンさせた背景に、共感できる部分が多かったようです。

大手とは違った視点で勝負する


「すでにたくさんあるアウトドアショップに対抗するつもりはまったくなかったですね。火に特化した、これまで誰もやっていない店をやろうと」

SNSに積極的に取り組んだのも大きかった。

「もともとソーシャルみたいなものはあまりやってこなかったんですが、店をオープンさせてからちゃんとやらないとって思ってインスタを始めて。それからですよ、インスタのすごさを実感することになったのは」

「どんなネタを投稿したんですか」と平さんも興味津々。

「たった1枚、アイスランドクーラーボックスの写真を載せたんです。カラフルなやつ。それがドーンと拡散されて、認知されるようになりお客さんも一気に増えました」

そう振り返る堀之内さんの表情はとても満足そう。こころゆくまで店内を堪能した平さんが帰り際に問いかけます。「SEだったころと比べて、やっぱり楽しいですか」

「そうですね。表情が明るくなったと妻からもいわれます。完全な休日がほとんどないくらい忙しいけれど、僕自身も今の仕事がとても好きですね」

イルビフの次なる展望


最後に堀之内さんに今後の夢をきいてみました。

「なかなか僕自身がアウトドアに行ける時間がなくなってしまったので、理想はバンバン遊びにいって、その遊び先から仕入れ業務とかやりたいですね(笑)。あとはオリジナルにも力を入れたい。うちで扱っているガレージブランドって、知恵の塊だと思うんですよ。僕はその知恵を借りて商売させていただいているので、自分もいつかそういう素晴らしいものを作ってみたいですね」

平さんも「イルビフのオリジナルがどうなっていくか、すごく楽しみ」だと期待値も高まる。埼玉の三郷にひっそりたたずむ、火にまつわる個性派アウトドアショップ「イルビフ」の今後から目が離せません。

【今回訪れたショップ】


火とアウトドアの専門店 iLbf(イルビフ)
[住所]埼玉県三郷市彦成4-4-17 みさと団地南商店街104
(※駐車場は別途あり。三郷市彦成4-4-19 をご指定ください)
[電話]048-951-4949
[営業時間]11:00~19:00、土曜10:00~20:00、日曜10:00~19:00
[定休日]月曜、隔週火曜
http://ilbf.jp

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