「SUV」それは世界で今もっともイケてるクルマ
日本でもアメリカでもヨーロッパでも、今もっともイケてるクルマはSUVである。ポルシェ、ジャガー、マセラティ、ベントレーと、高級スポーツを標榜するメーカーも相次いでSUVモデルをリリース。アルファ・ロメオやらアストンマーチンやらランボルギーニやらもSUVを開発中と噂されている。
人気になる理由は、一度乗ればわかる。カッコイイし中は広いし速いし快適。メルセデスのAMGモデルなぞは、何一つ不自由のないスポーツカーのようだ。ただし、ヨンクの本懐たるオフロードというステージのイメージはあまりない。実際はその気になれば走れなくはないのだろうけれど、少なくともあんなに薄いタイヤではおっかなくて舗装路以外は走る気になれない。
SUVに乗るのなら、やっぱり挑戦したい「オフロードコース」
そうした「軟派なヨンク」は足を踏み入れたくもないであろう、まるでアイガー北壁のようなオフロードコースがある。それが「アウトドアパーク ブロンコ」だ。埼玉は秩父の山中にあるブロンコ、何がすごいかというと、そもそもコースに行くまでの林道が凄まじい。ウェブサイトには「四輪駆動車しか走行できませんので一般乗用車の方はご注意ください」と書かれている。今回、この地に向かうためにアピオ・ジムニーをお借りしたのだが、林道の最中は常に4WDのローレンジ(低速ギア、つまり悪路でもハマりにくい)に入れっぱなしで走った。オフロード走行ど素人の僕は、この林道だけでお腹いっぱい。実はたかが2㎞弱に過ぎないというが、道には岩や木があちこちに転がっており、ちょっと踏み外せば山を転がり落ちてしまうのでは……という恐怖と戦いながらの林道走行は、かなりスリリングなものだった。だがブロンコを管理している竹村さんによると「4WDなら案外どんなクルマでも登ってこられる」とのこと。中には普通のレンタカーで上がってきた人もいるらしい。要はクルマより人間の方がアップアップになってしまうというわけだ。はい、僕がそうでした……。
テーマは「ブロンコで泥んこ」
もちろん猛者たちの本番はこれから。今回お供させていただいたのは、主にディフェンダーを中心としたメンバー。ハントvol.7でご紹介した雪のイベントの主催者、江戸原大輔さんが今回の言いだしっぺでもある。ちなみにテーマは「ブロンコで泥んこ」。きっとオトコなら嫌いなはずはない(?)、泥んこ遊びを、クルマでやっちゃうあたりが、粋……というか、なんというか。
で、どれほど泥んこになったかは、言葉で説明するよりも写真をご覧いただければ一目瞭然。何も説明する必要はないだろう。僕のような一般人には考えられないことだが、彼らはクルマがハマって抜け出せなくなったり、到底登れない坂をなんとかしてクリアすることを無上の喜びとしている。水を被っても平気なようにシュノーケル(エンジンの吸気口を屋根の上に持ち上げる装置)を付け、他のクルマを引っ張ったり、自車を引き上げるためのウインチを備えているのは、そのためなのだ。「なんでこんなことしてんでしょうね?」と、江戸原さんはほとんど禅問答のような問いかけをしてきたが、それはこっちのセリフである。
彼は「バケツ」と呼ばれる泥水がたまった沼からで、脱出時に勢いをつけるためにバックしたときにマフラーを曲げてしまった。ただスゴイのは、彼と彼の仲間が知恵と道具を出し合い、30分ほどでほぼ元通りに直してしまったことである。この生命力は半端ではない。こんなことして、何に役立つんだ?と思わなくもないが、こんな豪気でワイルドな遊び、他には絶対にない。
photo & text:Yoichi Sakagami
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