アウトドアマン・写風人さんが送る“南信州の森暮らし”
長野県・駒ヶ根市に居を構える写風人さん。アウトドアと密接な日々の暮らしを綴ります。写風人
1955年生まれ。GRIP SWANYオフィシャルカメラマン。FIRESIDE薪ストーブエッセイ著作家。2019年より南信州に移住し、薪ストーブを中心とした火のある生活を愉しんでいる。Instagramのアカウントは@syahoo_jin
キャンプ場も“サブスクリプション”で利用する時代!?
南信州に移住してから改めて感じさせられたのが、キャンプ場の多さです。日本アルプスの壮大な谷である伊那谷と木曽谷を中心とするこのエリアは、60以上のキャンプ場がひしめくキャンパーの聖地でもあります。そして今夏、このエリアのキャンプ場やキャンプに関わる企業が連携し「南信州キャンプセッション」が発足されました。
平日のキャンプ場を定額利用できる会員制サービス
中でも特筆すべきが「CAMP LIFER」のサブスクリプションサービス。7つの提携キャンプ場で、平日のソロキャンプが月額4,500円で使い放題という制度です。おそらくこうした試みは国内初! 平日休みやキャンプ場でリモートワークをしたい方はもちろん、移住探しの拠点としても利用できます。もちろん家族での長期滞在にも便利ですね。実際1ヶ月ほどキャンプ場を巡りながらテレワークをしている方もいるとか。
1st シーズン(2020年9~11月)の募集はすでに過ぎてしまいましたが、これは50名限定の試験的導入。来年4月から本格導入を目指しているようなので、興味のある方は随時募集状況をこちらでチェックしてみてください。
手始めに「四徳温泉キャンプ場」を利用してみました
せっかくこの南信州に移住したわけですし、これらのキャンプ場を巡り、連載の中で定期的に体験レポートしたいと思います。早秋の四徳温泉キャンプ場をソロで満喫
まず最初にご紹介するのが、上伊那郡中川村にある「四徳温泉キャンプ場」。看板のロゴに「ONSEN CAMP」とある通り、温泉とキャンプが融合した「人間本来の生命力を回復するための森の休日」が施設のテーマとされています。450年の歴史を持つ温泉は、かつてはこの地域の林業のための施設だったようで、強アルカリ性のぬるぬる・すべすべの湯は美肌にも湯治にも最高!
「ゆ家」と名付けられた管理棟は、この地の木材をふんだんに使った温かみのある山小屋です。
同じ中川村でチェコ出身のアーティスト「イエルカさんの薪ストーブ」も出迎えてくれます。ここで受付を済ませ、サイトへ移動します。
広大な敷地に施設やサイトが点在しているので、まずは場内をご紹介します。
「森の中のかわいい住まい」をイメージした2つのコテージと、広いロフトが設けられたログ作りのキャビンが3棟あります。
No.1からNo.25が区画オートサイト。焚き火・電源・広々など5種類のオートサイトがあります。
こちらはフリーサイトのサニーサイト。川が流れる広々とした芝生からは空が見渡せるので、星空キャンプの名所でもあります。
場内にはテントサウナも
サニーサイトの近くの川には、タイミング良く新名物のテントサウナが設営されていました。薪ストーブで石を温める本格的ロウリュ式サウナです。大自然の中で、ととのってみてください。管理棟から最も離れたフォレストサイトは、大自然の森に囲まれた直火もできるエリア。ソロキャンプで世界中を旅したこともあるアウトドア好きのオーナー達もお気に入りのサイトです。
5年前に荒れた森を整備して作ったとき「原初の心に還る」をテーマにしたそうですが、「直火ができる森」というのはありそうでない場所ですよね。
ユーザーもオーナーも雰囲気をとても大切にしている場所だそうで、固定ファンがいるというのも頷けます。
事前に下見に来たときに一目惚れした場所でもあるこのフォレストサイトで、今回はデイキャンプを愉しんでみました。車の乗り入れができないので、荷物が多い場合はカートがあると便利ですよ。
ソロのデイキャンプともなれば、カバンひとつで十分な荷物の量です。これからキャンプを始めたいという方は、いきなり宿泊するよりも手軽なデイキャンプから始められてはどうでしょう。
この日はフォレストサイトも貸切状態。どこも森の景色を満喫できるので、たとえ1ヶ所しか空いていなくてもロケーションに不満は残りません。
過ごしやすい天候だったのでタープも必要ないほどでしたが、火の粉に強いグリップスワニーの「FIREPROOF GS TARP」を初張りしてみました。
直火は石で囲まれたファイヤーピットでのみ可能。焚き火による自然環境のダメージを集中させるために、新たに作るのではなく前のユーザーと同じ場所を使いましょう。
五徳などを使う場合は、燃やす前に安定してのせられるよう石を組み直します。
フォレストサイトでは間伐(かんばつ)をしながら森の管理をしているので、落ちている細かな枝は焚き火で利用できます。焚き火をする場合は必要な長さに叩き伐れるよう鉈があると便利です。
マナーをおさえた焚き火の基本
デイキャンプならこの程度の薪で十分。燃やしすぎは単なる薪の無駄使いなので「焚き火は小さく」が基本です。火が大きくなれば囲む輪も大きくなり、必然と声も大きくなる。風が強ければそれだけ危険度も増します。逆に小さな火なら声も小さくなり、危険度も減ることになるのです。
また、よく乾いた薪を使い煙を極力減らすなど、焚き方も工夫してみましょう。中には「澄んだ空気を楽しむために来たのに、一日中煙臭くて不快だった」という方もいるかもしれません。
焚き火をするときは、隣のサイトに一声かけることも大切ですね。
サイトができたら、まずは火を起こしてお湯を沸かします。アナルコマグに注ぎ口の「森乃雫」を装着して、ドリップパックでコーヒータイム。
スパムとコーンをメスキットパンで炒めて、ハンバーガーでランチです。
やっぱりソロは気楽でいいですね~。ランチ後はチョロチョロと焚き火を愉しみ、しばらく昼寝。その後、どんな焚き火跡があるかサイトを見回って観察してみました。
どこのファイヤーピットもきれいに燃やし尽くされていて、マナーのいいキャンパーさんが多いと感心させられました。
消し炭が残っている跡がひとつだけありましたが、恐らく立ち去る前に水で消火したのでしょう。灰は土に還りますが、消し炭は土に還りません。
基本的には帰る直前まで焚き火をせず、真っ白な灰になるまで燃やし尽くしましょう。ただ、強風や乾燥など天候によっては消す工夫も大切です。
自然を護るための四徳温泉の努力姿勢にも共感
四徳温泉キャンプ場は、国際的なフィールド環境配慮プログラム「Leave No Trace」(痕跡を残さない)とパートナーシップを結んでおり、自然を汚さないためのテクニック動画がホームページに掲載されています。キャンプ場でのゴミ処理の方法や焚き火の仕方などをアナウンスすることは、利用者のアウトドアスキル向上にも一役買っているのではないでしょうか。ただただ「マナーが悪い」とぼやくだけではなく、運営側もその手段や情報を提示していく「報せる努力」が必要なんだと感じさせられました。
不定期にはなりますが、今後も他の提携キャンプ場をまわってレポートをお届けしたいと思います。
写風人の過去の連載記事はこちら