※取材は、外出自粛要請に従い自宅の物置(ミニスタジオへ改築予定)で実施。実際のキャンプ状態での比較はできませんでしたが、何卒ご理解ください。
モンベルの「ド定番テント」が大幅にアップデート!
月明かりの下でも立てられる超簡単設営と、雨に強いAフレーム構造で日本の定番テントとも言われるモンベル・ムーンライトテントが、発売開始から41年目となる2020年、大幅にリニューアルを施しました。
サイズは1型(1名用)、2型(2名用)、4型(4名用)の3タイプ。今回は筆者がオートバイツーリングで愛用していた旧1型と、リニューアルされた新1型を徹底比較。では、アップデートされた内容を探っていきましょう。
収納サイズから違いが一目瞭然
右の旧型は直径15×長さ40cm(約)。左の新型は本体:直径16×長さ30cm(約)とポール:直径9×長さ56cm(約)。新型は小さく感じますが本体とポールが別収納で、ポールの長さが気になるところ。
ペグやポールを含む総重量は旧型は約2.3kg、新型は約1.65kg(カタログ値)。なんと約30%も軽くなりました!
すべてのパーツが軽量化されていた!
パーツの全容をチェック
旧型の収納袋には本体、フライシート、フレームが入っています。ちなみにコチラ、個人の所有物のためペグは社外品。市販状態ではペグも収納されています。
新型は本体収納袋に本体、フライシート、ペグが、別途収納袋にはフレームと補修パーツが入っています。 また、市販状態での張り綱は最初からフライシートに取り付けられています。
インナー&フライシート、生地の重量比較
どのパーツがどれだけ軽量化したのかを、キッチン上皿はかり(最小単位10g)でチェック! まずはインナーを計量します。以下、すべて実測値です。
旧型約860gに対し、新型は約590g。約270gの軽量化。
お次はフライシート。旧型約650gに対し、新型は約420g。約230gの軽量化。
フレームの重量比較
フレームは旧型約530gに対し、新型は約450g。収納状態で双方を持った感覚だと「フレームが軽量化の主役かな?」と予想しましたが、軽量化への貢献度は、意外にもほかのパーツより低めでした。約80gの軽量化。
小型化の要因を探るため、フレームの直径をチェック。旧型は直径約11mmで、棟部のフレームと脚部のフレームを接続するソケットは樹脂製です。
新型のフレームは、直径約9mm。旧型からマイナス2mm細くなっています。
しなりやすい材質で、すべてのフレームの先端にはボール状のキャップが圧着。棟部のフレームと脚部のフレームを接続するソケットは、別形状のアルミ製に変更されています。
テントの骨格なので、とりわけシビアに改良を加えた部分でしょう。強度を保ちながら材質を見直し、適宜フレーム径を設定し直したことがうかがえます。
収納袋も軽くなっていた!
現実の運搬には、収納袋の重量も影響します。測ってみると旧型100gに対し、新型は40g。なんと、収納袋まで大幅な軽量化が図られていました。収納袋だけでも60gの軽量化!
伝統と信頼の「超簡単設営」は不変です!
ムーンライトテントといえば月明かりの下でも立てられる超簡単設営で知られていますが、旧型と新型の設営方法に変更点はあるのか? 実際に設営してチェックしました。旧型:ムーンライトテント1型の手順
まずは旧型を設営。取扱説明書にある設営の記述は、たったの3工程5項目。その最初の工程は本体を下に広げて、フレームをすべて繋ぐこと。
組み上がった脚部フレームに本体底部4隅にあるピンを差し、棟部の前後にあるソケット部に本体天井部のゴムループを引っ掛けます。
続いて本体天井部中央のフックを棟部フレームの中央にかければインナーテントが自立します。
フライシートの棟部内側前後にあるフックを棟部フレーム先端に掛け、本体の底部両側にあるトグルをフライシートの裾部のリングに掛けます。さらにフライシートの4隅のフックを、本体四隅の二重リングに掛けて固定。
屋内での取材ゆえペグが打てないので、ウェイトでペグの代わりとして設営完了です。
新型:ムーンライトテント1型の設営手順
お次は新型の設営。フレームは旧型と同様にショックコードで繋がれていますが、フレームの繋ぎ箇所は旧型14に対し、新型は11。フレームの組み上げは新型の方が若干スピーディーです。
次に4本のフレーム脚部先端を、インナーのグロメットに差し込みます。旧型と比べ、フレームをかなりしならせる必要があります。
フレームのソケット部に本体を取り付ける部分は、ゴムループから特殊なフックに変更され力要らずに。
しかし、フレームと本体を接続するフックは、撮影に使用した旧型が1箇所(3箇所モデルもあり)なのに対し、新型はソケット部のフックを含め合計10箇所と、強度と居住空間の拡大のために設営作業の手数も増えています。
フレーム&インナーにフライシートを取り付ける方法は、旧型とほとんど同じです。
しかしながら、出入り口左右のフレームとフライシートを結ぶベルクロテープが新設されたことで、ここでも作業の手数が増えています。
新旧モデルを重ね合わせてみた
旧型と新型の右端を揃えたシルエットを重ねた状態です。シルエットの違いが見受けられますね。屋内設営でペグが打てないため、生地のテンションが十分に出せませんでしたが、新型はフレームのテンションが高いためビシッと張れます。一方、前室は新型より旧型の方が若干広く感じました。
【設営編】より簡単に!細部のブラッシュアップ・ポイント
設営編・細部徹底チェック①:フレームと本体底部四隅を留める部分
フレームを大きくしならせて接続する新型は、旧型より力が必要となった一方、旧型の接続時に時々あったピンとフレームの間に皮膚を挟んでしまう、あの痛さを心配する必要がありません。
設営編・細部徹底チェック②:フレームソケット部分と本体天井部の接続部分
仕様が大きく変わった部分。旧型ではゴムの輪に付けられたハンドループを使って、思い切り引っ張らないと掛けられなかったですが、新型はフックをかけるだけでOK。
設営編・細部徹底チェック③:本体とフレームを繋ぐフックの形状
新型のフックは小さくて留めやすいですが、全部で8箇所もあるので、単純に設営作業の手数が増えています。
設営編・細部徹底チェック④:フライシート張り出し部とフレーム棟部前後を接続するパーツ
旧型の金属フックから、新型は特殊な形状の樹脂製フックに変更。新型はパチッと留まりますが、見た目はちょっと心配になってしまう小ささ。個人的にここは旧型のままでもよかったような気がします。
設営編・細部徹底チェック⑤:フライシートの四隅とインナーの四隅を接続するパーツ
旧型新型ともに金属フック。O型リングにフレームが重なり、若干フックが掛けづらい旧型。対して新型はフックが小さいものの掛けやすい構造になりました。
【宿泊想定編】快適性アップ!細部のブラッシュアップ・ポイント
まずは、ドアパネルを開けた新型と旧型を重ねて見てみましょう。
新型は旧型に比べドアパネルの開口部が広くなり、入ってすぐの頭上高も増しているため、出入りがしやすくなっています。
宿泊想定編・細部徹底チェック①:正面ドアパネルの構造
旧型のドアパネルは外側がプレーン生地、内側がメッシュ生地。新型は外側がメッシュ生地のいわゆるアウターメッシュ。
テント内部からメッシュパネルの面積を調整でき、換気や通風による快適性が向上しています。
宿泊想定編・細部徹底チェック②:足元側のウインドウ
室内の足元側ウインドウは、旧型も新型もアウターメッシュ構造を採用。小さくて低い位置にあるため、テントの外側から開閉するのは大変なので、当然といえば当然でしょうか。
宿泊想定編・細部徹底チェック③:小物ポケット
旧型の小物ポケットは左右の壁面にひとつずつの計2個。開口幅は約11cm、深さは約18cmで文庫本がピッタリ入る大きさ。
新型の小物ポケットは入って右側にひとつだけで、開口幅は約22cm、深さは約15cm。メッシュ生地なので入れた物が外から見え、メガネやスマホを入れても安心ですね。
宿泊想定編・細部徹底チェック④:吊り下げ用パーツ
吊り下げ用パーツは旧型では入り口と足元の2箇所で、布製ループに金属リングが付いています。前後のリングを紐で繋げば問題ないですが、そのままではライトなどを吊り下げるには不適当な位置。
新型は入り口・中央部・足元の3箇所で、布製ループのみ。便利度が増し、カラビナや紐を取り付ければよりライトなどを吊り下げやすいですね。
宿泊想定編・細部徹底チェック⑤:換気システム(ベンチレーター)
旧型ではベンチレーターと銘打った部分はなく、フライシートのドアパネル上部に工夫があります。ジッパーをオープンすればベンチレーターとして機能しますが、雨が浸入する心配あり。
一方、新型は独立ベンチレーターが装備され、雨の日の換気でも雨の浸入の心配は少ないつくりです。
宿泊想定編・細部徹底チェック⑥:フライシートのジッパー
新型のフライシートのジッパーは最近のモンベル製テントに多く採用されている、生地より長くはみ出した構造のもの。
この構造はテントに風圧がかかっても、ジッパーが開きづらいスグレモノ。旧型のジッパーは従来通りの構造です。
オプションほか、新型の進化度はいかに?
収納袋のコードロックも進化しました
小さなパーツでですが、小型軽量化に貢献。非常にスマートでシンプルな構造だから、旧型のそれより壊れる心配が少ないかもしれませんね。単品販売があると嬉しいですが……。
オプションアイテムチェック:グラウンドシート
ムーンライトテント1型には、オプションとしてカモフライ(迷彩柄フライシート)、テントマット、グラウンドシートが用意されています。
写真は一番利用率が高いと思われるグラウンドシート。こちらも新型の方が小型軽量に進化しました。
1型に対応するテントマットは収納サイズが約17×12×50cm。登山、自転車、オートバイでの使用には大き過ぎる印象です。実質、クルマでのソロキャンプ用というサイズ感ですね。
伝統のクマロゴにも違いがあった!
最後に、ムーンライトテント伝統のクマのロゴは、旧型は右向きでしたが新型は左向きかつ若干スマートに変更されました。このクマの名前は「モンタベア」。
筆者はこのロゴにアウトドアのワイルドさや自由さを感じ、ムーンライトテントを使った。と言っても過言ではないのです!
より幅広い用途で使いやすく進化を遂げた!
徹底比較をまとめると、新型は旧型に比べ格段に収納サイズ&重量の小型軽量化を図りながら、内部空間の拡大を筆頭に快適性や利便性までもアップしたことが判明しました。
また、新型はオートバイや自転車用だけでなく、登山用としても無理がありません。
総合的に見れば新型の方が優れているのは間違いなし。ですが、旧型のおおらかさにも、改めて捨て難い魅力を感じるのでした。