野営的なミリタリーキャンプに魅せられて|中目黒「ハレル」オーナー加瀬善隆さんの場合

「ミリタリーキャンプ」にハマってしまった人の話


キャンプスタイルの中でも「ミリタリーキャンプ」という言葉に、皆さんどういうイメージを持っていますか? 正直ちょっと取っ付きにくそう、と感じている方も多いのではないかと思います。

確かに軍モノの道具はAmazonや楽天で気軽に買えるものではないですし、そもそも道具の扱い方が難しそう……そういったイメージから難易度を感じてしまうのは仕方がないことです。

今回は、そんなミリタリーキャンプにハマってしまった1人の男性をご紹介。しかもこの方、最初はごく普通なキャンプを楽しんでいたんだそう。どうしてそこからミリタリーのスタイルにハマっていったのでしょうか?

野営的、ミリタリーキャンプに魅せられて


加瀬善隆さん
都内の有名古着屋に長年勤務後、2014年に独立。Dual Thinkingを合言葉にしたショップ「hallelu(ハレル)」を中目黒にオープンさせた。古着で培ったその見識の広さからミリタリーなシティースタイルを提案。若者から老練まで多くのファッショニスタの心を掴んでいる。

ーまずは加瀬さんの自己紹介も兼ねて、「hallelu(ハレル)」というショップがミリタリー系のグッズを取り扱うようになった経緯を教えてください。

最初は古着と新品が並ぶ、ごくごく普通のアメカジショップだったと思います。もともと古着屋だったということもあり、そこから様々な仕入れ先のディーラーに繋がって、ミリタリーを多く提案するようになりました。

ただアメリカモノだけではもう正直やることがないので、王道としてのアメリカ系ミリタリーは置きつつ、ヨーロッパモノに力を入れましたね。最初、特に気を付けたのはデイリーに着られるウェアを選ぶということでした。ミリタリーモノって粗野な感じがあり、受け入れられない人にしてみたら、まったく受け入れられないんです。

ーそこから、苦手意識がある方でも着たくなるような、難易度の低いミリタリーウェアを提案したんですね。

そうです。普段使いできる親しみやすいミリタリーウェアを提案したら、これが好評で。ぼくが中目黒にお店をオープンさせたときは、ちょうど街を行き交う人にも変化が多いときでしたが、意外と若いお客さんが付いて来てくれました。

ー今でこそミリタリーキャンプを楽しんでいますが、加瀬さんは最初から今のキャンプスタイルだったんでしょうか?

もともとキャンプはたまにしていたのですが、本当によくある大衆向けのブランドのものを使った普通のキャンパーでしたね。

不思議なものでキャンプという行為そのものに目が向いていて、キャンプで何を使うっていうこと自体には無頓着だったんです。

ーでは、このキャンプスタイルはいつ頃からの提案ですか?

そうですね。2020年に入って、ポーランド軍のテントフランス軍のテントを仕入れられるタイミングがあったので、試しにひとつずつ送ってもらい、使ってみたんです。

手前がフランス軍のテント、奥がポーランド軍のテント

そうして使ってみたらやっぱりカッコいい。初めて自分のキャンプをスタイル的に意識した瞬間でした。なんか自分で自分を接客してしまったというか(笑)、そんな感じでした。

そこからはすっかりこの“野営”スタイルのトリコに。あとはうちで提案するならやっぱりミリタリーだなという思いもありましたし、自分で使ってみないとお客さんにフィードバックできないという思いもありましたが、それは建前でして、はい、そうです、お察しの通りキャンプが楽しくて仕方なくなっているんです。

ーキャンプに特定のスタイルを取り入れて変わったことはありますか?

スタイルにこだわるだけで、一段も二段もキャンプが楽しくなるというのは発見でしたね。

でもよく考えるとファッションと同じ感覚ですよね。ファッションを生業にしながらなんで今まで気がつかなかったのか……。

おそらくファッションとキャンプを完全に切り離して考えていたからですかね。不思議でした。


ミリタリーなキャンプスタイルと道具

キャンプに携行する加瀬さんのギアたち

ーそこからキャンプ道具を揃えたのですか?

そういうアイテムもありますが、店内にあるミリタリー用品でほぼほぼ賄えてしまったんです。ミリタリーとアウトドアの本質的な合致を強く感じましたね。

ーミリタリースタイルでキャンプをするメリットはありますか?

やっぱりハイスペックなテントのそれとは大きく見劣りしますよ、正直。

でも先ほども言いましたが“野営”感から生まれる道具との一体感はピカイチだと思いますね。身体の一部になるなんて言ったら大げさですが、そんな感じです。

キャンプではぼくは不便さを楽しんでいるので、ハイスペックなものはあえて省きます。すると携行するギアなんかもミニマムに収まるし、そういうところが洗練されるとスタイルにも磨きがかかる気がしますね。

ポーランド軍のポンチョ ¥11,800

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ーこれはポンチョですよね?

ポンチョを2枚つなぎ合わせることで、ワンポールテントになるんです。つなぎ合わせると言ってもボタンがついているので簡単に繋ぐことができるので面倒は一切ないですよ。

これは岡山のツリーハウスの前で張らせてもらって一泊したときのワンシーンですが、タープと組み合わせればそれなりに雨もしのげます。テントというよりもあくまでもシェルターの感覚が強いですが、夏場は汎用性のあるインナーなんかと組み合わせれば快適に過ごせます。

そのインナーひとつ選ぶのも、どの品番がどれに対応するか……みたいな既製品の煩わしさは一切ないです。多少合わなくても気にしない、ピッタリあったら儲けモノみたいな感覚でザックリ選んでます。でもそれでなんとかなるもんですよ(笑)。

フランス軍のテント ¥12,800

こっちはシェルターではなくちゃんとした部屋を持つテントです。シングルウォール仕様なので、結露や防水性といった機能的なところを突き詰めたらそれなりに不便ですが、軽量コンパクトですし何しろ見た目がいいですよね。

行軍した軍隊がこのテントを整然と並べて建てている姿を想像するとグッとくるものがあります。

あとコスパも非常に優秀ですね。良い意味で雑に扱えるというか、ギアに近い感覚でガシガシ使っています。そういうキャンプの原風景的なものを楽しめるってのもミリタリーキャンプを始めてからの気づきでした。

ミリタリーキャンプにはキャンプの原風景がある

ミリタリーキャンプには整地とは縁遠い環境で行われる野営的要素を帯びた姿がある。それを加瀬さんは「キャンプの原風景」と言います。

キャンプをするために自然環境に飛び込むのではなく、自然環境の中にいるからキャンプを強いられる。そんな一見ストイックなミリタリーキャンプの、加瀬さん流の楽しみ方は機能至上主義となっている現在のキャンプの風潮に一石を投じています。

機能を楽しむということはもちろん大賛成です。それは素晴らしいことですし、楽しいこととももちろんわかっています。でも今は、機能よりも風景に溶け込むキャンプサイトを作ることの方が自分は楽しくて。その中でちゃんと機能も楽しんでいるんです。

ちょっと変わっていますが、今はこのスタイルでキャンプをさらに楽しみたいと思っているんです。

Photo:烏頭尾 拓磨

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