ヘリテイジのドーム型ツェルト最進化形。クロスオーバー ドーム fは○○g
ある種の信仰だと言われるかもしれませんが、ドーム型テントに安心感を覚える人は多いのではないでしょうか。
どの程度の風に耐えられるかといった実際の物理的強度も然ることながら、2本のクロスポールが形作る、足が4つの「お屋根」のかたちが心理的な安心感にも繋がっているような気がします。そして心理的な安心感は、山で夜を越える上で無視できない大事なファクターでしょう。
とは言え、ドーム型の山岳テントはソロ用の最軽量クラスのもので1.1~1.3kgくらい。十分軽いとも言えますが、ソロタープやツェルト[*1]、あるいはウルトラライトテントに比べると、やはり重く感じてしまいます。
でも一方で、それらの超軽量な道具は、張り方にコツが必要だったり、風向きにセンシティブだったりという特性があります。サクっと張れて、自立して、心理的安心感もあって、なおかつ1kgを大きく切るような選択肢はないものか?
そんなわがままなニーズに答えてきた製品のひとつがヘリテイジのクロスオーバードームでしょう。2本のクロスポールで建てるシングルウォールの――つまりフライがない――ドーム型ツェルトというべき製品です。重量はソロ用山岳テントのなんと半分、700gしかありません。トレイルランナーやファストパッカーの間で口コミ的に広がったこのアイテムは、入荷するとすぐに売れてしまう人気製品でもあります。
そしてこのクロスオーバードームを、ひと回りサイズダウンすることでさらに小型軽量化したモデル、クロスオーバー ドーム f が2017年6月にリリースされました。
こちらの重量は570g。500mlのペットボトル飲料とちょうど同じぐらいです。縦75cm×横200cmのフロア寸法は、広いかと言われれば少々狭いでしょうけど、でもこの軽さでドーム型なのですから、それを充分補えるメリットがあると思います。
ツェルトの仲間ですから、15デニールといううすうすの素材で、最小限の防水性能(1,000mm/cm2)しかありません(縫い目はシールされてるそうです)。ポールもソロ用の軽量山岳テントより1mm程度細いものが使われています。となると活用シーンには気をつける必要がありますが、新しいアクティビティのイメージがムクムク広がる人はたくさんいるはずです。
いやあ、これは欲しいでしょう。
製品名 : クロスオーバー ドーム f
価格 : ¥33,000(税別)
メーカー : ヘリテイジ
curator/gearedエディター
手のひらサイズに収納できる24Lの超軽量ザック Sea to Sky
米ポートランドのスタートアップ The PNW が開発した Sea to Sky はポケットサイズで携帯できるバックパック。
キャリーポーチに収納すると12.5cm×7.5cm程度ですが、広げれば24Lのコンパートメントを擁するパックになります。重量は約156g。かなり軽いです。
上部の開口部をロールしてバックルで留める仕様で、フロントのジップポケットからも物を出し入れできます。左右に設けられた大き目のサイドポケットも重宝しそう。
ファブリックは30Dのコーデュラナイロンを採用しており、メーカーは高い耐水性をアピールしています。ただ、ジップが止水加工されているとは言え、水没には耐えられないとのことなので、ドライバッグ的な用途には適さないでしょう。
eショルダーストラップは内側がメッシュ地になっています。また、チェストストラップのバックルが非常時に使うホイッスルにもなるというギミックも。
フロントジップはリフレクターとしても機能します。
コーデュラならではの耐久性と防水性を備え、山小屋1泊くらいに応じる容量があり、超軽量で携帯できる――水辺のアクティビティにも問題なく使えるでしょうし、ミニマルなULザックを求める向きにも丁度良さそう。
より大きなバックパックに忍ばせておいて、テン場に着いてからサブのバッグとして使うのもいいのでは。あるいは、スーパーマーケットで買ったものを詰め込むエコバッグとしてなど、デイリーユースにもハマるでしょう。
バランスが良く、それゆえに汎用性が高いモデルだと思います。
Sea to Sky は Kickstarterでプレッジを募集中ですが、すでに目標額を突破し製品化が決定。日本への発送にも応じます。
製品名 : Sea to Sky
メーカー : The PNW
価格 : $59~(別途送料)
curator/gearedエディター
燃焼中の燃料補給ができる○○gのアルコールストーブ、TATO GEAR AB-13 の憎めない魅力
TATO GEAR の AB-13 HYBRID STOVE は、メイド・イン・USAのおもしろいアルコールストーブです。
17gという軽さもさることながら、カーボンフェルトと燃料ボトルをシリコンのチューブでつないで燃焼中の燃料補給を可能にした、他にはないつくりが目を引きます。
従来のアルコールストーブは、燃焼中の炎が見えにくい上に、構造上いったん火を消してからじゃないと燃料の補給ができませんでした。扱いに慣れて、火力を見極めてどのぐらいの燃料が必要なのかを把握できるようになれば克服できるものの、こうした点がネックになって二の足を踏んでいた方もいらっしゃるでしょう。
でも、カーボンフェルトなら燃焼面が赤くなるので火加減が一目でわかりますし、炎の大きさも一定のところでキープされるのでコントロールしやすいです。テストしてみたところ、火力も大手メーカーのアルコールストーブに引けをとらない塩梅でした。
なによりも、「アルコールストーブにこういう切り口があったのか!」と思わせてくれる造形に惹かれます。ギーク感があるというか、男の子が大好きなオモチャのような……。ULの道具ならではの、従来の山道具とは違うデザインのおもしろさを体現していると思います。
もともと日本のUL文化では、アルコールストーブの自作を主軸にして MYOG(Make Your Own Gear)の柔軟な発想が育まれてきました。世界を見わたしても、日本のアルコールストーブはかなり稀有な進化を遂げています。その傾向は2000年代頭から今に至るまで続き、高機能なアルコールストーブの開発はある程度いくつくところまでいった感があります。
たとえば、ここ数年は毛細管現象でアルコールを吸い上げて着火させ、本燃焼までのプレヒートの時間を短縮して燃費をよくし、さらに炎をサイクロン状に巻き起こして燃焼効率を向上させるモデルの開発が進んでいます。3Dプリンタを駆使した FINAL FLAME GEAR や、フライフィッシャー向けの RSR が作っている削りだしのモデルなどが代表例です。
また、FREELIGHT が昨年発表した BLAST BURNER は従来のアルコールストーブの燃焼システムから大きく飛躍し、まるでガソリンバーナーのような燃焼と高燃費を実現させた画期的なモデルとなっています。
これらの開発の背景として日本のアルコールバーナー界の鬼才である JSB さんの研究開発は無視できません。彼のアイディアや研究成果を、いろんな人が製品化までブラッシュアップしてきたといえるでしょう。その結果、最先端の低燃費・高効率のアルコールストーブは格段に進化してきたのです。
……でも、個人的にはもっとバカっぽいものがあってもいいかな、と(笑)。技術的な洗練とは違った、道具としてのおもしろさがあってもいい。アルコールストーブって、そういう自由なものでしたから。
今の日本だと、自作しなくても買えるアルコールストーブの多くはアルミ缶を再利用したものが主流なので、この AB-13 のようにアルミ缶に頼らずいちから新しいかたちに挑戦したものをみると「おおっ!」と興奮してしまうのです。
もちろん、ただデザインが斬新なだけでなく、その設計がきちんと理に適っていて、初心者でも扱いやすいアルコールストーブになっています。
最先端のものと比べて「優れている」とは決して言えません。しかし、もともとウルトラライトの道具には、どこかいびつで足りない部分があって、それを「まあしょうがねえな」みたいな感覚で使うおもしろさもあるはずです。そんな遊び心を思い出させてくれる、茶目っ気のあるアルコールストーブです。
製品名 : AB-13 HYBRID STOVE
メーカー : TATO GEAR
重量 : 17g
価格 : ¥6,980(税別)
購入 : Hiker’s Depot
curator/土屋 智哉
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