キャンパーなら覚えておきたい、ナイフの基本テクニック
キャンプに役立つナイフの選び方については、前回の記事でお伝えしたとおり。今回は一歩進んで、覚えておくとキャンプシーンで役に立つ実践テクニックの基本をお伝えしていきます。
ナイフの達人、長野さんがキャンプに役立つテクを伝授
教えていただくのは、前回に引き続き長野修平さん。スウェーデンのナイフメーカー「モーラナイフ」の日本・台湾アンバサダーとしても活動しており、仕事では自然素材を使ったクラフト作家として全国各地でワークショップを行っているナイフの達人です。
ナイフの正しい使い方って意外と知らない人が多いんです。僕も自己流ではありますが(笑)。まずは基本的な3つのテクニックから覚えておくと、いろいろと応用もできるようになりますよ。
では早速、基本テクニックから教えてもらいましょう。
まず覚えたい基本テクニックは「落とす」「切る」「削る」
ナイフでできることは色々ありますが、まず最初に覚えておきたいのがここで紹介する3種類。キャンプ場に落ちている枝を拾ってきて、練習してみましょう!①枝を落とすテクニック
木の枝は下に向かったくさび形に繊維が入っているので、ナイフを向ける方向が重要です。写真のように枝を上下逆さまにした状態で、落としたい枝の根元に刃を当てるようにしましょう。
その際に注意しておきたいのが、足の位置。内腿には太い動脈が通っているため、誤って刃があたってしまうと生死に関わる大怪我になることも。万が一でもナイフの刃が足にあたらないように、枝は足の外側に配置します。
コツはナイフの刃を下に向けて体重をかけるようにし、さらに枝も手前へ引くこと。刃の先端ではなく根本でやるほうが、グリップから近い位置なので力も伝わりやすくなります。
②枝を切るテクニック
まずは切りたい枝をなるべく平らな場所に置きます。枝が浮かず、ぴったりくっついている状態が理想的です。枝が固定できたら、切りたい位置に刃の根元をあて、ナイフの背の部分を薪や木槌で軽く叩くだけ。直径2cm程度の枝であれば1~2撃でスパッと切れます。
この時も、作業する際は身体の位置に注意が必要。枝の硬さや太さにもよりますが、失敗するとナイフがすっぽ抜けた時に危険です。身体の中心で作業するのではなく、身体からずらした位置でやるようにしましょう。
③木を削るテクニック
削る方法は大きく2つ。「材料を固定」するか、「ナイフを固定」するかのいずれかがよいでしょう。「材料を固定」する場合は枝を足の上に置き、安定させます。
ナイフはしっかりとしたグリップで、刃の根元を使って作業すればOK。フェザースティックを作る時も、このやり方が一番やりやすいです。ナイフの進む方向に人がいないか、安全を確認をした上で作業しましょう。
より硬い木だったり、深く削りたい、平たく削りたいなどの場合に有効な方法は「ナイフを固定」することです。これは胸元で固定する一例。グリップは親指が上を向くように持ち替え、握りこぶしを身体にくっつけるようにしてナイフをホールドします。
材料の方を動かしながら胸を前に押し出すようにすると、作業しやすいです。
より細かく繊細に削るときは、刃の先端を活用します。このときはグリップも変えて、親指を背に当てるとナイフのコントロールがしやすくなります。
刃物は材料に対して垂直にあてるより、斜めにあてたほうが薄く削ることができます。枝から串や箸を作るときは、この繊細な動きが大切なので練習しておくといいですよ。
基本的な3つの削り方を覚えたところで、次はフィールドでより実践的に使える「バトニング」に挑戦してみましょう!
正しい 「バトニング」をマスターしよう
薪をナイフで割る作業である、バトニング。刃先を傷めずに、初心者でも簡単にできる方法を教わりました。①節(ふし)がないかを確認する
バトニングにおいてもっとも重要な作業が「節」の確認です。節が途中にあるとナイフを挿れても引っかかったり、切り口が曲がったりします。節がある場合はそこを避けるようにして、ナイフの挿入位置を決めましょう。
②ナイフの背を軽く叩き、食い込ませる
節に引っかからない位置にナイフの根本を当てて、軽く背を叩きます。刃先が薪に食い込めばOKです。
③ナイフの先端を優しく叩く
次に薪から出ているナイフの先端を叩いていきます。この時、力はあまりいれなくても大丈夫。一定の力加減で、トントントンと叩いていったほうが刃欠けの予防にもなります。
④根本まで一定のリズムで叩く
「節」がなければ、軽く叩くだけできれいに割れます。万が一見逃していて節があった場合は力任せに叩いたりせず、ナイフを抜き、節を避けるようにしてやり直しましょう。
バトニングに向いているナイフとは?
バトニングはナイフの刃を薪に食い込ませていくため、厚みは3.2mm以上のナイフのほうがやりやすいとのこと。
ここで使ったのはモーラナイフの「ガーバーグ」というモデル。刃がハンドルの後ろまで貫通しているフルタング構造なので頑丈です。捻ったり叩いたりしても曲がったり折れたりしにくいので、バトニングメインで使うのであればおすすめです。
「ガーバーグ」の刃はステンレスとカーボンスチールの2種類。値段は数千円の違いですが、手入れのしやすさを考えると初心者にはステンレススチールのほうが扱いやすい、と長野さん。
「とにかくキャンプ場でバトニングをやりたい!」という人は、参考にしてみましょう。
基本テクを習得すれば、こんなものも作れちゃう
これらの作品は長野さんがワークショップなどで作った木工クラフト作品。落ちている枝を素材に、切る・削る・縛るの基本テクニックを駆使して作ったものです。
左から、バトニング用の木槌・BBQ用の串・ヘラ・手裏剣・箸・クリップ・ハンガー・フックと、形も目的もさまざまですが、ナイフの基本を知っていれば、誰でもすぐに作れますよ。
キャンプ場に行って、落ちてる枝を素材にこんなモノを作れたらすごくかっこいいですね! これはもう、練習するしかありません!
ナイフが使いこなせると、キャンプの楽しみも広がる
キャンプで使えるナイフは数あれど、基本的なテクニックはどのナイフでも同じ。まずはお気に入りの1本を手に入れて、キャンプ中にいろいろと練習してみてはいかがでしょうか?