都会の隠れ家的ショップへ!
あらゆるアウトドアシーンに精通しているスタイリスト、平健一さんが今気になっているお店を訪ねます。選ぶ基準は「わが道」を行っているかどうか。他とは違う、独自性の強いショップに足を運びます。連載第2回は、住宅街のど真ん中に溶け込むようにたたずむお店。いかにも平さん好みの隠れ家的ショップで、おのずと歩くスピードも速まります。
山好きスタッフがお出迎え
「お、あった。ココですよ、ココ」立地は小田急線の代々木八幡駅、代々木上原駅、東京メトロの代々木公園駅のちょうど中間くらい。一見落ち着いた住宅地ですが、じつはこのあたりはツウな古着屋などが点在する、知る人ぞ知る高感度エリアでもあるんです。
「どうも、こんにちは」と穏やかな笑顔で迎えてくれたのは、「アンドワンダー」が経営するショップ「MT.(エムティー)」のスタッフを務める近藤さん。「アンドワンダー」をフルラインで揃えながら、良質なセレクトアイテムも厳選して置いてあります。
近藤さんは「ボルダリングなどアクティビティ全般が好きなんですが、メインはスノーボードなんですよ」と語るとおり、かつてはバートンのスタッフだったという筋金入り。ゲレンデはもちろん、バックカントリーも多数こなしてきた猛者なんです。
普段から愛用中
平さんは店内に入るや否や、目についたワッペン付きサファリハットの試着タイムへと突入。「じつは僕、アンドワンダーめちゃくちゃ持ってますよ。サコッシュやポンチョ、ダウンもショーツも……」と偏愛ぶりをアピール。近藤さんも思わず表情がゆるみます。
ツウなセレクトに興味津々
「お、これは」と平さんが手に取ったのは短いロープが複数と、説明書きの入った円筒形アイテム。平さんが続けます。「ロープワークの練習用キットですよね。この海外っぽさ満点の絵柄が雰囲気あるなあ。説明書きを見ながら、付属のロープでいろんな結び目を作れるように練習するんですよ」
近藤さんは「ちなみに僕は全然できません」と笑う。けっこう難易度の高い結び方もあるそうです。
アンドワンダーとパラブーツがコラボしたマウンテンブーツや、ローカスギアのトレッキングポールなど、山歩き関連も充実しています。
続いてはSOTOのストームブレーカー。最強だと近藤さんがプッシュすれば、すかさず平さんも同意。
「とにかく火力がすごい。燃料ひとつとってもホワイトガソリンでもガスでもいけちゃうっていうのは本当にすごい! そのぶん値段がちょっと高いのが難点ですが……」
それこそプライス以外は非の打ち所がないほどの完成度だそう。
野外での飲食にマスト
マグやボトルも平さんの目に留まりました。気づいた近藤さんが「このダイネックスとアンドワンダーのマグはすっかり定番になっています」と話しかけます。「カラビナ付きなのがなんとも嬉しいですよね」と平さん。「これ、ちょうど缶ビールがすっぽり入るサイズなんですよね。クージーにもなるっていうのは意外と知らない人も多いみたい」
ナルゲンボトルは2人とも大絶賛。「僕はコーヒー豆入れたりして使ってますよ」と平さん。
近藤さんも「パスタ入れるのにちょうどいいし、あとはナッツを詰めておいて、疲れたらパパッと食べたり」
水筒として活用するなら、飲みやすくなる別売りのキャップは絶対にあったほうがいいのだとか。「これがないとけっこうドバっと出ちゃいますから」
快適な機能服が盛りだくさん
続いてウエアのラックへと移動。アンドワンダーの服がずらりと並ぶなか、イチ押しはメリノウールのインナー。サラッとした肌ざわりがたまりません。「ウールはチクチクするなんて昔の話。機能素材もいいですが、こういう天然素材の良さもあらためて知ってもらいたいですね」。汗冷えせず、ニオイもつきにくいといいことずくめ。
「寒い時期に着るイメージがありますが、汗をかく時期にこそ本当は着てほしい。ウールのすごさが分かりますよ」
ウールといえば、こちらのエアウールジャケットも着心地抜群で、女性にも似合いそう。
着てみた平さんは背後に手をまわし、後ろにもポケットがついてることを確認。「こういう何気ないディテールが嬉しいですよね」
フリースもかなり調子よさそう。「これは……ダメ人間養成服です。もうラクで気持ち良すぎて、他のウエアを着る気がなくなっちゃう(笑)。さらに見た目もいいという、恐ろしいウエアです」
定番の魅力を再確認
平さんが力説します。「僕がアンドワンダーをすごくいいなと思うのは、定番商品がしっかりあるところ。目新しさを追求するブランドばかり増えていく中で、しっかり定番の良さに目を向けて毎シーズン続けていってるところって、減ってきてますよね」もっともな指摘に、近藤さんもうなずく。
「そうですね。確かに定番は多いです。たとえば8年前くらいにスタートしたバックパックは象徴的。今でこそベンダーとコラボしたり、Xパックという別注素材を採用したモデルもありますが、基本はずっと変わってないです。これがすごく支持されたのがブランド認知のきっかけにもなりましたから」
サコッシュも大定番だそう。「キューベンファイバーというこの独特なシャリシャリした素材感に目を付けたのが発端。アンドワンダーで取り入れ始めたころは、他ではまだほとんど見かけなかったですね」
ウエアにも定番がしっかり存在。「このドライオックスシャツもずっと支持され続けています。野外はもちろん、落ち着いたボタンダウンだから街着としても活躍してくれますよ」
野外での雨対策や防水は万全に
次々と手に取って眺めては、細部のチェックに余念がない平さん。今度はディテールの進化に気づいたよう。「定番であってもそのままでなく、着実にアップデートしているのがさすがだなと。たとえばこのポンチョ。僕が持っているのは7、8年ほど前ので、このポケットがないんですよ」
「確かにポケットがあると便利だなあと、実際に袖を通して感じましたね。しかもたくさんついているから、これは便利」
ジップを全開にすればポンチョ、閉じればナイロンジャケットに早変わりするというお役立ちウエアなのに、さらにポケットもプラスされたとなればもう脱帽するしかありません。
「雨が降ってもリュックの上からガバッといけますからね。重宝しますよこれは」
雨といえばカサも発見。「ユーロシルムというブランドで、肩掛けして持ち運べるんです。珍しいでしょう。しかも軽くて、強い。
アウトドアにカサってあんまりなじまない気がするけど、これは唯一アリな感じですね」とは近藤さん。さらに防水対策にも話は及びます。
防水性能を最大限生かすには
雨対策はアウトドアの基本ともいえますが、聞けば防水ウエアの扱いにも、けっこう間違った認識があるようです。「防水素材や耐水圧はめちゃくちゃ気にするけれど、一方でいざ洗うとなると躊躇する人が多いですね。汚れたら洗っていいんですよ」
ちゃんと正しい洗剤さえ使えば問題ないのだそうです。
「たとえばこのイーベントを採用したシェルであれば、汚れがたまると透湿用の細かな穴がふさがってしまうので、本来の機能を発揮しにくくなってしまう。そうすると今度は汗で蒸れてしまうので、防水透湿の意味がありませんから」
近藤さんが推奨する洗剤は“ニクワックス”。「お風呂に10㎝くらいぬるま湯を張って、つけて洗うとやりやすいですよ」と平さんも同調。やはり汚れたままはよくないというのがプロの共通認識なようです。
「アウトドアの商品って、すごく機能的じゃないですか。僕はその機能をうまく使って、野外ではもちろん、日常生活でもその機能を活用してほしいなって思います。そうすればもっとストレスのない毎日になりますよ」と近藤さんが思いを口にします。
それを受けて平さんも「アンドワンダーはデザイン性が高いから、アウトドアと普段の生活、両方で活用するということもすごく納得できます。山で発揮できる実力が、街で発揮できないはずはありませんからね」と付け加えてくれました。
アウトドアをずっと楽しみ続けて
「大人になって、忙しかったり子どもができたりしてアウトドアをやめちゃう人もけっこういるけど、それはすごくもったいない。機能的なウエアやギアの力も遠慮なく借りながら、できれば長く続けてもらいたいですね。だって自然を満喫することほど楽しいことはありませんから」お互いの考え方に共鳴し、アウトドアの現在と未来について語り合う2人はすっかり意気投合。話は尽きません。
今アウトドアを現役で楽しんでいる人はもちろん、「久しぶりに再開しようかな」と少しでも考えた人ならば、このお店は格好のきっかけになるに違いありません。ぜひ足を運んでみてください。
今回訪れたのはコチラ
『MT.』
場所:東京都渋谷区元代々木町22-8 1F
定休日:火、水(※定休日が変更になりました)
営業時間:
月、木、金 13:00~20:00
土、日 13:00~19:00
tel:03-6407-8179
mail:mt@andwander.com
Let’s go to the “MT.”!
「MT.」に足を運んでみよう!