Rawlow Mountain Works の Tabitibi Tote。そのカメラバッグとしての可能性を探る
筆者は、かつてgearedで日本のハイカーサコッシュの歴史を綴ったこともある自称「サコッシュ評論家」なのですが、久々に見逃せないハイカーサコッシュが登場しました。
昨年も多くのメーカーが登場した日本のコテージインダストリー(ガレージメーカー)シーンですが、なかでも大きなインパクトを残したのが、gearedでも紹介した Rawlow Mountain Works でしょう。
その要因としては周到なイメージ&ビジュアル戦略、各地でのポップアップショップや受注会を通じての精力的な販売戦略はもちろんですが、なんといってもプロダクトを一見して感じる強烈なオリジナリティと気の利いたギミックの数々、そして細部までこだわった完成度の高さにあることはまちがいありません。
なかでも、昨年の取材時は最終試作の段階だった Tabitibi Tote と名付けられたハイカーサコッシュには個人的にビビビときました。そして自称「サコッシュ評論家」として、直ぐさまこう思ったのです。
「こりゃ 山と道 サコッシュ 以来の大ヒットになんぞ!」
そしてその予想は見事的中し、昨秋ついに販売を開始した Tabitibi Tote は Rawlow Mountain Works のオンラインショップでわずか20分でソールドアウトしてしまったとか。
ともあれ、発売から5年以上を経た今も売れ続けているモンスター、山と道サコッシュに比類する存在になるかは未知数ですが、コーデュラナイロン風の生地を使ったULに振り過ぎていないルックスといい、小さな本体に満載したギミックといい、魅力的なカラーバリエーションといい、いまやULシーンを超えた人気を獲得している 山と道サコッシュ に比類する存在になるポテンシャルは充分にあると「サコッシュ評論家」は見ています。
前置きがかなーり長くなりましたが、今回はそんな大人気の Tabitibi Tote を Rawlow Mountain Works のご好意でお借りすることができましたので、実際に使い倒してのレビューを書いてみたいと思います。
前置きも長かったですが、実はここから始まるレビューもかなーり長いです。ですが、ぜひ最後までお付き合い頂けたら幸いです!
Tabitibi Toteをカメラバッグとして使い倒してみた
……が、まずここで皆様に告白しておくべきことがあります。自称「サコッシュ評論家」を名乗りながら、実は筆者は普段のハイキングでまったくハイカーサコッシュを使わないのです!なぜなら、こんなギア関連の文章を長々と綴りながらも筆者の本業はカメラマン。腐ってもカメラマンとしては山に行くときはそれなりのカメラを持って行きます。
具体的にはフルサイズの一眼レフカメラなのですが、そのため胸のあたりにはいつもカメラを入れたカメラバッグがどーんと鎮座されていらっしゃいますので、ハイカーサコッシュが入り込む余地がまったくないのです。
そんなエセ「サコッシュ評論家」が Tabitibi Tote にはビビビと来た理由は、その名前の由来にもなっているギミックにありました。
なんとこの Tabitibi Tote、マジックテープで止められた底部がガバッと開き、小さなトートバッグ状に変貌するのです。
トートバッグに変貌した際の本体の厚みがあれば、フルサイズの一眼レフも入るのではないか? エセ評論家を脱するチャンス!
これまで、カメラバッグには Paago Works の Focus をたすき掛けにして愛用していました。
さすが Paago Works らしく細部まで使い勝手を追求した Focus は他社の追従を許さぬほどの完成度で、普段の山行や山での撮影時はもちろん、街でも愛用し倒していたのですが、PVCコーティングされた本体生地の肉厚な素材感もあり、UL的観点では少々嵩張ると思うことが多かったのも事実。
もちろん、カメラバッグである以上は衝撃吸収性やある程度の耐水性は必要な機能なのでそのぶん嵩張るのは仕方がないし、Focus が万人に全力でオススメしたい一品ではあることはまちがいないのですが、衝撃吸収性などをある程度犠牲にしても自己責任においてもっと軽快に使えるカメラバッグはないのかしらとずっと思っていたのです。それが日本のコテージインダスリーからここまでイケてるルックスで登場したのだから、手を出さないわけにはいきません(Tabitibi Tote はカメラバッグではありませんが)。
ともあれ、Tabitibi Tote が14cmまでマチが広がるとはいえフルサイズの一眼レフにはさすがに小さいのではないかと思う方も多いかと思いますが、自分はほぼ軽量でコンパクトな単焦点のレンズしか使わないし、とくにプライベートの山行では非常に薄いパンケーキレンズ1本なことがほとんどなので、それならば充分と見込んだのです。
結果はビンゴで、さらに標準~広角の単焦点レンズなら緩衝材入りのポーチに入れた状態でもう一本仕舞える余裕がありました。
年明け早々、雪の八ヶ岳を1泊2日で縦走する計画があったので、早速 Tabitibi Tote のカメラバッグとしての実力を試してみることにしました。
この時はさるメーカーの製品を物撮りする予定もあったので、EOS 5D Mark4にいつものEF40mm F2.8 STMを装着した状態を基本に、もう1本EF50mm F1.4 USMも Tabitibi Tote に入れて持っていきました。
結論としては、当たり前ですがカメラバッグとして作られた Paago Works の Focus と比べると使い勝手は一歩も二歩も譲りました(Focus はカメラバッグとして相当の高みにあるので、それと比べるのも可哀想なのですが)。
カメラバッグとして考えたとき、まず気になったのは、本体上部に取り付けられたハンドルがあることで、カメラをさっと取り出しにくいこと。まあ0.5秒くらいの差だと思うので、アウトドア雑誌で山行記事の撮影をするカメラマンでもなければ大した問題ではないし、気になる人はハンドルを切り取ってしまっても良いかもしれません。
同じく開口部が身につけると体に沿って自然と閉じる構造なので、この点もカメラの取り出しやすさという意味では少々ストレスを感じる場面もありました。
ストラップが一眼レフのような重いものを入れるにしては細めなので肩に食い込むのではと思っていましたが、冬季なのでウェアを着込んでいたせいかまったく気になりませんでした。が、薄着になる季節にどう感じるかは不明です。
ともあれ、この軽量さとシンプルさは自分にとっては他に得難い魅力があることも事実でした。身軽だし、バックパックにカメラをしまう時も入れやすく出しやすい。
山行取材の撮影ならば、やはり速写性に優れた使い勝手の良い Paago Works の Focus を選ぶでしょう。ですが、プライベートの山行では Tabitibi Tote を選ぶ場合も大いにあると思います。それに、筆者のような使い方はかなり特殊な例でしょう。
たとえばコンパクトなミラーレス一眼のようなカメラを使っていて、山行時に裸で持つのは怖いけど大げさなカメラバッグに入れるのは気恥ずかしいし、だいいちデザイン的に欲しいカメラバッグがまったくない、という人は結構多いのでは? そんな人にとっては、Tabitibi Tote は福音のような存在になり得るのではないでしょうか。
カメラバッグとしてのレビューばかり書き綴ってきましたが、Tabitibi Tote はそれ以外のシーンでも実に使えるバッグです。
ハイカーサコッシュとしても容量が増えることで山帰りにおみやげを入れるスペースを確保できたり(山男ならば家族、特に妻へのおみやげは非常に重要であることをご理解いただけるかと思います)、普段使いでもたとえば自分の場合は子供と遊びに出かけるとき(一応二児の父です)、オムツとお尻ふきだけを入れて身軽に公園に出かけて、帰りにパンでも買っていこうかなんてとき、容量が増えるのでとても助かります(例が所帯染みていてすみません)。
それにやはり何よりこのルックスですよね。コットンやウールの服にもよく馴染んで、持っているだけでちょっとお洒落に見えてしまうハイカーサコッシュなんて、そうそうあるものではありません。
いやはや、「ベーベーポーチ」から始まったハイカーサコッシュも(詳しくは「ハイカーサコッシュまとめ」記事をご参照ください)、思えば遠くに来たもんだ……。
……と、こんなところでレビューを締めくくろうとしていたところに、Rawlow Mountain Worrks さんから思いもよらぬ報らせが舞い込んできました。
なんと、実は現在 Tabitibi Tote のオプションとしてカメラ用ハウジングを製作中とのことで、しかも試作中のそれをテストさせてくださるとのこと!
さらにハイブリッドキューベン素材の Tabitibi Tote もお貸しいただきました。
無骨なカッコ良さと耐水性UP! ハイブリッドキューベン版
先ほどから「お洒落」を連発してきた筆者ですが、Rawlow Mountain Works についてたったひとつの不満が実はそこでした。そう、Rawlow はムサい40過ぎのオヤジにはお洒落過ぎるのです! こんなお洒落なモンに合わせる服もセンスも持っていねえ!
そんな全国のオヤジ&ボーイズの叫びを知ってか知らぬか、素材にUL系のコテージインダストリー界隈で人気の防水性と軽量性の高いハイブリッドキューベンを採用してくるとは、完全に心を撃ち抜かれました。
無骨なキューベン素材になったことにより男らしさが50%ほどアップし、クローゼットにアウトドアウェアしかない筆者のような人間も気負わず持てるようになりました。
ハイブリッドキューベンになったことにより耐水性が上がり(シーム処理はされていないので完全防水ではないと思われます)カメラバッグとして使う際も信頼感が増し、通常版約125g→約80g(筆者による実測値)と約45g軽量化されたことで素材と機能性でしかものの良し悪しがわからないスペック厨も納得の仕上がり。
ギミックも楽しいカメラ用ハウジング
そして筆者としては非常に気になるカメラ用ハウジング。まだ試作段階で生地の色は製品版とは異なるそうですが、装着しても重さの面でも取り回しの面でもまったく違和感がなく、バッグ本体にコシが出るためハウジングのない状態の時に気になっていたカメラの出し入れのしやすさも圧倒的に向上しているように感じました。
さらにこのハウジングにも実に Rawlow らしいギミックが搭載されていて、製品版に付属するナイロン製の専用袋に折りたたんだ状態で入れるとミニ座布団になるのだとか(笑)。
さらに専用袋にはバックルも付いていて、ストラップを付ければ簡易サコッシュにもなるといいます。まったく、よくもそんなこと考えるわ!
さらにさらに、カメラなど重い荷物を入れた際も肩に食い込みにくい30mm幅のストラップとセットにしてカメラキットとして発売予定とのことで、筆者のような人間のために作られたとしか思えません。
発売を翹首して正座待機したいと思います。
ハイブリッドキューベン素材とハウジングを手に入れたことにより、カメラバッグとしても完璧に近い状態になった Tabitibi Tote。
しかもそれをとてもシンプルな構造で成し遂げている点が素晴らしいです。ほんと、筆者はこのくらいシンプルなカメラバッグがずーっと欲しかった! そして同じようなことを考えている人は、実は結構多いのでは?
製品名1 : Tabitibi Tote
価格1 : ¥6,500(税別)
製品名2 : Tabitibi tote カメラハウジングキット
価格2 : 未定
製品名3 : Tabitibi Tote Hybrid Cuben Fiber Edition
価格3 : ¥9,000(税別)
メーカ : Rawlow Mountain Works
curator/三田 正明
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