薪火と炭火づくしの冬に感じる“薪のありがたさ”【写風人の駒ヶ根アウトドアライフ~第3章#19】

アウトドアマン・写風人さんが送る“南信州の森暮らし”

長野県・駒ヶ根市に居を構える写風人さん。アウトドアと密接な日々の暮らしを綴ります。

写風人
1955年生まれ。GRIP SWANYオフィシャルカメラマン。FIRESIDE薪ストーブエッセイ著作家。2019年より南信州に移住し、薪ストーブを中心とした火のある生活を愉しんでいる。Instagramのアカウントは@syahoo_jin

ヘビーな“薪活”に励む日々

冬は最も好きな季節。本来この時期は元気ハツラツなのですが、最近やや疲れ気味です。毎日が隠居暮らしのような生活から週5日の勤務に変わり、休みの2日間はどうしてもフル稼働してしまいます。

「60代半ばを過ぎてるんだから、もう少しのんびりしたら?」とよく言われますが、性格的に動いていないと落ち着かないんですよね。


最近の暮らしぶりを一言で例えると「薪づくし」の毎日。勤務先は#16にも紹介したファイヤーサイド直営店「ズクショップ」です。


薪ストーブのショールームも併設しているので、出勤するとまず4~5台の薪ストーブを掃除して、薪を組んで火を入れます。それから店内や外回りの掃除。
そして外の薪棚からそれぞれのウッドストッカーに薪を補充。これは一日に2回ほど行います。ほとんどが接客中心ですが、商品が不足してくると倉庫から店舗への移動もあります。時には20kg近い商品を何個も運ぶこともあり、これがキツイ!
帰宅後も薪運びが待っています。一晩に使う薪の重さはナラ材なら12kg程、それを3台分それぞれのストッカーに運びます。筋力がつくと言うより、足腰を痛めつけているという感じです。
スイッチひとつで暖かくなる暖房器具と違い、数時間おきに薪をくべなければならない薪ストーブ。職場と自宅を合わせると一日に8台近く焚いていることになります。

週末だけ森暮らしをしていた時代は一台の薪ストーブでしたから、一気に8倍の労力に膨れ上がりました。

それでも嫌にならないのですから、薪火には不思議な力がありますね。休日は週2日、冬の季節は薪運びと薪づくりでほとんど終わってしまいます。
薪は一段下の薪置き場から家の軒下の薪ラックへと運びますが、とても一輪車では間に合わないので一週間分を軽トラへ積んで移動します。
軒下の薪ラックは全部で4ヶ所。軽トラ2往復でほぼ満タンになります。


薪の消費量がハンパないので、その分薪作りも必要になります。先月、今シーズン最終の原木が届きました。原木は乾燥薪を購入するよりはるかに経済的ですが、これを40cm程の玉切りにして割って干してという手間と労力が掛かります。
敷地内ではよく焚き火をしますが、薪ストーブ用の薪はもったいないので森の折れ枝や倒木を利用します。

ときには薪として使い物にならない原木を豪快に燃やすことも。寒い時期の外作業には、ありがたい存在です。
ちなみに先日、信州松本平にある柳沢林業さんの「俺たちの薪」というキャンプ用の薪を入手しました。市販品では珍しい23cmのカット薪なので、焚き火台で扱いやすいサイズだと思います。

樹種もクヌギ・ナラ・サクラ・ニセアカシア・針葉樹など豊富に揃えられ、2年乾燥でよく燃えるのでオススメです。
ITEM
柳沢林業 俺たちの薪 広葉樹 薪
●薪の長さ:約23cm
●内容量:15kg

室内では薪ストーブの他に炭火も愛用

GRIP SWANY × The Arthの「グリ次郎テーブル」の中に火鉢を入れ、囲炉裏風にしてみました。炭火と湯気を見ているだけで、ほっこりとした気分になりますよね。


使っている炭はラオス備長炭。国内産の備長炭に比べ若干火持ちは劣りますが、爆ぜにくく匂いも少なく何より安価でとても気に入っています。

サイズも豊富で、火鉢にちょうど良い荒太丸を30kg常備しています。
面倒な火起こしは、薪ストーブに放り込むだけ。
薪火と炭火の併用は体の芯まで暖めてくれるので、どんなに外が寒かろうが快適に過ごせます。

倒木作業で、思いがけない功名が!

※ちょうど一年前に撮影。我が家から東向き
さて、再び薪作りと原木の話に戻ります。我が家には隣接する森があり、間伐しながら森の管理を任されています。ただ忙しさにかまけて手入れを怠るとすぐにうっそうとした原始林となってしまい、こうなったらもう手が付けられません。

※森から我が家を見た写真
ところが先日役場によって松枯れの伐採が行われ、パワーショベルで道が切り開かれると我が家が少し見えるようになってきました。こうなると、もっときれいにしたいという欲が沸いてくるものです。
ノコギリ・鉈・小型チェンソーで低木や雑木を切り倒し、造林鎌で笹や蔓(つる)を払います。すべて手作業で、ブーツは傷み作業着やグローブは破れ、丸3日かけての重労働……。

しかしそれが念願の景観を手に入れるきっかけに! というのも、我が家の東側には富士山に次ぐ第2位の高峰「北岳」や、第3位の「間ノ岳」がそびえ立つ絶景があるのですが、この森に遮られ眺望は諦めていたのです。

駒ヶ根に移住する者にとっては南アルプスか中央アルプスが見えることがひとつのステータスであり、東西に2つのアルプスが見えれば最高の贅沢とも言えるのです。

そこで今回は、松枯れがなくなったことでさらに見通しを良くするための伐採を決行しました。
唯一ネックになるのが真横に通っている電線で、素人技で倒すにはとても危険な作業。そこで林業の友人に応援を頼み、より確実に倒すことにしました。20m近いカラマツ・ヒノキを7本倒し、視界が開けてスッキリ!
デッキからの眺めです。南アルプス一望という見晴らしではないですが、右側がぽっかり開いて北岳・間ノ岳が眺められるようになりました。

また伐採した大木は、玉切りにすると200個分ほどの収穫。荒れた雑木林を整備して大木を倒し、玉切りにして運び、割って井桁状に組んで乾燥させる。一年以上かけて、やっと燃やせる薪になるのです。

薪は森からの恵み。一から取り組むことで、薪作りの苦労と薪のありがたさを実感しています。焚き火の炎を眺める機会があれば、どうか薪について思いを馳せてみてください。自ずと薪に対するささやかな愛着と、感謝の念が生まれるかもしれません。

写風人の過去の連載記事はこちら

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