「ストームクッカー」って何だ?
スウェーデンの世界的なアウトドアブランド「トランギア」。メスティンで知っている人も多いかと思いますが、代表するアイテムはなんと言っても「ストームクッカー」です。
軽量で見事にスタッキングでき、かつデザインが秀逸。世界中で愛用されているロングセラーのクッカーですね。
アルコールバーナーの火力を引き出す構造
アルコールバーナーをこのように設置することで風(酸素)を取り入れ、バーナーの火力を最大限に発揮させるのだとか。ゴトクを兼ねた風防が、熱を逃さない点も見逃せません。CB缶一筋だったのだが…
筆者は、CB缶を使用するガス火器しか使ったことがありません。家族とのキャンプではSOTOの3バーナー(ST-532)、ソロキャンプでもSOTOのレギュレーターストーブ(ST-310)を愛用しています。CB缶ならキャンプ場に向かう道中のコンビニでも補充できるし(※)、火器にはめ込むだけの手軽さが最高だからです。
しかし燃料を注ぐような、何かひと手間を欲していたのも事実。今後もCB缶を使い続けるつもりではあるけれども、手軽すぎて物足りなく感じるシーンもありました。
※SOTO製品にはSOTO製のCB缶が推奨されますが、筆者は自己責任で他社製を使用することがあります。
ストームクッカーを入手!
というわけで「ストームクッカーS・ブラックバージョン」を入手! はじめて手にするCB缶以外の火器です。まず洗練されたデザインに目を奪われました。「これキャンプに持って行ったらカッコいい!」……浅はかで恐縮ですが、最初に思ったのはコレです。
このようにコンパクトにスタッキングすることが可能。横っちょにある多数の小さな穴が、風を取り入れるというわけですね。軽さもまた素晴らしい!
セットを隅々までチェック!
スタッキングされた状態をバラして広げてみました。うーん、いたってシンプルな一式。上の3つがクッカー&フライパンであることはすぐにわかります。それら以外をひとつひとつチェックしていきましょう。
まずは本体から……
スタッキング時にいちばん外側にあった穴開きのパーツを、ひっくり返すことでベースに。その上にゴトク兼風防を装着します。両者は所定の位置同士で密着させ、ちょっと回転させることでしっかりと固定されます。
本体を上から覗くとこんな感じ。中央の大きな穴にアルコールバーナーをはめ込みます。その周囲には無数の穴、穴、穴……。ベースの横っちょにある穴といい、酸素の取り込みを徹底的に追求したアイテムのようです。
またゴトクの形状から、付属のクッカーがぴたっとホールドされることがわかります。
冒頭の写真にもあるように、付属のクッカーは見事にフィットして安定しますが、付属のクッカー以外でもイケるかどうか試してみました。
スノーピークの「アルミパーソナルクッカーセット」から、小さい方の鍋を設置。付属のクッカーほどピッタリとはハマりませんし取っ手も無駄になりますが、まあ使うことはできそうです。
ストームクッカーの心臓部
CB缶一筋だったので、はじめてアルコールバーナーを手にしました。メカメカしくもないし、こんな小さな物体が調理火器になるのかと思うと、不思議な気分です。
アルコールバーナーはアルミ缶を利用した自作方法が有名ですが、やはりトランギア製という安心感は大きいですね。
付属のアルコールバーナーを見ていきましょう。タンク(中央)、タンク用の蓋(右)、消火用&火力調整用の蓋(左)で構成されます。
タンク用の蓋はねじ込み式。これならアルコールが残っていても、しっかり蓋をすることで持ち運べそうです……と思ったらメーカーはそれを推奨していません。アルコールは使い切るか、別容器に移す等しないといけないようです。
消火用&火力調整用の蓋がこちら。蓋をすることで酸素の供給をストップさせ、消火できるようです。またスライド式の窓がついているので、写真のように途中まで開け閉めすることで、火力を調整できるのだとか。
使いやすいアルミハンドル
クッカーには取っ手がないので、アルミハンドルが付属します。握り込む=つかむ、緩める=離す……と操作はいたってシンプル。
重力によって開いた状態になるので、慣れればカチカチと自由自在に開閉させることができます。
あると便利な別売りオプション
別売りになりますが、あると便利なオプションがこれら。アルコールを容れるフューエルボトル、クッカーの中にぴったり収まるケトル、そしてマルチディスク。
マルチディスクはストームクッカーを雪上で使用する際に土台にできるほか、湯切りにもなり、カットボードとしても使える優秀アイテム!
実際に使ってみた!
ではいよいよストームクッカーを使ってみましょう。フューエルボトルからアルコールをタンクに注ぎます。そうそう、こういうひと手間に憧れていたんです(笑)。アルコールを注いだら、チャッカマン的なライターで火をつけます。はじめのうちは炎の出る穴の部分に火をつけようと四苦八苦していましたが、タンクの中央、アルコールの表面に直接点火するのが正解なのでした。さすがは初体験、何もかも知らないことだらけ!
ところでこの日は風が強く、きれいな形の炎を撮影することができませんでした。風が治まるのをしぶとく待ちましたが、結局シャッターチャンスは訪れず、炎は風に揺れっぱなし……とそこで気づいたんですが、アルコールバーナーって風にすんごく強い!
まずは炊飯から
さて実際に調理をしてみます。まずは1合の炊飯を。クッカーの内側に目盛りなどはないので、しっかり計量するか、だいたいの勘で水を加えます。多くのキャンパーは勘でやっているかも?
あんなに小さなアルコールバーナーだというのに、火力は充分です! すぐにグツグツと蓋が浮き、もうもうと湯気が立ち昇りました。
あっけなく成功してしまいました。特にレポートする必要もないような……。吹きこぼれるまで火力MAX、吹きこぼれたら消火用&火力調整用の蓋で弱火になるように調整して20分、それだけです。
次にハムエッグを
次にハムエッグに挑戦してみます。筆者がキャンプでCB缶&クッカーを使うのは朝食時が多いので、ストームクッカーでも朝食っぽい調理をやってみようというわけです。しかし上の写真、致命的なミスを犯しています。なんとゴトクを使っていないのです。
フライパンを使う場合、本来はこのようにゴトクを外側に開く必要があります。フライパンでピッタリと蓋をしてしまうと、空気の流れがなくなり、火が消えてしまうからです。
初心者ゆえか、頭がどうかしていたのか、調理中の筆者は気が付きません。「フライパンを使う場合はちょっと隙間を開けてやる必要があるな」などとドヤ顔でした。恥ずかしい。ちなみにカットボードを乗せているのは、目玉焼きの上面も蒸して加熱するためです。
大きなミスはあったものの、朝食は無事に完成しました。お湯をわかして即席スープをつくり、クッカーすべてフル稼働の朝食です。
クッカーの内側にはノンスティック加工というコーティングが施されているので、食後の食器洗いもラクラクでした。
使用後に思ったこと
以上、はじめてストームクッカーを使ってみたわけですが、まず真っ先に、声を大にして言いたいのが火力の強さ! 「アルコール」というと理科の実験で使った、あの弱々しい炎を思い出してしまい、キャンプギアとしては敬遠していたのですが、それは間違いでした。
ベースの横っちょにある穴を風上の方向に向けて火力MAXにすると、アルコールバーナーの熱は体全体で感じられるほどです。
コンパクト性はCB缶と互角!
コンパクト性に関しては、CB缶のガスとストームクッカーは互角ではないでしょうか。アルコールバーナー自体は非常に小さなものですが、筆者が使っているSOTOの「ST-310」もかなり小さく畳めてクッカーの内側に収納できますし、フューエルポンプとCB缶にはサイズ的に差がありません。
手軽さはやっぱりCB缶
手軽さ、扱いの簡単さはCB缶のガスに軍配が上がると思われます。しかし冒頭でも言いましたが、もっとこう手間が必要な火器を使いたくてストームクッカーに挑戦したのですから、手軽さで比較するのはストームクッカーにとって酷な話ではあります。
またストームクッカーは全体が熱くなってしまうため、設置する場所にも注意が必要です。木製テーブルの上などでは、焦げ目がついてしまう可能性が……。
ルックスが秀逸
ストームクッカーのルックスのお洒落さは、非常に魅力的です。シンプルで洗練されたデザインは無駄がなく、眺めながら一杯やれるレベルです。一方、CB缶のガス火器の場合、CB缶のデザイン自体が全体のビジュアルに影響してしまいます。デザイン性に優れたSOTOのパワーガスが、コンビニやスーパーで買えるわけではないんですよね。
これからはアルコールも使っていこう
ストームクッカーでいいと思ったところは他にもあります。低温に弱くない、風に強い、構造がシンプルで壊れにくい……などなど、使い込むほどに良い点が見つかることでしょう。
燃焼用のアルコールはドラッグストアでも気軽に購入できますし、CB缶に固執せず、アルコール燃料も取り入れていこうと思ったストームクッカー初体験でした。……と書いてるそばから、今度はソロストーブに興味が湧いてきています(笑)。
今回使用したストームクッカー&ボトルはこちら
トランギア ストームクッカーS ブラックバージョン
●重量:869g
●収納サイズ:径18×H10cm
●素材:ノンスティック加工アルミ
●セット内容:フライパン18cm、ソースパン1L×2、アルコールバーナー
●注意:収納袋は別売り、0.6Lケトル(別売)が収納できます。
●収納サイズ:径18×H10cm
●素材:ノンスティック加工アルミ
●セット内容:フライパン18cm、ソースパン1L×2、アルコールバーナー
●注意:収納袋は別売り、0.6Lケトル(別売)が収納できます。