いつでも美味しくご飯を炊ける「炊飯マスター」になろう!
キャンプでご飯を炊くのは難しいと思っていませんか? 炎の広がりが少ないシングルバーナーで小人数分のご飯を炊くのは、さらに難しいと……。
でも、大丈夫。いくつかの極意を身につければ、初めてでも美味しくご飯が炊けますよ!
※この記事の取材は、外出自粛要請に従い自宅の物置(ミニスタジオへ改築中)で実施しました
【失敗しない極意・その1】アルミ製コッヘルを使う
チタン製やステンレス製に比べて、アルミ製コッヘルは熱伝導性が非常に高いため、コッヘル全体に熱が伝わり、黒焦げや半煮えの心配が少なくなります。形状については長年の経験上、円筒状がベストで、深さと直径がほぼ同じかやや直径の方が大きいものが炊飯に向いています。
左は円筒形の英国製逸品コッヘル(メーカー消滅)、右は楕円筒形状のスノーピーク・ワッパー(生産終了品)。なお、筆者は持っていませんが、登山など水洗いが困難な場所で使う場合はテフロン加工してあるタイプが便利です(こびりつきしにくく、汚れも落としやすいため)。
炊飯に必要な材料と道具
目分量は失敗の元。上手にご飯を炊くには、米と水の量を正確に計る容器が必要です。米1合は水180mlとほぼ同じ体積になり、米1合を炊くのに必要な水は1割多い200mlが基本。このユニフレームのシェラカップのように、1合と200mlの目盛りが入っている便利なものもありますね。
ではさっそく、アルミ製コッヘルとシングルバーナーを使って、2合(ご飯茶碗で約5杯分)のご飯を炊いてみましょう。
ムラなく炊き上げるには、風防があると成功率が上がります。そして熱いコッヘルを持つときのため、綿軍手や革手袋を用意しておきましょう。
【失敗しない極意・その2】米は必ず研ぐ
研ぎ汁には米の栄養素のほとんどが含まれるのですが、失敗を減らすためには研いだ方が◎。米の表面に微細な傷が付き、水が浸透しやすくなるからです。とはいえゴシゴシとやる必要はなく、手やヘラで20回程度かき混ぜまればOK。・<1回目の研ぎ汁>は汚れなどが含まれるため、米に吸収させないようすぐに捨てます。
・<2回目以降>は食器洗い用に残しておくのもあり。多少の油脂汚れなら研ぎ汁で落とせます。
・<3回目以降>は研ぎ汁の濁りが少なくなったら、米研ぎは完了。
無洗米を使う場合も1~2回ほど研いだ方がヌカくささが減り、美味しく炊き上がりますよ。
研ぎ汁がほぼ透明になれば十分です。今回は米研ぎ4回目でほぼ透明になりました。研ぎ汁を捨てるときは、米まで捨てないように慎重に行いましょう。
【失敗しない極意・その3】水は、基本の1割増し
米1合に対し水は200mlが基本ですが、シングルバーナーで小人数分を炊く場合は、水の量をさらに1割増やすと失敗が少なくなります。1合炊きの場合、水の量はおおむね220mlでOK。ナイフなどを使って、事前に自宅でシェラカップなどに米1合・水200ml・220mlと、3つの印を刻んでおくと便利ですよ。
今回は2合炊きをしますので、水は基準より1割増しの440mlにします。目分量は失敗の元ですので、軽量カップで正確に測っておけば安心です。
【失敗しない極意・その4】最低20分間、水に浸す
最低でも20分間、米を水に浸しておくのは失敗しないための鉄則。寒い時期は30分から1時間程度が適当ですが、それ以上だと雑菌が繁殖する可能性が出てきます。とくに真夏は30分以内にしましょう。水に浸した時間が経つにつれ、米は半透明から白色に変わり少し膨らんできます。
米全体が真っ白になったら、加熱準備OKのサイン。今回は気温18度で30分後に全体が真っ白になりました。
【失敗しない極意・その5】はじめチョロチョロなかチョロチョロ
炊飯の火加減は「はじめチョロチョロなかパッパ」と言われていますが、シングルバーナー+アルミ製コッヘルの場合は、「はじめチョロチョロなかチョロチョロ」だと失敗が少ないです。弱火でスタートしたら沸騰しても火力を強めず、そのままキープ。そして、火力の維持と加熱ムラを減らすために、風防で囲っておくとベターです。フタとの噛み合わせが緩いコッヘルには重し載せましょう。
風防で囲うとコッヘル全体が温められ、炊きムラが少なくなります。とくに寒い時期には有効です。写真ではコッヘルが見えるようにしていますが、ガスカートリッジ部分以外は、なるべく囲いましょう。
火力はちょっとした風などでは消えてしまわないような、安定した弱火をキープ! 炎はコッヘルの底のど真ん中に当てましょう。
【失敗しない極意・その6】グツグツクンクン法
火にかけてから10~20分経つとコッヘルからグツグツと音がしてきます。ここからが成功か失敗を分ける重要ポイント。コッヘルから目と耳と鼻を離してはいけません。
時間経過ではなく、湯気の量と音とにおいで加熱終了のタイミングを見極めます。
「音」と「におい」の変化を嗅ぎ分ける!
湯気とグツグツ音が弱くなってきたら、およそ30秒ごとにコッヘルに鼻を近づけクンクンと嗅いでみましょう。ご飯が炊ける甘いにおいに混じり、うっすら焦げるにおいがしてきたら、加熱終了のタイミング。5~10分以内で嗅ぎ分けられれば失敗には至りません。コッヘルの一部が視界の目一杯になるくらいまで鼻を近づけてクンクンしましょう。鼻とコッヘルの距離は数センチ程度なので、ヤケドに注意!
ついにフタ開け解禁、炊け具合を確認
さて、お米の様子はどうなっているのでしょうか? さぁ実食! の前にじつは失敗しない極意があと1つ残っています。「赤子泣いてもフタ取るな」は、炊飯に失敗しないための言い伝えですが、ここまでの行程が順調なら、もうフタを開けても大丈夫。表面と底の2箇所のご飯をスプーンですくって試食してみましょう。
ただし開けっ放しは禁止です。これが上手にご飯が炊けたときの表面、いわゆる「カニの穴」。
スプーンですくったご飯の表面が艶やかで、底側にうすくお焦げができていたら、大成功です。
【失敗しない極意・その7】奥義「コッヘル返し」
軍手や革手袋をしてコッヘルをしっかりと持って上下を逆さまにする奥義「コッヘル返し」。蒸気が底側に昇り、お焦げの部分を柔らかくするとともに、ご飯の自重で底に焦げ付いた部分が剥がれやすくなります。
タオルを下に敷き、その上に逆さまにしたコッヘルを載せましょう。
タオルなどでコッヘル全体を包み、3~10分間ほど放置します。これはいわゆる蒸らしの行程。冷めない程度の時間でOKです。
ご飯がベチャベチャだった場合は、以前より少し強めの火力で再加熱し、グツグツクンクン法でリトライしてください。反対に黒焦げ部分が多い場合は、食べられる部分だけ取り出しましょう。
ツヤツヤのキャンプご飯、できました!
キャンプでもやっぱり主食はご飯がいいですね。ご飯が美味しく炊けるだけでキャンプは数段楽しくなります。では、山盛りにして残さず「いただきま~す!」
【おまけの極意】お焦げはお茶漬けが美味〜!
焦げついた部分は「お焦げ」と言われるように人気でもありますが、少し多すぎると困っちゃいますよね。焦げに白飯を足してお湯を注ぎ、醤油と白ゴマで味付けして、お焦げ茶漬けにするのも美味しいリカバリー方法です。
こびりつきなく、ごちそうさまでした!
キャンプの食事は自然に感謝し環境に配慮して残さず食べ、生ゴミの量を極力減らしたいものです。
極意に沿って炊飯すれば、いつでもどこでも美味しく炊けて、ご飯のこびり付きはほとんどありません。そして洗う作業も楽チン! ぜひ、失敗知らずの炊飯マスターを目指しましょう!