薪が燃えるということは、どういうことか?
焚き火は、パチパチ爆ぜる音を聞きながら、変幻自在に揺らめく炎をみているだけで心地いいものです。音や炎も魅力ですが、燃焼過程で見落とせないもう1つの要素があります。それでは薪が燃えるという仕組みはどういうものかを大雑把に振り返ってみましょう。薪の燃焼
薪となる木材には炭素が多く含まれ、加熱すると可燃ガスが発生し酸素と結びついて燃焼します。その時の熱と光がいわゆる「火」であったり「炎」であるのです。まず着火材や焚き付けを燃やして薪に熱を加えていくと100℃近辺で薪の水分が蒸発していきます。260℃以上になるとタールを含んだ蒸気が発生し、可燃ガスが放出され始めます。温度が上昇すると可燃ガスが発火して炎として燃え上がり、800℃程まで達します。青い炎は可燃ガスと酸素が反応した状態で、赤い炎は炭素が反応して輝いている状態です。更に燃焼が進むと青白い炎を放ち、やがて炎が収まり熾火として燃え続けます。
この熾火の状態は1000℃近くになります。薪を補充する場合は、このタイミングがいいと思います。派手に燃やしてばかりいたら、せっかくの青白い美しい炎を見逃してしまいますから。そして最終的には灰となり燃焼が終了します。
焚き火においては炎も美しい存在ですが、灰の中に僅かに残された熾火も静かで美しいと感じます。今回は地味な存在でもある熾火を取り上げてみたいと思います。
熾火(おきび)
熾火は燃えさかる炎よりも温度が低いと思われがちですが、先の説明通り最も高温状態です。鍛冶屋さんが鉄を鍛えるとき熾火に入れ込んでいることで分かると思います。熾火は煙もなく、遠赤外線の優しい暖かさで身体を暖めてくれるのも利点です。また量によっては弱火から強火へと調整可能なので、最も焚き火料理に適した熱源とも言えます。
例えばこの焼き芋。熾火の量を減らして、じっくり熱を加えることで柔らかくホクホクの焼き芋が出来上がります。これは炎では調理できない芸当です。
またダッチオーブンでの熱量調整も容易です。下火は鍋と食材が密着しているので熾火を弱くして焦げを防止します。その分上火を強くして食材に熱を加えます。上火下火から満遍なく火を通すことによって、ダッチオーブンの真価を発揮できるのです。
熾火の作り方
樹木の種類によって熾火の持ちも変わってきます。スギやヒノキなどの針葉樹よりもナラやクヌギなど比重の高い堅木がより熾火が長持ちします。直火では調理するスペースと焚き火するスペースを設けて熾火づくりをします。焚火台などでは2つ利用するといいでしょう。
炭火
薪の熾火よりも熱量・持続性・安定性のあるのが炭火です。左からチャコールブリケット、黒炭、白炭(備長炭)チャコールブリケットは炭の粉を固めて成形したもので、形・大きさが一定なので火力の安定が特徴です。
そのためダッチオーブンのコンテストなどでは、綿密な温度と調理時間が計算できるチャコールブリケットが主流になっています。
日本では古くから行火(あんか)やこたつに利用されている豆炭もあります。マッチ1本で簡単に火が付くスーパーマメタンなどもあるので、着火に苦労することはありません。
黒炭はホームセンターなどで手に入れやすく、安価で立ち消えしないのが特徴です。
焚き火で火起こしも出来ますが、着火材でも簡単に熾せるのでBBQなどでは最もポピュラーな熱源として利用されています。一方、白炭は一般的に備長炭として知られ、叩くと金属音がするほど炭素密度が高い炭です。備長炭は熾きにくく、いきなり高温で熱すると爆ぜる場合があるので徐々に熱に慣れさせる必要があります。
しかし炭火は一度熾きれば熱伝導率も高く火持ちもいいので、プロの料理人によく使われているようです。また匂いもないので室内では火鉢などによく利用し、野外では焚火台に入れたりして焚き火を長持ちさせています。熾火や炭火は実際に活用できる優れもの、うまく利用したいものです。
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